112.麒麟による被害
俺たちは妖精の輪をくぐって、彼らの国へと転移する。
ぐにゃりと視界がゆがんだと思った瞬間、俺は別の場所にいた。
『うぎゃー! なにこれめっちゃ雨降ってんじゃーん! 帰るぅ!』
俺の肩に乗る妖精リリンが、空を仰いで叫ぶ。
空は分厚い雲に覆われ、滝のごとく空から雨が降り注いでいた。
「なるほど、麒麟による被害ってこういうことか」
『その通りでございますジーク様。麒麟の怒りのせいで天候は荒れ放題。これでは生活もまともに送れません』
レイス王子が沈んだ顔で言う。
国の惨状を憂いているのだろう。
『あー、こりゃ大変だねー。ざーざー降りで作物も育たんだろうし、外もまともに出歩けないや。困ったもんだー』
一方でリリンは、同じ王族なのに完全に他人事だった。
少しは国を憂いてくれよ……。
『まずは麒麟の封印されている場所へご案内します』
「その前に、この雨をなんとかするか」
『む、無理ですよ。麒麟の怒りを鎮めない限り、この大嵐は止められません。今までどれほどの宮廷魔術師たちが挑んでも、この魔法の雨は止められませんでした』
焦るレイス王子をよそに、俺は上空に手を伸ばす。
神の手を発動。
最高の状態異常回復魔法を用いて、今の荒れ狂っている空を、元に戻す。
まばゆい光が俺の手から発生する。
それは光の柱となって雲を貫く。
ぶわっ、と雲の幕がひいていき、元の青い空が戻った。
『し、信じられない! 奇跡です! また青空が見られるなんて!』
『うっひょー! まじで神業! さっすが魔王様! まじすげー!』
妖精姉弟が目をむいている。
『ジーク様! ありがとうございます! これで民たちも穏やかに暮らせます! ありがとう!』
『魔王さまー、とっとと麒麟を鎮めに行って、ちゃっちゃと帰りましょうよー』
やはり王にはレイスがなるのが一番だなって、俺はリリンを見て思った。
「感謝するのは早い。これは対症療法にすぎない。根本的な解決のためには、やはり麒麟の下へ行く必要がある」
『うへー、めんどーい。もう終わったし帰りましょうよぅ』
「レイス。麒麟の封印場所まで案内してくれ」
『かしこまりました、ジーク様!』
妖精の世界は人間のそれと違って、空気が非常に澄んでいた。
草花が生い茂り、流れる川も透き通っている。
草原を歩いていると、やがて深い森に到着する。
見張りの妖精たちから、大雨を止めたことを感謝されつつ、奥へと案内してもらった。
『なにこれ、でっけー岩じゃん。どこに麒麟いるの?』
リリンが見上げながら言う。
人間の倍くらいある岩で組まれた祠があった。
『この下に麒麟は封じられています。ここの出入りは宮廷魔術師100人で封印術を施しております』
『じゃ入れないじゃん。どーすんのさ』
『今、魔術師たちを呼んできます。数日かけて解除の儀式を行う必要があるので、少々お待ちを』
「いや、問題ない」
俺は右手を前に突き出し、神の手を発動。
施してあった封印術を、かける前の状態へと戻す。
祠の岩が砕け散り、下へ続く階段が出現した。
『す、すごい! 精鋭の魔術師100名で施した封印を、一瞬で解いてしまうなんて! さすが魔王様!』
『なんか宮廷魔術師たいしたことなくない?』
『ばか姉! 妖精の魔法適正はハイエルフの比じゃないの! その精鋭なんだから妖精の宮廷魔術師は選ばれし最高の魔術師集団! それが束になってもかなわないんだから、魔王様が規格外すぎるの! わかった!?』
『お、おうわかったよ……ちぇー、そんな怒らなくていいじゃーん。ま、いこうよ魔王様。ちゃちゃっと倒しにさ』
俺はリリンの頭を軽くはたいて、祠の下へと向かうのだった。
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