144.つかの間の休息
俺が十戒の不滅を討伐してから、数日が経過していた。
魔王城の、俺の部屋にて。
「ふぅ……」
ベッドに大の字になって、ぼんやりと天井を眺める。
すると視界の端から、にゅっ、と2人の子供の顔がのぞく。
「おにーちゃん! あそべー!」「……あそんで」
白い髪と青い髪の幼女が、俺を見ている。
「いいぞ、ハク、シア」
そう、このふたり、神獣の娘たちだ。
俺と契約したことで、彼女たちは存在を進化させ、人化の術を身に付けたのだ。
俺の膝の上に乗っかるハク達に、俺はあやとりを教える。
すると部屋の戸が開いて、チノとちーちゃんが入ってきた。
「何をやっているのですか、兄さん?」
「ハク達と遊んでやってる」
「まったく、休養日なのですから、少しは休んだ方がいいのに、本当にお人好しなんですから」
「そこがジークの良いところじゃない。さすがジーク!」
チノたちも俺の元へやってきて、ベッドに座る。
「普段かまってやれんからな。ほら、橋」
「「おおー! すげー!」」
あやとり紐で創られた橋を見て、ハクたちが目を輝かせる。
「さすが兄さん、昔から手先が器用ですね」
「まあ獣ノ医師の息子だったからな」
そう、だった……だ。
少し前まで、治療と言えば手術道具が必須だった。
だが今では、念じるだけであらゆる傷が治る。
「神の手……か。思えば遠くにきたもんだ……」
大の字になって仰向けに寝る。
右隣にはチノ、逆側にちーちゃん。
「色々ありましたね。城を追放され、魔王と戦い、魔王になる」
「勇者のぼけや国王のバカとも戦ったわね。全部ジークがこてんぱんにやっつけたけど!」
「国王に勇者……か」
あいつらは結局、最終的に魔に落ちて、俺が倒した。
人を治す、この奇跡の右手で。
「おにーちゃん……こーかい、してるの?」
ハクが不安げな表情で、俺の顔をのぞき込んでくる。
「どうした、ハク?」
「とおいめしてた……めいわく?」
「まさか。宮廷にいたときより、今の方が毎日楽しいよ」
あのとき俺は獣番だの畜生係などと馬鹿にされていた。
一人孤独に、動物たちの命と向き合っていた。
けれど今は、たくさんの、俺を理解してくれる仲間がいる。
俺とともに戦ってくれる戦友や、守るべき国民がいる。
「今が一番楽しい! それは本当さ。だから不安がるなって」
わしゃわしゃ、とハクの頭をなでる。
子供なりに、俺をここへ呼び寄せたことに、責任を感じているのだろう。
「たのしい? なら、あたちもたのしー!」
チノやちーちゃん、神獣たちも皆笑っている。
誰もが平等に笑い会える国を創る。
それが、魔王としての俺の責務。
「ジャマするやつは俺が倒す。この右手で、みんなを守るためにな」
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先日投稿した短編が好評だったので、改稿し、新連載としてスタートしてます!
「俺は冒険者ギルドの悪徳ギルドマスター~無駄な人材を適材適所に追放してるだけなのに、なぜかめちゃくちゃ感謝されている件「なに?今更ギルドに戻ってきたいだと?まだ早い、君はそこで頑張れるはずだ」
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