126.除雪作業
俺たちの魔王国にも冬が訪れた。
最近はほぼ毎日のように雪が降っている。
ある晴れた日のこと。
魔王都の外れの街道にて、俺は竜騎士たちと除雪作業を行っていた。
「ジークさーん」
馬車をカラカラと走らせながら、商人のラルクが近づいてきた。
「ラルク。どうした?」
「取り引きの帰りです。ジークさんに御挨拶をと思って」
「わざわざいいのに」
「いえ! いつも大変お世話になっていますから」
「ちょうどいいや。休憩にするか」
『『『さんせーっすぅ!』』』
騎士の火炎竜たちは各々、おやつを食べている。
俺はラルクの荷馬車に座って、茶を飲んでいた。
「ジークさん、驚きました。この道、全く雪がないですね。昨日確か大雪だったはずですけど」
「良く知ってるな」
「商人は情報が命ですから」
魔王都からの街道を見やる。
きれいに舗装され、根雪ひとつない。
「騎士団と協力して除雪作業してるんだよ」
「魔王であるジークさん自らですか?」
「ああ。みんなでやれば早く終わるしな」
「なるほど、部下にだけ仕事を押し付けず、率先して仕事をする。上司のカガミですね。さすがジークさん!」
特に変わったことしてないのに感心されてしまったな。
「除雪ってどうやるんですか?」
「まあ見たほうが早いか。おーい、誰か乗せてくれ」
『『『おれがやりまっす!』』』
火炎竜たちが、どっと押し寄せてくる。
『どけ! おれがジーク様を乗せて飛ぶんだ!』『ばかやろ! それはおれの仕事だ! てめえはすっこんでろ!』
ぎゃあぎゃあ、と竜たちが、誰が俺を載せるかでもめていた。
「さすがジークさん、大人気ですね」
「ありがたいことだよ」
口論の末勝ち取った火炎竜の背に乗って、俺はまだ雪が残る地域の上空へとやってきた。
「まあやることは単純だ。神の手をつかえば、ほら」
右手が光り輝くと、その光を受けた部分が水へかえった。
「雪を元の状態、つまり水へとかえしたわけですね! す、すごい……すごすぎますよジークさん!」
キラキラした目をラルクが俺に向けてくる。
「そんなすごいか?」
「ええ! だって除雪なんて重いし疲れるし、なにより雪をかいても一円も利益がありません。しかし街道をふさがれれば損失につながります。ジークさんの手があれば、一瞬で除雪が終わるんです。これは、大変すごいことだと思います!」
「特に気にせずやっていたんだがな」
『さすが兄貴っす! すごいことを無自覚にさらってやってのける! そこに尊敬するっすあこがれるっすぅう!』
作業を終え、俺たちは馬車まで戻る。
『くそ! ジーク様をのせやがって! うらやましいぞ!』
『へっへーん、いいだろぉ~』
『くっ! ジーク様! 次はぜひおれに!』
『ざけんな! 抜け駆けNGだぞ!』
ぎゃあぎゃあ、と火炎竜たちが俺の取り合いをしている。
「ところでジークさん、知ってますか? 【魔人兵団】のうわさ」
「魔人兵団?」
商人のラルクは、あちこち回っているため、情報に明るいのだ。
しかし魔人兵団か、聞いたことないな。
「最近各地の村々でそいつらが暴れてるらしいです。村を焼き、人を殺し、蹂躙していくとのこと」
「魔人……か」
脳裏をよぎるのは、マケーヌをはじめとした魔人たち。
そして裏で手を引いているジャマーと、そして先代魔王の息子ルゥザー。
「魔人兵団はかなりの速さで進んでいるらしいです。魔王国とはまだかなり距離がありますが」
「そうか……ついに動き出したか」
新生魔王軍、とジャマーは名乗っていた。
ルゥザーを頭に据えた連中のことだ。
おそらく魔人兵団は、彼らの傘下だろう。
「そいつらの親玉の居場所とかって知らないか?」
「それはさすがに。ふらりと訪れては、好き勝手蹂躙して、すぐまたどこかへ消えてしまうそうです。拠点はわからないとのこと」
「そうか……今度魔人兵団が暴れてるって噂が入ったら、俺に連絡くれないか?」
「かまいませんが、どうするんですか?」
「潰す」
「な、なるほど……まあジークさんなら余裕でしょうけど。しかしなぜ?」
「先代からの宿題でな。他にも何か情報が入ったら頼むよ」
ラルクは笑顔になると、大きくうなずく。
「身命を賭してやらせてもらいますよ!」
「おおげさだなおまえ」
「いえいえ! ジークさんには助けてもらった恩と、返しきれない大きなカリがありますから! 一所懸命、情報収集やらせてもらいます!」
ラルクはそういって、俺たちのもとを去っていったのだった。
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「女勇者にダンジョン奥地で殺されかけパーティ追放されたが、触れただけで全てを支配する最強テイマーに覚醒した~今更謝ってももう遅い。元仲間達に復讐≪ざまぁ≫していく~」
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