125.ルゥザー、魔人とともに動き出す
魔王ジークが、先代魔王と風呂に入っている、一方その頃。
先代の息子ルゥザーは、大陸北西部に浮かぶ、無人島に居を構えていた。
山を改良して作った城、【新生魔王城】。
その地下に広がる実験施設には、大量の魔人たちがひしめいていた。
「ルゥザー様」
「おお、ジャマーよ。良い出来だな、この【魔人兵団】は」
魔王軍指揮官の老人・ジャマーが、恭しく頭を下げる。
「ありがたき幸せ。行き場を失った難民どもを捕らえ量産した魔人どもですが、腐っても魔人。一体一体が魔族をも凌駕する強さを持っています」
「こんなにもたくさんの難民を、よくぞ都合良く集められた物だな」
「ええ、最近見つけた秘密の場所からごっそりと奪ってきました。間抜けが指揮官だと国民は大変ですなぁ……くくくく!」
魔人たちの数は尋常ではない。
物量で押せば、この世界なんてあっという間に滅んでしまうだろう。
「では次に、わしの作った魔人の中で、特に出来の良い10体をご紹介いたしましょう!」
ジャマーはルゥザーを連れ、別の部屋へと移動する。
そこは訓練場のようになっていた。
10体の魔人達が組み手を行っている。
凄まじい早さ、一撃一撃の重さは極大魔法にも匹敵する。
「皆のもの! ルゥザー様の御前である! ひかえおろう!」
魔人達はジャマー達の前に跪いて、バッ……! と頭を下げる。
「なるほど、この10体は知性も兼ね備えているようだな」
「ええ、彼ら【十戒】は、先日の負け犬勇者からデータを抽出し、その細胞をもとに作られた一品。パワー、スピード、魔法力……桁外れです」
「十戒……くくく、よい、よいぞ!」
ルゥザーは実に楽しそうに笑う。
一方でジャマーは誇らしげに言う。
「魔人兵団に十戒。これらがルゥザー様の覇道を手助けしてくださるでしょう」
「よくやったぞジャマー。褒めて使わす」
「ははー! ありがたき幸せぇええ!」
ルゥザーは十戒たちを見渡す。
その中で、異様なオーラを放つ魔人がいた。
「ほぅ、こいつは特に強そうだな」
「十戒がひとり、【不殺】の男でございます」
不殺と呼ばれた男は、全身を黒い鎧で包んでいた。
フルフェイスのカブトをかぶっているため、その顔は見えない。
「くくく……おれにはわかるぞ。この不殺という男、相当な恨みを抱いてるようだなぁ」
『コロス……魔王……ジーク……コロス……』
夢遊病患者のように、不殺の男はコロスと連呼している。
「負の情念は、われら魔のものに力を与える。こやつは十戒のなかで特に強いな」
「さすがルゥザー様、ご慧眼であらせられる!」
ルゥザーは不殺の男の肩に、ぽんと触れる。
「期待しているぞ」
『コロス……コロスぅうううううう!』
ぶわ……! と不殺の男から黒い魔力が湧き上がる。
ボシュッ! と一瞬でルゥザーの腕を消し飛ばした。
「貴様! 何をやっているのだぁ! ルゥザー様を傷つけるだと!? 打ち首にしてやろうかぁ!」
「よい、ジャマー。これくらい造作も無い」
ばちんっ! と失ったルゥザーの腕が元通りに、再生する。
「これくらいの気概がなければ、あの魔王を倒せぬからな。くく……よい兵を作ったな、ジャマーよ」
「は、ははー! 寛容なお心遣い、まことにありがとうございますぅ!」
魔人兵団。
十戒、そして謎の不殺の男。
「機は熟した。ジャマーよ、兵を放て。世界をわが手に収めるときが来た」
ルゥザーはにやりと笑って言う。
「新生魔王軍のお披露目と行こうじゃないか」
【※お知らせ】
先日投稿した短編が好評だったので、改題・改稿し、新連載としてスタートしてます!
「女勇者にダンジョン奥地で殺されかけパーティ追放されたが、触れただけで全てを支配する最強テイマーに覚醒した~今更謝ってももう遅い。元仲間達に復讐≪ざまぁ≫していく~」
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