137.十戒、魔王の圧倒的な力の前に敗北
十戒のひとり、フリズは魔王ジークと相対していた。
漁村近くの海の上にて。
『なぜだぁ!? なぜこの【不溶】のフリズの絶対に溶けぬ氷を前にして、無事なのだぁ!』
彼ら特別な魔人たちは、それぞれ固有の特殊能力を持つ。
それは人の理に反する力。
フリズの場合は、相手を二度と溶けぬ氷に閉じ込めるという能力だったはずだ。
だが冷気の直撃を受けてもジークは平然としている。
「おまえ、焦って素がでているぞ? 演技だったのかあのしゃべり方」
『う、うるさぁあああああああい! 凍え死ねぇええええええ!』
天が一瞬で暗くなり、そこからブリザードが発生する。
広範囲の氷漬け攻撃を受けても、しかし、ジークは無事だった。
『なぜだぁああ!?』
「こういうことだ」
ジークは右手を掲げると、【神魔の右手】を発動させる。
ブリザードも、凍り付いた村人や、海さえも、すべてを元の状態へと戻す。
ざばん! とフリズは海に落ちる。
『ば、ばかなばかなぁ! わが魔氷がきかぬなんてぇええ!』
右手の効果で、凍り付いた瞬間に、元の状態へと戻したのだ。
だからジークは攻撃を受けても無事だった。
「さて」
『く、くそぉお! アバン! 聞こえているか、アバン!』
通信魔法道具を使って、魔王国へ行っている十戒のひとり、アバンを呼び出す。
だが……。
『どうしたアバン!? 返事をしろ! おい!』
「お仲間がいたのか?」
『そうだ! 今頃貴様の国を炎で焼いているはず……!』
「だとしたら、もうそいつ死んでいるぞ」
『な、なんだとぉ!? なぜだぁ!?』
「簡単だ。世界最強の妹がいるからな」
フリズは愕然とする。
『ま、魔王に匹敵する強さのやつが、まだいるだと……』
「ああ。妹だけじゃない、国民全員が強いぞ、うちは」
がたがたがた……とフリズは体を震わせる。
『ば、化け物だ……おれたちは、とんでもない国に戦争を吹っ掛けてしまったのだ……』
フリズは悄然と呟く。
ジークは彼の頭を掴むと、右手を発動させ、一瞬で消し飛ばしたのだった。
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