12.人さらい
俺は獣人国ネログーマへと招かれた。
深夜。
王都【エヴァシマ】にある、王の城にて。
「うーむ……広すぎて落ち着かん」
宮廷医として俺はこの城で働くことになった。
住むところも用意してくれるとのことで、この城にある立派な部屋をあてがわれたのである。
調度品もベッドもそれはそれは立派な物だった。
『おにーちゃーん……しゅき~……♡』
ベッドには神獣ハクが、枕元で丸くなっている。
すっかり気に入られたようで、ずっと一緒にいる。
「明日は【神獣王】様に会う……か」
神獣王とは、文字通り神獣たちの王様。
そしてハクのお母さんらしい。
謁見で機嫌を損ねたら、就職取り消し……なんて事態になりかねん。
「明日はしっかりしないと。しかし……神獣王か。さぞ立派な獣なんだろうな」
と、そのときだった。
『だれかっ、助けてくださいまし!』
「なんだ、いま声が……」
放っておくこともできず、俺は一応【武器】を手に部屋の外に出る。
床に手を置いてスキルを発動させる。
「【探知】」
これは触れたものに魔力を走らせ、内部構造を調べる医療用スキルだ。
本来なら病気の動物の内臓などを見る役割だが、こうして周辺探知に応用が可能だ。
窓から数名が出て行こうとしているのを探知する。
俺は疾風のように駆け抜けて、現場へと急行。
とある部屋の前までやってきて、バンッ! と扉を開ける。
部屋に入ると、数名の黒づくめの男達が、【女性】をさらおうとしていた。
その人は、とても美しい女性だった。
白い長い髪に、赤い垂れ目。
女性は口に猿ぐつわをされており、声を出せないようだ。
「……ばかなっ、【隠密】スキルを使っているわれらに、なぜ気付いたっ!」
黒づくめの男が目をむいて叫ぶ。
姿を隠して連れ去ろうとした、人攫いってわけだ。
「【麻痺!】」
スキルが発動し、黒づくめの男達がビシッ! と固まる。
肩で担がれていた女性がくらり……と墜ちる。
地面に激突する前に、俺は彼女をキャッチした。
「怪我ないか?」
こくこく、と彼女がうなずく。
「ち、くしょぉお……なんだ、この麻痺……強すぎる……!」
「魔獣治療に使う麻酔を応用してるからな」
「くそ……こんなところで、捕まってたまるかぁ……!」
バチンッ! と黒づくめの1人が麻痺を無理矢理破る。
「はぁ……はぁ……! こ、こんなこともあろうかと、対・状態異常用の宝具を用意しておいて正解だったなぁ! 国宝級のそれを使わせた罪……ただではすまぬぞぉ!」
男がナイフを取り出して、俺に襲いかかってくる。
俺は腰のポシェットから【武器】を抜いて、やつより早く投擲した。
ぐさっ、と【それ】が刺さる。
「うげえあっ!」
ぼと、とナイフを落とした。
俺は素早く近づいて、男のクビに回し蹴りを食らわす。
男はくるくると宙を舞って、どさりと倒れた。
「なんて……強さ。おまえ……なにものだ?」
「ただの医師だよ。新人のな」
「ふざける……な。どこの……世界に、こんな強い……医師がいるんだ……化け物め……」
がくん、と黒づくめの男が気を失う。
残りの面子には【眠り】スキルをかけて眠らせた。
男の手の甲から、俺は投げたそれを引き抜く。
「メスの本来の使い方じゃあないんだがな」
ハンカチで血を拭いて、俺は女性の元へと向かう。
猿ぐつわをメスで切って、しゃべれるようにする。
「怪我ないか?」
「ええ……ありがとうございます、【ジーク】」
「どういたしまして……って、あれ? なんで俺の名前を?」
ニコッ、と女性が微笑む。
ぴょこぴょこ、とよく見ると、白い犬耳にしっぽが生えていた。
「わたくしはあなたの雇い主ですからね♡」
「へ? や、雇い主……ま、まさか……」
ええ、と女性がうなずく。
「わたくしが神獣王でございます♡ ありがとう、命の恩人様♡」
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