139.十戒、魔王の妹に全てを凍りつかされる
十戒アバンが魔王ジークが治める国を、炎で焼き尽くそうとした。
守護者を名乗る妹チノも、魔人の炎に飲まれたはず。
『なのになぜ無事なのだぁああああああああ!?』
「簡単です、わたしの魔法で、炎を凍らせたからです」
チノは指揮者のように杖を振る。
燃え広がっていた炎が、一瞬にして凍り、ぱきぃんと音を立てて砕け散った。
炎は跡形もなく消え去っていた。
『あ、ありえん! わが炎は【不燃】! 燃え尽きることのない最強の炎だぞぉ!』
「その程度で最強を名乗るなんて、おこがましいにもほどがありますね」
チノは冷たく言い放つ。
「最強を名乗っていいのはこの世でただ一人、神魔王たるジーク・ベタリナリ、わたしの愛しい兄さんだけです」
うっとりとした表情で、チノは自分の体を抱く。
「国を魔人から守ったら、兄さんはほめてくれるでしょうか。えへへっ」
すでにチノは勝った気でいるようだ。
『き、貴様ぁ! おれさまを取るに足らない雑魚扱いしやがって!』
「? その通りではないですか」
『ほざくな! しねぇえええええええええ!』
アバンの感情に呼応するように、燃え広がる炎。
それは竜の形へ変化すると、チノを飲み込まんと襲い掛かる。
「遅い」
気づいた時には、炎竜も、そしてアバンの体も、粉々に砕け散っていた。
『なんだ!? なにをされた!? どうなったんだ!?』
「時間を凍りつかせました」
『時間だとぉ!?』
頭部だけとなったアバンを見下ろして言う。
「わたしは兄さんと契約したことで、魔法使いとしてさらに上位の存在となりました。強化された魔法力は、物体だけでなく、時間の概念すらも凍結させる」
『あ、ありえん……なんだ、この化け物は。こんなやつが、魔王国にはゴロゴロいるのか……?』
「勿論。騎士団もいますし、しかも兄さんはわたし以上に強いです」
ぷちん、とアバンの頭の中で、何かが壊れる音がした。
『う、うひゃひゃぁ! 終わりだぁ! われらは敵に回してはいけない、化け物たちと戦っていたんだぁあああ!』
「ええ、その通り」
チノが杖を振ると、アバンはひとかけらも残さず消滅した。
「ふふっ、兄さんに褒めてもらえますっ。やった、やったっ、うれしいですっ」
凶悪な魔人を瞬殺し、しかも微笑んでいる彼女は、まぎれもなく魔王の妹なのであった。
【※お知らせ】
先日投稿した短編が好評だったので、改稿し、新連載としてスタートしてます!
「俺は冒険者ギルドの悪徳ギルドマスター~無駄な人材を適材適所に追放してるだけなのに、なぜかめちゃくちゃ感謝されている件「なに?今更ギルドに戻ってきたいだと?まだ早い、君はそこで頑張れるはずだ」
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