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俺の仕事は異世界調査員!  (現在休載中)  作者: みさご
2章:初めての異世界と仲間
19/223

人として強いとは

一章は元社畜でフリータースタート。

二章は着任初期で失敗します。

そのため三章が始まるまで暗めの流れが何度かあります。

また初期は設定の為、専門用語が多く出ますが余り気にしないで下さい。

 俺はミディアから強い口調で怒られる事になった。


「それはダメ! あたし達は仮でもアルプ衛士国の妖魔駆除師なんだよ? 無料で仕事をしたら違反になるの。賊の財産は本来討伐者の物が決まりなの!」


「だ、だけどそんなつもりじゃ ……何とかできないかな?」


「そんな顔してもダメ…… はぁ、なんとか誤魔化して依頼って事にしてみる。でも報酬の2割は受け取ってね?」


 なんじゃそりゃ?

 日本では……

 ……なかったな。


 ここは別の世界。

 ここの決まり事。

 ここは無法地帯。


 無料だと傭兵派遣業が成立しない。アルプ衛士国も収入源が減る。変な前例を作れば他の傭兵たちが迷惑をする。


 例えばだが、報酬もなく賊のお宝も貰えない。そんな条件で命をかけて自分に関係のない賊を退治する。そんな人がどれほどいるだろうか?


 物語のように賊より強い正義の味方が、無償の善意で必ず現れる保証は?


 それに助けたとしても、無国籍で蔑まれているミックス達では名声すら得られない。だから、報酬やお宝で助けを求める必要がある。


 でなければ、助けがくる希望もほとんど無くなってしまうのだ。思えばアメリカの西部開拓時代に賞金稼ぎなんて職業が流行った。結局金目当て、地球も環境や時代を考えればたいした違いはない。


 そんな訳で、ミディアが略奪品の2割という依頼書を偽造してくれた。


 2割未満はアルプ傭兵の規則違反。それでも2割は住民が主力だった場合らしい。本来はアジトの特定や補助的な仕事の報酬。


 そして、今は攫われた娘達全員が死骸を漁っている。あんな目にあったばかりなのに、ここの人達は逞しい。


「あたし何か涼太の表情で何を思ったか解った。面白いね! あのね、涼太…… 都市のミックス達は、安全と引き換えに奴隷の様な扱いや、都市の寄生虫と言われる事を受け入れているの。不満はあると思うけど」


 ミックスとして生まれただけでそんな扱い…… 不満が無い方がおかしい。


「でもね、この辺りは斑の森と呼ばれる豊な森と妖域が入り混じっている所。そんな危険な所と覚悟して、人として生きる事を望んだ者が集って集落が出来たんだ。だから妖魔や賊に襲われても簡単には(くじ)けないよ?」


 どんな境遇でも人である事を諦めない。それはとても難しい事だ、強くて立派な人達と思う。生きる為に必要な物を取り返しているだけ、金が欲しい浅ましい連中とは違うのだ。


 俺なんて、会社が怖くて社畜に甘んじ、結局使い潰された。


 ミックスだから同情なんて烏滸(おこ)がましい。彼女達は戦っているんだ。この世界が押し付けた理不尽と。

 

 俺は愚痴とぼやきぐらいだった…… 斑の森の人達は、俺よりずっと誇り高い生き方を選んだ尊敬すべき人達。


「ごめん、ミディア。助けておいて無償は侮辱になるね、失礼を許してほしい」


 武力的な強さなんて関係ない。俺は本当に強い人を間違えていた。


 人として強いとは、どんな境遇でも己の生き方を通す者。見栄や外聞を気にするのは弱い証拠。真に誇り高い者とは、全力で生きながら、それでも人としての道を誤らない。それが出来る人。


「涼太…… それを分ってくれる人間って滅多にいないから嬉しい。でもこれは好きで選んだ生き方だから、理解してくれただけで十分だよ」


 話が終り、俺は賊が使っていた水場から装甲車のポンプで樽に水を入れる。温度調整は給湯器とコンロで沸かしたお湯を使う予定。


 しかし、装甲車の動力は水竜の竜玉だろ? 水ぐらい作れよ、と思ったが、危険なので決められた制御以外できない、って言われたのを思い出した。


 案外使えねぇ玉ころだなぁ。


 今後の為に、空気中の水分や地下水を集められないか窓花に聞いてみた。


「涼太様、空気中の水分は集められますよ? 竜玉制御機能に局地的豪雨がありますから、停車して雨の回収用シートを組み立てれば可能です。ただ、周辺が豪雨となりますので場所は選んでくださいね」


 そういや資料にそんな機能があった。簡単にいえば、小さくて強めの低気圧を作って雨を降らせる機能。


 そのため、停車して装甲車より大きい漏斗のような防水シートを設営。ろ過と殺菌をへて装甲車の貯水槽に送り込まれる。


「そうだった。しかし、今回のケースだと貯水槽が小さいな……」


「改善案としては貯水タンクを外部に増設するのがよろしいかと、入手しやすく錆に強い銅か青銅が材料によいですね。では装備の剥ぎ取りをお願いします」


 ふむ。電気溶鉱炉で溶かして材料にもどすとして……


 叩いて円筒状にして溶接すればいいか? 清掃可能な様に片方はネジにしてパッキンをしこもう。となると…… 内部は切削して形を整える作業がいるな。


「貯水槽の増設はいいね、銅か青銅は回収しておくよ」


 今は無理だが何かと水は多い方がいい。仕方ないので、今回は水が溜まるまで洞窟からの物資を搬出にはげむ。


 それと、偶に銅や青銅製装備のはぎ取りを行う。


 斑の森の誇り高い人達、生きる為の戦いなので遠慮は彼女達への侮辱だ。などと難しく考えていたら【拠点の外は剥ぎ取り自由だけど捨てに行くから急いで】とミディアの声が聞こえた。



★ようやく作業終了


「ミディア、金品の回収が終了したよ。追加で奴隷商の馬車とお金もたっぷり。食料もあるけど略奪品との区別が難しいから、確認と配分を頼めるかな?」


「任せといて、だけど先に賊の死骸を捨てに行きたい。剥ぎ取りも終わったし死骸も装甲車に縄でつないである。ただ、捨てたい場所があるんだ…… お願いしてもいいかな?」


 死体は疫病の原因にもなるし、希望地があっても不思議は無い。心配があるとすれば、あまり遠いと縄が持つかだ。


 でも、捨てたい場所を聞いて感心した。各集落に隣接している妖域、その奥にある場所。そこは狼の群れが住み着き土も耕作に向かないらしい。


 その場所に狼の食料として死体を捨てに行く。


 食料をえた狼は一時的に増加するが、縄張りは同じなので獲物が足りなくなる。そして危険でも妖魔の子供を狙う様になる。最終的には狼が返り討ちにあって元にもどるが、妖魔も減るので暫くは集落が安全になるって仕組み。


 ホント転んでもただでは起きない逞しさだ。助けた甲斐(かい)もマシマシです。

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