01.獣ノ医師は認めてもらえない
短編「宮廷【獣医】、国外追放のち獣の国で幸せになる~森で会った神獣を治療したら、臣下のケモ耳少女たちから好待遇で雇われました。え?動物たちが言うことを聞かないから帰ってこい?いやちょっと無理ですね」
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を連載版として、手直ししながら投稿していきます!
「おい、【ジーク】。この給料泥棒。こんなとこで何やってんだ?」
王都郊外にある、国営牧場にて。
俺【ジーク】が家畜の牛たちを見ていると、宰相が柵の向こうから俺に声をかけてきた。
作業をやめて、俺は彼に近づく。
「宰相殿。この牛たちにビタミン剤を打っておりました」
手に持っていたマジック注射器を見せる。
魔力を込めると注射針を最適な太さや長さに変えられる。
俺が開発したものだ。
「ビタミン~? なぜそんなことをするのだ?」
「食肉用の牛はサシを入れる関係でどうしてもビタミンが不足しがちだからです」
しかし俺の説明を聞いても、宰相はフンッ、と小馬鹿にしたように鼻を鳴らす。
「食用に飼っている牛にそこまで手をかける必要などない。金の無駄だ」
「しかしきちんと手入れした方が結果的に質の良いものを安価で提供でき、国民が満足するかと……」
「ああもううるさい! この給料泥棒! おまえのへりくつはもううんざりだ!」
ぺっ……! と宰相が俺につばを吐く。
「ジーク、おまえたち【獣ノ医師】は昔からそうだ。動物のためとかぬかし、余計な金を捻出させよって!」
俺たち【ベタリナリ】の一族は、【獣ノ医師】といって、代々国に仕え、国の所有する動物たちの治療・管理を行ってきた。
国は多くの動物たちを抱えている。運搬用の馬、家畜用の牛だけじゃない。
竜騎士たちのドラゴン、国防用に特別訓練された使い魔。
それらの体調を管理するのが、俺たち獣ノ医師だ。
「余計なって……全部必要なことです。動物の飼育管理には手間暇がかかる」
「黙れ! 畜生に薬なんて上等なものは無駄なのだ! おまえも無駄だ! 無駄無駄無駄!」
ドンッ……と宰相が俺のことを突き飛ばす。
近くに詰んであった牛糞のなかに、ぐしゃっ、と俺はツッコむ。
「城に戻る前にしっかり風呂に入っておけ。牛糞臭くてかなわんからな」
俺をせせら笑うと、宰相は立ち去っていった。
「やれやれだ……」
よいしょ、と俺は立ち上がる。
「無駄……かぁ」
獣ノ医師は、人間の医師にくらべ重要度は低いとされる。
そりゃそうだ、家畜は結局最後には食われる。
そんな命を、なぜ救うのかと馬鹿にするものも多い。
「動物だって生きて、命があるんだ。病気もするし怪我もする。こいつらの声なき声を聞き取り、それを救えるのは、獣ノ医師だけだ。誇りある仕事だよ、なぁ?」
俺は牛に語りかける。
やつらはのんきに草を食んでいた。
だが今朝よりは心なしか、元気よくもりもり草を食っていた。
ま、牛だしな、ありがとー、なんて言われるわけもない。
「じゃあな、また来るわ」
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