128.村を救う
俺は魔人兵団に襲われた村へとやってきていた。
襲ってきた魔人どもは片付けたので、次はケガ人の治療と、そして壊れた村の修復だ。
「うう……」「たすかった……のか……」「しかし住むところが……」「冬にこれでは……もう……」
暗い表情の村人達に向けて、俺は右手を前に出す。
神魔の右手を発動させる。
これは世界最高の治癒魔法だ。
傷付いた物を一瞬で癒し、壊れた物を瞬時に元通りにする。
今までの神の手と同じような効果。
だが、実は進化したときに、もう一つ性能が足されている。
……まあ、ここで使う気はない。
「おお! すごい……! あんなにいたケガ人が、一瞬でみんな治っている!」
「壊れた村が元通りだ!」
「凄い……まるで神さまだ!」
村人達が俺の前で、膝を付き、頭を下げる。
「ありがとうございます、我らの救世主様!」
「い、いや……大げさだよ。俺はやるべきことしただけだ」
「おお! 奇跡の力を使いしものが、こんなにも謙虚なお方だとは!」
「大きな力を持っているのにおごらないとは、なんて素晴らしい人なんだ!」
当然のことをしただけなのに、なんだか株が上がってしまったな。
「救世主様、お名前を!」
さてどう答えるか。
素直に魔王と答えていらん暴動が起きないだろうか……。
「ジークだ」
結局魔王ってことは伏せておくことにした。
「ジーク様! ありがとうございます! なんとお礼を申し上げたら良いか」
「礼など不要だ。それより、とらわれた女と子供についてだが」
俺がここに来たときに、女子供は魔人どもが連れて行った、と聞いた。
「どこへ行ったのか、誰か知らないか? 手がかりでも良い」
村人達は不安げな表情をしている。
その中の一人が声を上げる。
「ここからほど近い場所に、洞窟があります。そこが仮の拠点だって、魔人が……」
なるほど、補給地点ということか。
本丸ではなさそうだが、手がかりくらいはつかめるかも知れない。
なにより、人命が掛かっている。
「少し離れる」
「あの……ジーク様、どちらへ?」
「その洞窟へ行って村人を取り返してくる」
俺は竜騎士に連絡を取り、村の護衛を依頼する。
火炎竜たちは大喜びで、すっ飛んできた。
「ひぃいいい! ば、化け物ぉ!」
『安心するっす! おいらたちはジーク様の仲間っすよー!』
『そーっす! 守るっすー!』
怖い見た目とは裏腹に、人なつっこい火炎竜達。
「大丈夫だ。みんな大人しくていいやつらだから」
『『『やっったー! 褒めてもらえたー!』』』
「まあ、ジーク様が安全というのでしたら……」
驚き怯えていた村人達も、少しだけ心を開いてくれた。
「さて、行くか」
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「女勇者にダンジョン奥地で殺されかけパーティ追放されたが、触れただけで全てを支配する最強テイマーに覚醒した~今更謝ってももう遅い。元仲間達に復讐≪ざまぁ≫していく~」
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