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俺の仕事は異世界調査員!  (現在休載中)  作者: みさご
2章:初めての異世界と仲間
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初めての賊討伐

一章は元社畜でフリータースタート。

二章は着任初期で失敗します。

そのため三章が始まるまで暗めの流れが何度かあります。

また初期は設定の為、専門用語が多く出ますが余り気にしないで下さい。

 ミディアはまだ寝ていなかったようだ。でも、自分の惨めさに泣いている時に来るなんて、タイミングが悪すぎる!


 涙よ止まれ! 早く! 早く!


「涼太…… 寝るんじゃなかったの? 他の集落から難民が来たから? でも鎧や兜は警戒しすぎじゃない?」


「あ、いや。賊が気になって寝れなくて気晴らし、星でも見て落ち着こうかと」


 声も変だし無理すぎる!

 今は一人になりたいの!

 お願い! 空気読んで!


「涼太は人間の父さんだけじゃないんだね…… ハーフでもミックスでも、亡くなった人や攫われた子達のために、泣いてくれるんだ……」


 もう他の集落の状況を知っちゃったか…… でもちがう! 窓花への劣等感なんだ! そんな好意的な誤解は余計に辛いから!


「あたしも連れてって? 行くんでしょ? 助けに。あたしも父さんの仇を討つ権利、あるよね?」


 ちっ! 勘のいい子供は嫌いだよ…… 誤魔化そうとしたが無理っぽい。そしてこの子は退いてくれない。


「君の願い事はかなえてあげる、だから僕と契約してくれないかな?」


「涼太が僕って…… ぷっ! 変なの! でも…… あたし何でもするよ?」


 ? 今、何でもするって…… ダメだ、ネタに逃げている時じゃない! ミディアと真剣に向き合わないと。


「ごめん、ちょっとふざけすぎたね ……攫われた子はハーフだけじゃなくミックスもいる、見目(みめ)がいい娘ばかり。ハーフは高く売れるらしいけど、ミックスの子達は多分、酷い目に遭っている…… 意味はわかるね?」


 ミディアはそれでもしっかりと頷く。


「目にするのは辛いと思うよ? 俺は見せたくない」

「涼太は分かってないね。あたしは妖魔駆除師の娘で弟子だよ?」


 なぜ陽気に話しているんだ? 辛いのは、真っ赤な目と声でバレているぞ?


「ゴブリンやオークに攫われた子も何度か助けたし、人間の比じゃ無いと思うよ? どんな目に遭うかせつめ……【だまれ!】」


 辛いからこそ助けたい、とミディアの気持ちが強く伝わった。だけど、それで自分をおとしめようとするのは絶対に許さない!


「あ、いや…… 怒鳴ってごめんね…… でも女の子がする話じゃないよ」


 やだもう、この世界…… 何でおっさんが、子供にセクハラされなきゃいけないんだよ!


 日本との常識の違いが激しい…… 早くも調査を投げだして日本に帰りたくなってきた。文化や価値観が違う、それがこんなに厄介だとは予想外だ。


「あたしも不謹慎でした、ごめんなさい。でも知ってるから大丈夫。わたしが持ってるこの薬は避妊薬なんだ、後でも先でもちゃんと効くやつ。父さんの弟子になった時に持つように言われた。だから覚悟はとっくにすませてるよ?」


 あの糞親父、殴りてぇー! でも、死んでるから殴れない。ちくしょう! 16歳の娘に覚悟させるなんて、おかしいよ……


 この件はメモして一緒に墓に埋めて、奥さんにバラす! これはもう決定事項! 絶対にだ!


 だが、ここまで言われて。いや、言わせて。断れる根性は俺にはなかった。しかし、連れてく以上はどんな方法を使っても絶対に守りきる。まずは現地採用にして、支給装備を使えるようにしよう。


 あれは禁則事項だけのはず。

 もし隷属や従属なら……

 女神に反逆してやる!


「わかった。だが、指示には絶対に従う事。それと日本の神様と契約してもらう。それが条件になる」


「なんでもって言ったから当然従うよ? 父さんの仇討ちと攫われた子を助けられるなら、あたしは何も問題ない」


「ちょっと禁止事項があるだけだよ、何か言われても俺が絶対強制させない」


 運よく通信環境が良かったので、直ぐに映像付きで回線がつながった。 


『涼太、久しいの。早くも契約とは思わなんだ、契約は秘密を守るだけじゃ。決して隷属とか無いから! 涼太は我らと縁が出来ておる、強い想いはメールや通信で無くても何となく届くのじゃ!』


 通信がなくても強い想いがとどく? そう言えば…… 契約の話をきりだす前に隷属の話が女神様から出たな……


『だからの…… この件を警察沙汰にしようとか! 帰ったら社を打ち壊そうとか! 物騒な思いはやめてくれぬか? マジで! (けが)れとなって辛いのじゃ、頼む!』


『……ん……契約はとてもホワイト……真っ白で目が痛いほど……なのに……瘴気の籠った念……無実なのに酷い……神にはとても有害……』


 有害なんだ……

 無実なのに苦しめた。

 深く謝罪の念を送る。


 契約は技術の拡散や秘密を守ることだけ。調査協力への誓いはあったが、現地採用は支障なく完了した。


「指弾じゃなかったんだ。涼太が使徒様だったなんて知らなくて、あたし失礼な態度を……」


「絶対使徒とか上等なもんじゃないから! 絶対ちがうから! いつも通りでよろしくお願いします!」


 自分の安心ほしさに契約させてしまった、俺はすでに罪悪感で死にそうなんです。解約方法は必ず資料から探し出すので、今は許してください。

 

 ひとまず契約で支給品が装備可能になった。出発前に軽く練習してみる。重すぎる銃は苦手だが、ミディアはマークスマンとして天才的だった。


 クロスボウも直ぐだったし、この子は狙撃の才能がある。


 閉所での救出なので当初はMP5Fの予定だった。だが、残して来た昆虫型ドローンの情報から、賊は遊び疲れたのか救助対象は全員牢屋。


 これで跳弾や巻き込み事故の心配も無くなった。岩の一本道なら数人纏めて貫けるFA-MAS・G2の高速徹甲(米軍M995弾)弾がいい。それに救助対象と分断できれば、柄付き手榴弾も使えそうだ。


 ミディアの銃はMP5F。

 自衛と援護の場合のみ使用許可。

 ただし、シモンさんの仇は例外。


 サブウエポンはP229。

 防具とヘッドセットとゴーグル。


 見た目の配慮は捨てた。無駄弾も使わない。動きに支障が出ない範囲で弾薬を装備する。ミディアにも合わせてもらう。下手な誤魔化しより万全の装備。もう、遠い異国の変な傭兵として開き直る事にした。


「作戦は理解できたよ。涼太の道具は便利だね、音が聞き取りにくいけど」


「『これは声だけ届ける事が出来るんだ、よく聞こえるだろ? 凄い音がする道具も使うから』作戦までは外していても構わないよ?」



★賊の拠点近く


 さて、状況開始だ。装甲車なので賊の拠点まで直ぐに着いた。近いので低速で接近して隠蔽地点で停止。


 見張りは疲れているのか立ってはいるが、今にも寝そうで役にたっていない。


 それでも慎重に岩場を回り込んで、その後に岩場を登ってマーカーを確認。モグもいるし、分かりやすかった。


「これが爆薬? こんな小さいので岩が崩せるの?」

「問題なく崩せるよ。音が凄いから火を点けたらヘッドセットを付けてね」


 モグのお蔭で、音もなく楽に削孔が掘れた。次に爆薬を仕掛け、導火線を束ねて岩陰に隠れる。


 既に降下用ロープも準備済み。導火線に火をつけてしばらくたって、轟音が響き崩落。素早くフラッシュバンも投げる。爆音と崩落で要らないかもしれないが、念には念を入れて確実に安全を確保。


 その後に素早く降下し、P229で生き残りを半グロ弾で始末した。


『あっと言う間だね。涼太は盗賊に向いているかも、恐ろしく手早く簡単すぎて怖いぐらい』


『し・ま・せ・ん! 通路に手榴弾を投げるから牢屋の確認を頼む。危ないからまだ出しちゃだめだよ?』


 本当に呆気なかった。2個の柄付き手榴弾(ポテトスマッシャー)を時間差で通路の奥に投げただけ。思ったより破片が跳ね回り、轟音と酷い損害に怖気づき、下っ端はあっさり逃げ出した。


 結局、FA-MAS・G2の出番すらなかった。なお、身なりの良い商人と賊の頭目は急所を外し、止血だけして拘束してある。


 捕虜じゃないから黴菌(ばいきん)とかどうでもいい。集落まで生きてれば見せしめとして事足りる。なお、シモンに槍を投げて逃走した指揮官は、ミディアが山刀で腹を裂き、額を貫いて始末しておりました。


 お、恐ろしい。

 見なきゃよかった……


「ミディア、装甲車を近くに呼ぶ。窓花に教えさせるからテントを用意してくれ。俺は攫われた子と奪われた金品を運び出す」


「天幕みたいなアレ? 分ったけど何につかうの?」


「かなり参っている子がいるから直ぐには集落にいけない。逃げた賊も窓花が全て射殺したから安全だし、一度天幕で休ませた方がいいと思う。死骸は邪魔だから後で装甲車に縄でつないで遠くにポイして来て」


 仇討ちで何か心境に変化があったらしい。ミディアはスッキリした感じに変わった。悲しみは消えないと思うが、前に進むのに役だったのならそれでいい。


 賊への落とし前はつけた。


 だけど、賊に殺された者の遺族や、攫われた子のケアはまだだ。俺のけじめとしてはまだ足りない気がする。


 しかし困った。辱めを受けた子のケアなんか俺には分りません。どんな方法でケアしたらいいのかな?


 ミディアが知ってるなら助かるんだが……


 こんなことなら、他にも何人か賊を生きたまま捕らえておけばよかった。ミディアをみて、死にかけの賊でも使い道があったのだと今は後悔している。

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[良い点] カッコつきの会話文の中にカッコ【】を重ねるの、面白いですね。斬新です。 [気になる点] 今さらと思われるかもしれませんが、このパートは描写が凄惨なものになっていますね。ちょっとびっくりした…
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