119.勇者の悪あがき
俺は攻めてきた勇者を返り討ちにした。
草原に無様に転がるのは、折れた剣を手に持つ、勇者マケーヌ。
「くそくそくそくそぉおおおお! こんな展開は許されない! ボクは選ばれしものなんだぞぉおお!」
マケーヌは折れた大剣を手に、刃を自分に向ける。
「暴食の大剣よぉお! ボクを喰らえぇえええええ!」
ザシュッ! と剣先がマケーヌの体に突き刺さる。
『なにあいつ? やけになって自殺かしら? やったー! これで終わりねーはいてっしゅー……って、ええええ!? なんじゃありゃぁああああ!?』
妖精リリンが、上空を見上げて叫ぶ。
暴食の大剣に貫かれたマケーヌは、その体を異形へと変化させる。
見上げるほどの巨大な、醜悪な猪へと変化する。
『豚だー! 醜い豚さんだよぉ! 魔王様ぁやっつけてー!』
『姉上、下がって! 魔王様の邪魔をしないで!』
猪はデカすぎて見上げただけじゃ顔が見えない。
ぐぉ! と巨大な足を振り上げると、俺を踏み潰そうとする。
火竜を仲間に加え手に入れた【飛翔】スキルで飛び上がる。
『ぐははははぁ! どうだぁ魔王ぅう! 暴食の力を取り込んだボクの姿はぁ!』
『きめえんだよ! あんたの方がよっぽど魔王っぽい見た目だっつーのこの豚ぁ!!』
リリンに罵倒され、ビキッ……! とマケーヌの額に血管が浮かぶ。
『調子に乗るなよ底辺のゴミどもがぁ! 全部! 喰らってやるぅううう!』
猪の化け物は、口を大きく開く。
顎関節が壊れてしまうんじゃないか、というほど大きく開く。
そして一気に、吸い込みだした。
『どうぅわぁあああああああ! 吸い込まれるぅううううう!』
『なんて吸引力……! 大地も森も……なっ!? 世界を隔てる壁すらも吸い込んでいるなんて!』
妖精の国は、俺たちの住んでいる場所とは違う次元に存在するらしい。
ふたつを隔てる空間の壁すらも、この暴食の化けものは喰らおうと言うのか。
『魔王様! やつはこのままでは人間の国も飲み込んでしまいます!』
『いやぁあああああ! もう逃げ場ないじゃあぁああん!』
「大丈夫だ、問題ない」
俺は暴食の化け物めがけて、たんっ……! と地面を蹴って飛ぶ。
『魔王様!?』
『うわぁあああん! 何やってるの魔王様ぁあああ! 自分から食われるとか! なに自殺!? やめてよ死ぬならこの化け物倒してからにしてくれよおぉおお!』
妖精姉弟をあまり心配させないようにしないとな。
マケーヌの口の中に俺は吸い込まれていく。
『ぎゃーっはっはぁあああああ! 勝った! ついに魔王に勝ったんだぁあああああああああああああああ!』
化け物が歓喜の雄叫びを上げる。
『今のボクの口の中は異界化している! 吸い込まれたら最後! 二度と外の世界には帰れない! 終わりだぁ! 魔王! ボクの勝ちだぁあああああああ!』
と、そのときだった。
カッ……! と聖なる光が、化け物の腹の中で輝いた。
『なぁ!? なんだこれは……ボクの腹が……ぐ、ぐあぁああああああああ!』
激しい音を立てて化け物の体が爆発四散する。
聖なる光に飲み込まれ、巨大な暴食の獣は灰になっていく。
そして後には塵一つ残されていなかった。
『魔王様! よくぞご無事で!』
『うっひょー! あんな化け物瞬殺するなんてさっすが魔王様! わたくしは勝つことを心から信じてましたよぉ!』
リリンの頭にチョップを食らわせる。
「心配かけたな」
『魔王様……いったい、どうやって倒したのですか?』
「神の手は世界最高の治癒魔法。治癒の力は魔なる物には猛毒なんだよ。あいつの腹の中で、許容量を超える致死毒を流した結果、耐えきれなくなって爆発したんだ」
『なるほど! すごい! さすが魔王様です!』
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