151.傷を治す(大繁盛)
十戒襲撃の翌日。
俺は魔王国内の牧場へとやってきた。
「こんちは」
「おお! 先生! この間は大変だったじゃあねえか!」
知り合いの農家のおっちゃんところを訪れる。
「怖い思いさせてすまん」
「ぜーんぜん! だってこっちにゃ史上最強の魔王さまがついてるんだからよ! なぁんも怖くなかったぜ!」
がはは! と笑うおっちゃん。
俺を気遣ってくれているのだろう。
あの魔人の大群を前に、怖いと思わない方がおかしいからな。
「んで、何しに来たんだい? こんなところに油売りにきたとか?」
「違う違う。魔人との戦で傷付いてるとこがないか調べて回っているんだ。おっちゃんとこの牛はどうだ?」
「牛は大丈夫なんだが、牛舎がな」
俺はおっちゃんとともに牛舎へと向かう。
半壊していた。
「よっと」
神魔の右手をつかい、一瞬で元の牛舎へと戻す。
「はぁー……やっぱ先生はすげえなぁ。右手で触れば何でも一発で元通り。しかしもう……獣ノ医師じゃあねえな」
「ほんとそれはそうだよな」
俺はおっちゃんと共に笑い合う。
「ジーク先生!」「いらしてたんですかい!」
犬人たちが俺に気づいて、ワッ……! と近寄ってくる。
「みんなこの間の戦で、どこかケガとかしてないか? 治療するけど」
犬人たちが耳を立てる。
「せんせー!」
「おう」
「あいたたたっ! 急に腹が痛くなった気がするぅ! 治療を!」
「お、おう……」
俺は犬人の腹に右手で触れる。
「くぅ……! 元気出たぁ!」
「「「いいなぁ!」」」
いや俺別に治療してないんだが……。
神魔の目でみても、別にこの犬人、ケガとか何もしてないんだけど。
「せんせー! おれなんか頭痛が痛い気がする!」
「あたたっ、お、おなかが~」
よくわからんが、元気なのに、犬人たちは俺に不調を訴えてくる。
「どうなってんだこりゃ?」
すると農家のおっちゃんが苦笑しながら言う。
「みんな先生に構って欲しいんだろ。最近忙しくして相手してもらえてなかったからよ」
「なるほど……すまんな、みんな」
「「「大丈夫です! けど治療してください!」」」
元気な国民達を見て、俺は安堵の吐息をついて、決意を固める。
俺の国民は、誰一人としてケガを負わせないし、もう誰も不安に思わせないぞと。
……そのためには、元凶を潰す必要がある。
新生魔王軍を、潰すか。
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「俺は冒険者ギルドの悪徳ギルドマスター~無駄な人材を適材適所に追放してるだけなのに、なぜかめちゃくちゃ感謝されている件「なに?今更ギルドに戻ってきたいだと?まだ早い、君はそこで頑張れるはずだ」
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