149.十戒、魔王の軍勢に掃除される
魔王ジークが、国王たち不殺の男を倒した、一方その頃。
指揮官ジャマーは、ほかの魔人たちをつれ、別の方角から攻めていた。
十戒と、クズ魔人たちを総動員すれば、楽勝な戦いになる……と思っていたのだが。
「これは、何の悪夢だ……」
呆然とつぶやく、その眼前では、一方的な掃除が行われていた。
『ジークの国を荒らすんじゃないわよバカどもめぇ!』
地岩竜が地面をならしながら、魔人たちを押しつぶしていく。
『あにきに牙を向けるたぁ良い度胸だ! おれらの怒りの炎を食らえぇ!』
灼炎竜の大群が、炎を吐きながら、魔人たちを消し炭にする。
「どちらも古竜種じゃないか……どうして、こんなところに……」
毎秒すさまじい早さで自陣の戦力がけずられていく。
もはや、勝ち目はゼロに近い。
「降伏しなさい」
空中から降りてきたのは、青銀の髪が美しい少女チノだ。
「趨勢は決しました。あなたに万に一つの勝ち目はありません」
「く……くくく! くははは! 調子乗るなよぉ小娘ぇ……!」
凶悪な笑みを浮かべて、ジャマーが言う。
「こちらにはなぁ! 無敵の仲間がいるのだよ!」
「ほぅ、無敵?」
「そうだ! 不殺といってな! 存在しているだけで相手を殺すという、恐るべき男がいるのだ! くはは! 今頃おまえの大事なジークは、そいつに殺されてることだろうなぁ……! かーっかっかっかぁ!」
と、そのときだった。
「誰が殺されてるって?」
「だからジークが……って、ええええええええええ!? じ、ジークぅうううううううううううううううう!?」
ジャマーは驚きすぎて、腰を抜かす。
「兄さん、ご無事でしたか」
「ああ、少し手間取ったがもう大丈夫だ」
その口ぶり、そしてジークが今この場にいること。
そこから導き出されるのは……。
「ありえん……ありえん! ふ、不殺を倒したのか貴様!?」
「ああ」
あっさりと、ジークがうなずく。
愕然とした表情で、魔王を見上げる。
「……あ、あれは……最高傑作。わしの……それが……こうもあっさり……やられるなんて……」
じょぼぼ、と小便を垂らすジャマー。
一方で、ジークは冷たい目で見下ろす。
「あとは雑魚とてめえだけだな」
蛇ににらまれたカエルのごとく、ジャマーは動けなくなる。
「ば、ばけものめ……」
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