122.神クラスの手合わせ
俺が妖精の国での騒動を終えてから、数日たったある日のこと。
「先生! ジーク先生! 神クラスになったんだってな! 手合わせしようぜぇ!」
俺のもとを訪ねてきたのは、神竜王。
魔王国に住んでいる神獣のひとりだ。
あまり荒事は好きじゃないが、しかし自分の力を知っておくことは大事だし、何より友達のせっかくの申し出を断るのも忍びない。
ということで、手合わせするべく、魔王国の外れへとやってきた。
「いやマジですげえなぁ先生は。人の体で神へとクラスアップしたやつなんて、前代未聞だぜ。さすが先生!」
「そうなのか?」
「おうよ! 少なくとも、おれが生きてる間では見たことないな」
正直神になったと言われても、その自覚はない。
特に体にも変化はない……が、神魔王の称号を得たことで、いくつか新しい能力は手に入った。
「そーいや神クラスがバトルすりゃ結構派手に周り壊れちまうな。先生、結界頼むわ」
「いや、必要ない。今ここは、おれたちがさっきまでいたのと別の空間だからな」
「別の空間……?」
「俺の左手……【神魔の左手】は、俺の魔力をもとにして、万物を創造できる」
剣や鉱石だけでなく、空間すらも新たに創出できるのだ。
「あっはっは! やべえな先生! マジで神クラスに相応しいじゃないか! さすがだぜ!」
神魔の左手以外の能力も試させてもらおう。
「これなら思う存分暴れまわれるな。それじゃ、いくぜ先生!」
「ああ、いくぞ【シャロン】」
瞬きする間もなく神竜王シャロンは、俺に接近する。
すさまじい速さの連打を、俺は手で打ち払う。
シャロンと拳がぶつかり合うたび、衝撃波が走って、地面を引きはがしていく。
彼は本気だ、岩をも砕く一撃を神速で繰り出してきた。
「あはは! すげえすげえ! おれの本気の拳に普通についてくる! これならどうだっ!」
ゼロ距離まで間合いを詰めて、アッパーカットを繰り出す。
俺は上空へと吹き飛ばされ、シャロンが追いかけてくる。
空中を舞いながら、俺たちは拳やケリを撃ち合い続ける。
空気が鳴動し、地面がめくれ、木々が吹っ飛んでいく。
だがこの作り上げた仮想の空間には命あるものは俺たち以外おらず、何を壊しても大丈夫だ。
「神竜王のおれと互角の体術。つまり身体能力が人間だったころからは比べ物にならないぐらい向上してるってわけか。さすが先生!」
バッ、と空中でシャロンが距離を取り、拳を構える。
「それじゃあこれはどうだ!」
圧倒的魔力が拳に集い、聖なる炎を拳にまとう。
「【火竜神拳】!」
繰り出してきたのは極大の炎より、威力も温度も桁外れの、業火の球を打ち出す一撃だ。
俺はそれを目でとらえ、そして、模倣する。
「【火竜神拳】」
シャロンがやったのと同じ様に拳を繰り出すと、全く同じ一撃が放たれる。
ふたつは空中でぶつかり合い、地面を、そして空を焼く。
あたり一面が焦土と化している中、俺たちは空中で相対する。
「すげえぞ先生、おれの技を一度見ただけで模倣するとかさぁ! それもランクアップによる恩恵か?」
「ああ。【神魔の眼】だ。万物を鑑定し、それを完璧に模倣することができる」
神魔の左手と組み合わせれば、魔法も物質も、見ただけで再現可能と言うことだ。
「まじかー、凄過ぎんだろ先生!」
くらり、とシャロンが空中で体勢を崩す。
俺は彼を抱き留めて、地上へと降りる。
「ぜぇ! はぁ! さっきのは魔力を食っていかんな。けれど、先生は無事そうだな」
「ああ。【神魔の心臓】。無尽の魔力を生み出す心臓を手に入れたからな」
「はは! こんだけ強くて、しかも魔力まで無制限に使えるとか、並みの神獣を凌駕してるぜ、先生。これでランクアップの恩恵は最後かい?」
「いやまあ、あと1つあるんだが、まあ、ちょっとヤバすぎてな」
俺は右手を見て言う。
さすがに右手を今使うのはな。
「これで終わりにしておくか」
「そうだな。シャロン、付き合ってくれてありがとう」
俺は威力制御した神の手を使って、神竜王の魔力を全回復させる。
「やっぱ先生はすげえ。おれの魔力をフル回復するなんて」
元気になったシャロンが、俺の肩に腕を回す。
「神獣と魔獣、あらゆる獣たちの王にふさわしい力だと思うぜ」
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