13.宮廷医師長
翌朝、俺は神獣王のおわす間へとやってきた。
真っ白で美しい部屋の奥に玉座があり、そこに座っていたのは、昨日助けた白髪の美女だった。
従者ミントが咳払いをして紹介する。
「この御方が神獣王【ソフィア】様でございます」
「す、すみませんでした……昨日は、王様とは知らず……」
俺が言うと、ソフィア王は微笑んで言う。
「気にしないでくださいジーク。先日は命を助けてくださりありがとう」
とてつもない美女に感謝され、照れてしまう。
「ぜひ我が国で【宮廷医長】として働いてくださいまし」
「謹んでお受けします……って、宮廷医、長!?」
それって、医師たちをまとめるトップ的な地位じゃないか!?
「さすがジーク様! 神獣王様に認められたのですっ!」
「い、いやいや、俺まだなにもしてないし、だいいちこんな若造がついていい職なのか……?」
と、そのときだった。
「その通りですぞぉ、神獣王!」
謁見の間に入ってきたのは、きつねの獣人だった。
「【ゾロアー】! 謁見中ですよ!」
「黙れ平民上がりの近衛騎士が」
ミントの怒りの視線を、ゾロアーは無視して、俺たちの前へやってくる。
「あんた誰だ?」
「ふんっ! 我が輩は【ゾロアー】。宮廷医長だ」
彼は俺を見てフンッ! とバカにしたように鼻を鳴らす。
「こんな下等生物に、誇りある宮廷医長の仕事が務まるとはとうてい思えませんなぁ」
「貴様! ジーク様に失礼だぞ!」
殺気立つミントに、すっ……とソフィア王が手を上げて制する。
「ゾロアー。この御方の実力はすでに報告が上がっております。あなたは副官として支えてあげてください」
「こやつは他国の間者かもしれませぬ。いつ寝首を掻かれるか」
……と、俺はそこで気付いた。
「なぁゾロアーさんよ。あんた、昨日の夜来た襲撃者のリーダーだろ?」
びくんっ! とゾロアーが体を硬直させる。
「なっ! なななっ、なにを根拠にそんなことを!」
「いやだって、おまえ右手の甲、怪我してるじゃん。それ、俺が昨日つけた傷だろ?」
傷口はかさぶたで塞がっているものの、俺がメスを投げた場所と同じだった。
「ち、ちがう! これは……そう、今朝掃除をしているときにだなぁ……!」
「あ、そう。じゃあ血を少し取らせてくれ」
「血だとぉ!?」
俺はポシェットから、昨日投げつけたメスを取り出す。
「おまえに投げたメスだ。少しだが血が付着している。血液を鑑定すれば、おまえが犯人と同じかどうか調べられる」
「そ、そんなことが可能なのですかっ!? す、すごい……!」
ミントが感心したようにつぶやく。
「ぶ、無礼者! お、王よ! この男を即刻死刑にするべきです!」
しかしソフィア王は静かに首を振る。
「ゾロアー。血を採取してもらいなさい」
「お、王よ!?」
「自分が潔白だというのなら、別に問題ないでしょう?」
「ぐ、ぐぬぬぅうう……!」
ゾロアーは顔に大汗をかいて、視線を泳がせる。
「く、くそぉおおおおおおおお!」
いきなりソフィア王めがけて、殴りかかろうとする。
「【麻痺】」
「うげぇ……!」
ばたんっ、と倒れるゾロアー。
ミントが剣を抜いて、首筋にあてる。
「反逆罪で逮捕する!」
「ち、くしょぉお……ちくしょぉおお……!」
ソフィア王は俺の元へとやってきて、深々と頭を下げる。
「二度も助けてくれてありがとうございます。さすがジーク。ぜひ、宮廷医たちをまとめてくださいまし」
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