136.十戒、街を永久凍土に沈める
指揮官ジャマーからの命令により、十戒のふたりは、魔王ジーク、そして魔王国へと攻めることになった。
『おれは魔王国のほうをやる。フリズ、てめえは魔王をおびき寄せるんだ』
『承知、也』
『ま、おれたちが万に一つも負ける訳ねえけどよ、一応通信魔道具をもっておこうぜ。何かあったら連絡しろよ』
『笑止、也』
フリズもアバンも、自分が負けるなどと微塵にも思っていなかった。
……それが敗因だ。
ふたりでどちらか片方を攻めていれば、勝率は上がったかもしれない。
無論、それはゼロに等しい確率でしかないのだが……。
ややあって。
フリズはとある漁村へとやってきた。
海辺には数多くの人間たちが、平和を享受している。
フリズは海の上に佇む。
「ん? なんだありゃ……?」
漁師のひとりが、海上に立つフリズの姿をとらえる。
ぼろいマントに、三角帽という、妙な出で立ちだ。
「嫌な予感がする……おい! ジーク様に……」
『ふぅ……』
吐息をついた瞬間、すべてが凍り付いた。
周囲に広がる大海も、漁村も、そこにいた村人たちも。
あらゆるものが、フリズの吐息だけで、凍り付いたのである。
『児戯、也』
楽勝過ぎてあくびが出るほどだった。
強化された魔人にとって、この程度のことは、朝飯前である。
凍りの大地で待つこと数分、フリズの前に、一人の青年が転移してきた。
『魔王?』
「そうだ。……てめえが、やったんだな?」
魔王はどうやら、先ほどの村人から、何らかの手段を用いて、危機を知らされていたらしい。
ジークは凍り付く海と村人たちを見て、静かなる怒りを燃やす。
「なんでてめえらは、他人の平穏を、無遠慮に壊す? 何の権利がおまえらにあるんだよ?」
『我、強者、也。言葉、不要、也』
「……ああ、そうかよ」
強いから弱者を踏みにじるのは当然だと、フリズをはじめとした、多くの魔人たちは思っている。
「じゃあ俺もおまえを無遠慮に命を摘むけど、いいんだな?」
『笑止、也』
自分がこんなガキに負けるなどと、毛ほども思っていない。
フリズはゲラゲラと笑う。
『警告、也。降伏、せよ』
「かかってこいよ、三下」
やれやれ、とフリズは首を振る。
ひとがせっかく降伏するように呼びかけたというのに。
彼我の実力差を知らぬ弱者の、なんと滑稽なことだろうか。
フリズは呆れて、吐息をつく。
息だけで、周囲にすさまじい冷気が発生する。
周囲に白い冷気が漂う。
『終了、也』
「てめえがな」
五体満足のジークがすぐ目の前にいて、フリズの頬を拳で殴りつけてきたのだった。
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