108.妖精の国からの使者
ある日のこと、火竜から森でトラブルがあったと連絡があった。
『兄貴とこーして出動するの、めっちゃひさしぶりでうれしーっす~!』
「最近外へいったりゴタゴタしてたからな。今度みんなとどこか遊びに行くか」
『わーい! 楽しみっすー!』
『わたくしめも楽しみですぅうう!』
俺の肩には、司書の妖精リリンが乗っている。
「おまえ別についてこなくてもいいぞ」
『ご心配なく、アンチ皇帝陛下からジーク様の補佐をするよう申し付けられてますから!』
まあ別にいいか、ついてきたいなら。
『もーすぐつくっす! あにき!』
森のなかで複数人の男たちがいた。
俺は火竜の背からおりて着地する。
「なにやってんだおまえら? こんなところで」
ガラの悪そうな男たちが、馬車を襲っているところだった。
御者を務めるエルフの男が、血だらけになって倒れている。
「あぁん! なんだてめえはぁよぉ!」
リーダー格らしき男が俺にすごんでくる。
だが俺は微塵も動じることなく、周囲の状況把握に努める。
仲間の男たちの手には、鳥かごのようなものがあった。
中には妖精の姿があった。
「盗賊か? 妖精を捕まえて売ろうって魂胆か?」
「だったらどうした! てめえには関係ないことだろうが!」
「ああ。だが合意もなく誰かを連れ去ろうとする姿を見過ごすわけにはいかない。その子を置いて消えろ」
鳥かごの中に収まっていた妖精が、俺の方を見て「あなたは……! もしや!」と何か目を丸くしていた。
「うるせえ! おいてめえら! この偉そうな男をぶち殺してやれ!」
「はぁ……」
俺は少しだけ彼らをにらみつける。
それだけで、チンピラたちが泡を吹いて気を失った。
「ひぎぃ! ひぃいいい! な、なんだよ……なんだよぉおまえぇ!」
『さっすがジーク様ぁ! もはやスキルなど使わずとも、にらむだけで相手をビビらせることができるなんて! すごい! 圧倒的強者! よっ、世界最強の魔王!』
調子いいなこの妖精。
その後、盗賊たちを捕縛し、負傷者の治療、そして鳥かごから妖精を出してあげた。
『たすけてくださり、ありがとうござました!』
妖精の男の子が、ぺこぺこと頭を下げる。
「気にすんな。ところで、妖精がここで何をしていたんだ?」
『長く行方不明だった姉を探していたところでした』
「姉? でしたって、どういうことだ?」
妖精は俺を、というか俺の肩に乗っているリリンを見やる。
『やっと見つけましたよ、姉上!』
『げげっ、レイス……』
リリンがばつが悪そうに顔をしかめる。
「探していた姉っておまえのことだったのか。家族なんだからすぐ声かけてやれよ」
『い、いやーびっくりー、ぜんぜん気づきませんでしたなぁ。別に見つかったら厄介だなとか、面倒だなとか、気づかないふりして逃げようとか全然思ってません!』
こいつ……。
『さぁ姉上、帰りますよ! 女王陛下が、母上があなたの帰りを待っています』
女王? 母上?
「もしかして……リリンって、王族なのか」
『申し遅れました。わたくしはレイス=フォン=ハーシェル。妖精国の第一王子です。そこの不肖の姉は、妖精国第一王女です』
【※お知らせ】
先日投稿した短編が好評だったので、新連載としてスタートしてます!
「宮廷鍛冶師がいなくなって後悔しても今更もう遅い~「王家に伝わる伝説の武器に手入れなど不要」と無知な王子に追放され自由を得たので、念願だった最強の魔剣作製に専念する。引く手あまたなので帰る気は毛頭ない」
https://ncode.syosetu.com/n9195gp/
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