138.十戒、魔王国を攻め入る
魔王ジークが、十戒のフリズを倒した、一方その頃。
魔王国、王都校外の草原地帯にて。
『なあお嬢ちゃん、もう一度、おれに教えてくれないかぁ?』
十戒のひとり、アバン。
人の形をした炎の男が、目の前の少女に、小ばかにした目を向ける。
「わたしはこの国の守護者が一人、魔王ジークが妹、チノ」
青銀の髪が美しい少女が、魔人を前にして、堂々と宣言する。
「警告します。我が国へ敵対行動をとった場合、わたしが即時排除します」
『ぷっ……! ぷぎゃははははは! ひー! ひー! こりゃあ傑作だ!』
アバンは腹を抱えて笑う。
『て、てめえみたいな人間のガキが、おれさまに勝てるとでも本気で思ってるのかぁ?』
「無論です。死にたくなければ魔王国から即刻立ち去りなさい」
チノはアバンから目をそらさずまっすぐに言う。
強者である魔人の自分に、怯えないチノに対して、アバンは苛立ちを覚えた。
『むかつくんだよ! てめえら虫は! おれさまたちのまえでガタガタ震えてればいいんだよぉ!』
「虫が目の前で騒いでいても、わたしは何とも思いません」
びきっ! とアバンの額に血管が浮き上がる。
『ざこがぁ! 焼き殺してやるぅうううううううううう!!!!』
アバンの体から、凄まじい勢いで炎が噴射される。
彼の持つ異能の炎が、草原に一瞬で燃え広がる。
『ぎゃはははぁ! おれさまを怒らしたからこうなるんだぁ! ぎゃーーーーはっはっはぁ!』
炎がチノの体を、焼き殺したと思った、そのときだ。
「何かしましたか?」
炎の中で、チノが平然と立っている。
その体には火傷一つおっていない。
『そんなばかなぁ!? いったいどうして!?』
チノは小さく嘆息をつくと、懐から杖を取り出し、アバンに向ける。
「教えてあげますよ。魔王の眷属の力を。あなたの死をもってして」
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先日投稿した短編が好評だったので、改稿し、新連載としてスタートしてます!
「俺は冒険者ギルドの悪徳ギルドマスター~無駄な人材を適材適所に追放してるだけなのに、なぜかめちゃくちゃ感謝されている件「なに?今更ギルドに戻ってきたいだと?まだ早い、君はそこで頑張れるはずだ」
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