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100/241

100.マーゴン、皇帝に復讐しようとして失敗



 魔王ジークによって、マーゴンの悪事が暴露された。


 話はその日の深夜。


「はぁ……! はぁ……! くそぉ! あの小娘めぇ……! よくも恥をかかせてくれたなぁ……!」


 血走った目のマーゴンが、深夜の帝城を走っていた。


 財力のある彼には、城内にかなりの数、彼に味方する勢力が在る。


 彼らの協力の下、牢屋を脱走した次第だ。


「おのれサーシャぁ……よくもわしを牢屋にぶち込んでくれたなぁ……! 復讐だぁ……! 復讐してやるぅ……!」


 財務卿としての地位、貴族の位も剥奪。

 ため込んでいた金も屋敷も没収され、何もかもを失ったマーゴン。


 彼に残されたものは、自分を酷い目に遭わせた女への復讐心だった。


 ……彼は、正気ではなかったが、魔王に復讐しても勝てないと理解しているので、ギリギリ正気と言えた(負け犬根性とも言える)。


 マーゴンが向かうのは皇帝の寝室。

 当然見張りがいるのだが……。


「【ドレインタッチ】」


 ぺたり、とマーゴンが見張りの男達の腕を掴む。


 くたり……とその場にへたり込んでしまった。


「うひゃひゃ! 見たかわしの自慢の魔法道具はぁ……!」


 彼が身につけている腕輪には、魔法が付与されている。


 ドレインタッチとは、触れた相手を弱体化させる魔法のこと。


 兵士達を無力化したマーゴンは、そのまま皇帝の寝室へと入る。


「へへ……サーシャァ~……」


 下卑た笑みを浮かべながら、皇帝の眠るベッドへと向かう。


 人形もかくやというほど、美しい少女が目を閉じ、安らかな寝息を立てている。


「ぐへへ……どうせ何もかもお仕舞いなんだぁ……最後くらいは良い思いをさせてもらうぜぇ~……」


 ベッドの上に乗り、四つん這いになって、マーゴンが近づく。


「ん……ひっ! な、なに!?」


「おやおや、おめざめですかぁ~陛下ぁ~……」


 べろりと舌なめずりをするマーゴンを前に、サーシャは恐怖した。


「ぶ、無礼者! 王の寝所に無断で入るとは! 万死に値する!」


 サーシャは氷の魔法で攻撃しようとする。


「おっと、そーはさせねえ! 【ドレインタッチ】」


 パシッ、とマーゴンがサーシャの腕を掴む。


「あ……」


 くたり……と彼女はベッドに倒れ込む。


「か、からだが……うごかない……」

「うひゃひゃ! この腕輪の効果だよぉ! 触れたどんな相手でも弱体化させるんだぜぇ~! ご自慢の魔法もわしにはきかないんだよぉ!」


「そ、そんな……」


 マーゴンは皇帝に馬乗りになると、服に手をかける。


「は、離せ下郎!」


 ビリッ! と乱暴に服を引きちぎる。


「いやなこった……! げへへ……いい体してるじゃねえかぁ陛下ぁ~……」


 さらけ出されたサーシャの裸体は、妖精と見紛うほどに美しかった。


 涎を垂らしながら、マーゴンは覆い被さる。


「いや……だれか……たすけ……て……」


「げへへ! 誰も助けねぇよお! 見張りの兵士はみんなおねんねしてる! そんなか弱い声で助けを呼んでも、誰も来やしないんだよぉ!」


 自分もズボンを脱いで、サーシャを犯そうとした……そのときだ。


「そこまでだ、ゲスが」


 誰かの拳が、マーゴンの横っ面を強打した。


「ふげぇあぁああああああああああ!」


 勢い良く吹っ飛び、壁に激突する。


「ジーク様!」

「大丈夫か、サーシャ」


 ベッドの上に立っているのは、黒衣の魔王、ジークだった。


 彼は身に着けているマントをサーシャに着せる。


「なにもされていないか?」

「ジーク様! わたし……わたし……! 怖かった! あの男に犯されそうになって……!」


 ふらりとマーゴンは立ち上がる。


「き、貴様は……魔王。どうして……ここに……?」


「おまえは知らんようだが、俺は今日ここに泊まってたんだよ。明日会議を行うためにな。そしたらサーシャの悲鳴が聞こえたんだよ」


「そんな……あんな小さな声を、どうして……?」


「俺は獣ノ医師。獣たちの声なき声を聞くもの。聞こえるんだよ、弱っているやつの声がさ」


「す、すごい……! まるでピンチに駆けつける、物語のなかの英雄のようです! さすがジーク様!」


 キラキラと輝いた目を、サーシャは魔王に向ける。

 年相応の女の子のような感じになっていた。


「マーゴン、おまえ、これだけ悪事を重ねて、ただで済むと思っているのか?」


 ジークはゆっくりと、マーゴンに近づいてくる。

 

「サーシャはこれから仲良くしていこうっていう相手だ。それをおまえは傷つけた。……俺は、身内に手を出すやつを許さん」


「み、身内だなんて……そんなぁ~……♡」


 魔王にふさわしいオーラを放ちながら、ジークはマーゴンのすぐ近くまでやってくる。


「く、くそぉ! 【ドレインタッチ】!」


 ガシッ! とマーゴンはジークの腕を掴む。


「はっはー! か、勝ったぞぉ! この魔法道具はなぁ! 遺跡より発掘された超レアな魔法道具だ! いかに魔王といえど、弱体化してみせる!」


「そうか?」


 パキ……とマーゴンの腕が、凍り付く。


「ひっ! こ、氷の魔法!? なんで!?」


「その程度で俺が弱くなると思ったか?」


 パキパキパキ……! とマーゴンの体が芯から凍り付いてく。


「おまえは危険だ。この世から退場願おう」

「い、いやだ! いやだぁあああ! 許してくれぇえええええええ!」


 泣きわめきながら、命乞いをする。


「心を入れ替えるからぁ! だからぁ!」

「もう遅い」


 カキンッ! とマーゴンの体が一瞬で凍結する。

 体の内側から極低温で氷漬けとなった。

 自力で凍結を解くことは不可能なほど。


「氷漬けになって反省してろ」


「ジーク様……ジーク様ぁ……!」


 サーシャは感涙にむせながら、魔王に抱きつく。


「ありがとうございます! あなた様は命の恩人です!」

【※お知らせ】


新作の短編、書きました!

時間がある方はぜひ読んでみてくださいー!

よろしくお願いします!


※タイトル

「宮廷鍛冶師がいなくなって後悔しても今更もう遅い~「王家に伝わる伝説の武器に手入れなど不要」と無知な王子に追放され自由を得たので、念願だった最強の魔剣づくりに専念する。引く手あまたなので帰る気は毛頭ない」


※URL


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★1巻11/15発売★



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― 新着の感想 ―
[一言] あれ?これっていつでも女王を無き者にできたのでは? こんな野心がある男がなぜ今まで実行しなかった(できなかった)理由が欲しいところではあります。
[気になる点] 「ありがとうございます! あなた様は命の恩人です!」 ⇒殺されそうになったわけでもないのに『命の恩人』とは、いつどの場面でそんな大層な呼び名が付く程の命の危機にさらされたのでしょうか?…
[一言] 別世界の魔王「弱体化させたくらいで弱体化すると思ったか?」
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