第六章 俺たちはゴゴブレンジャー
ゴゴブレンジャーの悪との戦いは、今日も続く。
コソ泥から強盗団などの悪党を叩きのめしているゴゴブレンジャー。されど、その噂が民間内では、ごく一部でしか広まっておらず。
エヴェルオベート帝国、世界に広まるにはまだまだ時間と活躍の場所が必要。
日の当たらない廃墟。毛深いマッチョの男性とずんぐりむっくりの男性が立っていた、共に親父と言っても差しさわりの無い年齢。
マッチョの男性とずんぐりむっくりの男、共通しているのはガラの悪さ、外見ではなく内側から染み出てきている。
「遅いですね、ゴブリン共。時間には正確だと聞いているのですが」
とずんぐりむっくりの男、周囲を警戒する様子は無し。
「俺は待つのも待たされるのも、嫌いなんだがな」
タバコを吸うマッチョの男。
足音と何者かの気配、待ち人きたのかとマッチョの男とずんぐりむっくりの男が顔を向けた先にいたのは、魔道士姿のディアナ、ローブで顔を隠している。
「あなたたちね、ゴブリンを悪事に利用しようとする悪党は」
いかにもかっこいい仕草で、ビシッと指先を向ける。
「何ですか、あなたは!」
ヒステリックに叫ぶずんぐりむっくりの男に対し、
「退屈していたんだ、楽しましてくれるのかよ」
タバコを吐き捨て、踏み潰し火を消す、完全に相手を舐め切った顔。
ディアナの背後から、赤青緑黄ピンク、カラフルなマスクと貫頭衣を着たゴブリン5人が現れた。
「アカゴブレンジャー」
「アオゴブレンジャー」
「ミドゴブレンジャー」
「キゴブレンジャー」
「ピンクゴブレンジャー」
「「「「「5人揃って、ゴゴブレンジャー!」」」」
5人一斉にポーズを決める。
絶句するずんぐりむっくりの男。
「おもしれえ、退屈しのぎになりそうだ」
それはそれは楽しそうに取り出した武器、鋭い金属の棒から伸びる鎖、その先っちょには錘がぶら下がる。
「喰らいやがれ」
振り回された鎖が風を切る。
遠心力で威力の付いた鎖がゴゴブレンジャーを襲う。
5人、バラバラの方向へ飛び、鎖を躱す。
鎖が雑草を切り飛ばし、小石を砕く。この威力、人間の皮膚どころかゴブリンの皮膚さえ、簡単に切り裂いてしまうだろう。
身構えるゴゴブレンジャー、距離を取るディアナ。
「ほう、やるじゃねぇか」
振り回される鎖。出鱈目に振り回しているのではない、攻撃が防御、防御が攻撃になっている。舐め切っているのは、それだけの実力があるから。
近付くだけで凶器な鎖が向かってくる、あれでは迂闊に近付くことさえ出来ない。
「どうしたどうした、かかってこないのかよ」
まるで一体の生物の様に襲い掛かってくる鎖。何とか躱しているものの、これではジリ貧。
その事はゴゴブレンジャーも解っていても、攻撃のタイミングが見いだない。
「ウノ・タウカン・ゾロカ・キゼ・コタ《ルーンヒュル》」
ディアナが呪文を唱えると冷気を含んだ風が起き起り、触れた雑草がカチンコチンに凍り付く。
「テ、テメー魔道士かっ」
コスプレではなく、ディアナは本物の魔道士であった。
魔法ならば距離に関係なく、攻撃が出来る。
「行くわよ、それっ!」
冷たい風をマッチョ男に放つ。
「うおっ」
慌てて身を反らせる、掠っただけで鼻の頭に軽い凍傷。
「もう一発、行くわよ、ウノ・タウカン・ゾロカ・キゼ・コタ《ルーンヒュル》」
マッチョ男に向かって放たれた二発目の冷たい風が突然現れた壁、鉄の壁に弾かれてしまう。
「えっ?」
何が起こったのかディアナが確認して見た。
そこに立っていたのはゴレーム、それも黒光りする鉄で作られた巨大なアイアンゴーレム。
「ホッホッホッ、魔道士はあなただけではないでしょ」
笑うずんぐりむっくりの男。こいつが魔法でアイアンゴーレムを精製したのだ、いつの間にかに。
アイアンゴーレムの、文字通りの鉄の拳が振り下ろされる。
飛びのくディアナ、鉄の拳に殴られた地面が陥没。
こんなもの、真面に喰らったら、その瞬間にお陀仏。
何度も何度も振り下ろされる、直撃致死率100%のアイアンゴーレムの鉄の拳。
動きは鈍いので攻撃を躱すのは容易いが、あんな鉄の塊、倒す術は無い、魔法攻撃の効果も期待できず、使っても魔力の無駄遣いにしかならない。
「ディアナ姐さん」
アカゴブレンジャーが助けに行こうと動く度、マッチョの男の鎖攻撃が飛んできて行動を封じられる。
いくら体力に優れているゴブリンでも、この状況下、先に体力が尽きるのはゴブリンたち。
さらにディアナは女の子、一番早く体力が限界を迎えるのは彼女。おまけに戦っている相手は体力切れの心配のないアイアンゴーレム。
じわりじわりディアナとゴゴブレンジャーが追い詰められていく。
勝ったとマッチョの男とずんぐりむっくりの男が確信した時、
「我が身既に鉄なり、我が心既に空なり、天魔覆滅」
この世界の住人の誰が聞いても、元ネタの解らない決め台詞を言いながらスカルマスクが現れた。我が身既に青年バージョンの幻惑の魔法を掛けてなり。
ゴゴブレンジャー以上の異様な姿をしたスカルマスクの登場、マッチョの男とずんぐりむっくりの男が一番厄介な相手と思うのも当然。
「潰しておしまいなさい」
ずんぐりむっくりの男の命令を受け、アイアンゴーレムが殴りかかる。
スカルマスクは避けようともせず、なんと指先1つで鉄の拳を受け止めてしまったではないか。
それだけでもマッチョの男とずんぐりむっくりの男を驚愕させたのに、
「スッカルゥゥゥゥゥゥゥゥゥパンチ!」
掛け声共にジャンプ、アイアンゴーレムを殴りつけた。
たった一発殴っただけで、アイアンゴーレムはペチャンコにへしゃげ、遠方へ飛んでいく。
驚愕に驚愕を重ね、金縛り状態のずんぐりむっくりの男に当身で気絶させる。
「コ、コノヤロー」
我に返ったマッチョの男は鎖を振る、完全にやけくそ。
向ってきた鎖を籠手で絡めとり、引き寄せてビンタ、もちろん手加減して。
登場してから10分もたっていないのに、スカルマスクはマッチョの男とずんぐりむっくりの男をノックアウトして見せた。
ミドゴブレンジャーは、頑丈な縄でマッチョの男とずんぐりむっくりの男を縛り上げる。
「流石はスカルマスクの旦那、強い、関心致しやした」
アカゴブレンジャーが感謝の意を示す。
「でもッス、こんなに強いならサッ、最初からレオ――」
キゴブレンジャーがレオンハルトと言いかけたところ、アオゴブレンジャーが肩を叩き、気づかせる。
「あっ――最初から、スカルマスクが出てくれた方が良かったんじゃないッスか」
慌てて言い直す。
「私たちの目的はゴゴブレンジャーをヒーローとして広め、ゴブリンの悪いイメージを消し去ることなのよ。スカルマスクは最後の切り札」
余程の強敵でもない限り、ゴゴブレンジャーで戦わなくてはならなくては意味がない。ディアナの言う通りだけど、あれだけの力を見せ付けられると、いろいろ思うところもある。
「最強ヒーローは遅れてやってくるものなのさ」
と言うスカルマスク、年齢詐称の幻惑魔法は解いておらず、まだやるべことが残っている。
意識を取り戻したマッチョの男とずんぐりむっくりの男、縄で縛られ逃げ出すどころか動くことさえ不可能。
2人をスカルマスク、魔道士姿のディアナ、ゴゴブレンジャーが取り囲む。
ゴゴブレンジャーを代表してアカコブレンジャーが前に出る、赤はリーダーの色なのは常識。
「お前ら、ゴブリンをどんな悪事に利用しようしたんだ?」
問いただす。
「……」
「……」
マッチョの男とずんぐりむっくりの男は何もしゃべらない、黙秘。
「ゴブリンをどんな悪事に使うつもりだったんだ!」
今度はきつめに聞いて見ても、黙秘したまま。
この様子ならどんな聞き方をしても話すことは無いだろう。
どうしょう赤いマスクの下で困り顔、ゴゴブレンジャー全員、同じ顔。
拷問なんて方法もあることはあるが、そんなことしてはゴブリンの悪いイメージを増大させる結果となりかねない。
ディアナも口を割らせる方法は解らず、スカルマスクは前世の頃、刑事ドラマで見たぐらいで、あんな尋問が通じるかどうか不明。
「ここは、俺に任せとけ」
おやっさん、イーヴォがやってくる。
「俺はな、どんな奴も口を割る尋問方法なら熟知しているぜ」
ニヤリと笑うイーヴォ、一見すれば好々爺と言っていい笑顔なのに、マッチョの男とずんぐりむっくりの男は背筋が凍り付く思いがした。
☆
ラフトデシャインの裏通りの奥の奥にある、倉庫。立地条件から、滅多に人の目に着くことは無い。
ここを秘密の会議場所としてイーヴォが購入、偽名を使って。
「奴らの目的が解ったぞ」
イーヴォが、どうやってマッチョの男とずんぐりむっくりの男に自白させたのかは秘密。
倉庫に集まるゴゴブレンジャー、ディアナ、レオンハルト、スカルマスクではなく、すっぴん。
「奴らはゴブリンを使って誘拐をつもりだった」
“誘拐”なにやらぶっそうな言葉が出て来た。
「幾つかの有益な情報は手には入ったが、誘拐の目的や黒幕まで解らなかった。奴らも金が目当てで引き受けた下っ端だからな」
よくある手口、例え捕まっても露見するのは末端までで、大本までたどり着かせない。
それでも幾つかの有益な情報が手に入ったのは良かったこと。
「問題なのは、雇われたのは他にもいるってことだ」
この言葉の意味はレオンハルトにもディアナにも解った。既に誘拐された者たちがいるということ、それもゴブリンを使って。
誘拐と言い犯罪にゴブリンが利用されていることにゴゴブレンジャーはご立腹、これではますますゴブリンのイメージが悪くなる。
「黙っているわけにはいかない」
もう動く気満々のレオンハルト、誘拐なんて見過ごせること出来ないし、誘拐された者たちがどうなるのか悪い予感しかしない。
ディアナもゴゴブレンジャーも、選択肢は行動する一つだけ。
悪い奴らは、やっつける、これあるのみ。
「きな臭くなってきやがったな」
元傭兵の勘が、そう囁いていた。
仮面のヒーローのパンチやキックは1tの鉄球を吹っ飛ばしたり、コンクリートの煙突をへし折ったり、厚さ42cmの鉄板を貫いたり、戦車を潰すそうです。