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第四章 ネィツロートの森にて

 スカルマスクの次なる任務。

 ネィツロートの森でゴブリンを引き連れた魔道士は何をやろうとしているのか!


「ゴブリンを連れた黒いローブ姿の、いかにも魔道士って風体の奴が、ネィツロートの森の奥に入って行ったそうだ」

 閉店後の喫茶店『フロイント』、レオンハルトにイーヴォは情報屋から仕入れてきたネタを話す。

「なんか、露骨に怪しいね」

 魔道士がゴブリンを引き連れ、森の奥で何をするつもりなのか? 禄でもないことしか思いつかない。

「以前、オークを唆して村を襲撃させた魔道士もいたしな」

 オークに村を襲わせ、そのオークを自分で退治して名声と金を得る。結果的には自作自演がバレて罰せられたけれど。

「悪いことをするのなら、止めさせないと」

 立ち上がるレオンハルト。今度こそ、誰かの命が失われる前にやらなくては……。


「サイクロン、もうすぐ出発するから、沢山食べて力を付けておくんだよ」

 愛馬を優しく撫ぜ、餌と水を与えた。

 嬉しそうにサイクロンが餌を食べてる合間、レオンハルトは準備を整えて置く。

 荷物の中にあるコスプレ衣装。

 初めて羊皮紙にスカルマスクのデザインを描いた時、イーヴォには微妙に引かれてしまったが、本人は大のお気に入り。


「行くよ、サイクロン」

 荷物を積み終えたサイクロンに跨る。

 “解った、出発”と言ったような鳴き声一つ上げ、走り出す。

 ネィツロートの森で魔道士がゴブリンを使って何を行おうとしているのか?

 何が待ち構えていても、自分が信じる正義を貫くことは変わらない。

 そうやって仮面のヒーローたちも、悪の秘密結社と戦い抜いたのだ。

「先輩方、見ていてください」

 意図せず、そう呟いていた。



 日暮れ前、ネィツロートの森に一番近い町に到着。

 夜が更ければ森の危険度は跳ね上がる、今日はここで宿を取ることにした。

 華やかではないが寂れてもいない、典型的な宿場町。

 手ごろな料金の宿屋にチェックイン、部屋に荷物を置く。

 取り合えず魔道士ついて情報を集めるため、酒場へ。


 見るからに荒れくれ者、旅商人、学者風の青年、腕っぷしの強そうな女性、色っぽい女性、酒場には様々なタイプの人が集まってきていた。だからこそ、情報が集まりやすい。

 カウンターへ行き、まずは飲み物をと飲むことに。お約束のミルクと注文すると笑われると思ったので、

「ビール」

 を注文、

「オイ、未成年はアルコールを飲んじゃいけないぞ」

 非常に体格のいいマスターに注意されてしまう。

「僕は21歳なんです」

 と言った途端、ドッと酒場に笑いが巻き起こる。

 いくら実年齢が21歳でも、パッと見は子供、さらに小柄な体なので、なおさら若く見られるレオンハルト。

 バツが悪くて黙っていたら、

「子供は無理せず、これでも飲んどきな」

 とミルクを出してくれた。

「ありがとう」

 折角出してくれたので飲んでみたら、よく冷えてて美味しかった。

 喉が潤うと急にお腹が減ってくる。

 メニューを見て美味しそうだったワインビネガーに漬けた子牛肉を香辛料で味付けした料理と、黒パンを注文。


 注文してなかったのにベーコンの入ったジャガイモのスープ、デザートの玉子のケーキをおまけしてくれた。

 マスターの顔は怖いけど、気さくでいい人。


 食後、さり気なく魔道士のことを聞いて回ったところ、何人かの目撃者の話が聞けた。

 誰もがゴブリンを連れた魔道士はあまりにも怪しすぎると証言。宿場町の住人も襲撃でもしてく来るのかと警戒していたものの、今日まで何も起こってはおらず、一体森の中で何をやっているのかも不明。

 新たに解ったことは魔道士が目撃されるのは早朝か夕暮れ、比較的、人気のない時間帯。

 こうなればネィツロートの森を張り込むべき、早速明日から、レオンハルトは始めることにした。



 翌朝、早々ネィツロートの森へ行き、手ごろな木に登って身を隠し、魔導改造手術で身に着けた超感覚を使い、森を伺う。

 相手が現れるまで何日も張り込むつもりでいたら、あっさりと現れた。

 情報通りの黒いローブを着た、いかにも魔道士と言った人物がゴブリンを引き連れ、森の中に入ってきた。

 小柄なれど逞しい体つきに緑色の肌。ファンタジー作品に出てくる姿と同じ外見なのに何故か凶暴性は感じられなかった。

 着ている服は革では無く、布製の貫頭衣、遠目で見ても清潔なのが解る。

 注意深く観察を続けるレオンハルト。

 キョロキョロ周囲の様子を気にしながら、こそこそ魔道士はゴブリンと一緒に森の奥へ進んでいく。

「怪しいな……」

 一体、何をやろうとしているのだろう。レオンハルトは木から飛び降り、持ってきていた木箱の中に入れて置いたスカルマスクのスーツを取り出す。

「ラ――、スカッルーマスク・変・身!」

 両手を交差させるポーズを取り、スーツを着込む。掛け声をかける必要は無いのだけど、これは気持ちの入れようであり、オールブラックスのハカみたいなもの。



 森の奥まった場所。ここだけ木々が無く、ちょつとした広場になっている。

 ここで魔道士は歩みを止めた。それを合図にしたようにゴブリンたちも歩みを止めた。

 くるり魔道士は振り返り、ゴブリンたちの方向に向く、フードで顔はよく見えない。

 物陰でスカルマスクに“変身”したレオンハルト、これから何を始めようとするのか息を殺して観察。もし悪いことを行うなら、飛び出して止めるつもりで身構える。

「全員、整列」

 と言うなり、ゴブリンたちは一斉に姿勢を正す。

「へっ?」

 これは拍子抜けと言うのだろうか、魔道士の声は女性、それも若い少女のもの。

 コホン、可愛い咳ばらいを一つして、歌い始める。

 結構うまい、日本でもプロデビュー可能性のある歌声。

 するとゴブリンたちが歌に合わせ、何と踊り出す。ちゃんと曲に合わせての振り付け。

 歌う魔道士に、ダンスを披露するゴブリンたち。一体、何なのだろう、このシチュエーションは……。

「何をしている」

 思わず物陰から出てきてしまったレオンハルト。

「何だお前は!」

「怪し奴め!」

「ディアナさんには、手を出させない!」

 襲い掛かってくるゴブリンたち。

 一般人には厄介な相手のゴブリンでも、スカルマスク(レオンハルト)の敵にはなりえないレベル。

 なのだけどゴブリンたちからは、殺気も危険性も感じ取れなかった、微塵たりとも。

 だから出来るだけ傷つないよう、力を制限してゴブリンを投げ飛ばしす、こんな戦い方もゲオルグは教えてくれた。

 次々と仲間が投げ飛ばされても、恐れることなく、襲い掛かってくる。

「喰らえ!」

 飛び掛かってきたゴブリン、十分に力を込められ、振り下ろされた棍棒の一撃。

 水に沈む程、重く硬い棍棒を、易々と受け止めた上、握り潰す。

 これにはゴブリンたちも、一瞬の怯みを見せたが、大切な人を守りたいという意思が勝り、1人たりとも引き下がろうとはせず。

 このまま傷つけないように戦っても埒が明かない、と言っても殺気も危険性も無い相手を傷つけるのは、ヒーローのやるべきことにあらず。

「止めなさいぃぃぃぃぃぃ!」

 突然の魔道士の一喝。ゴブリンどころかスカルマスクも動きを止めてしまう。

「いくら怪しいからって、いきなり襲い掛かるなんて、だからゴブリンに悪いイメージが着くんですよ」

 叱られ、しゅんとなるゴブリンたち。

 お前も十分、怪しいよと、スカルマスクは内心、突っ込む、自身の怪しさは棚上げで。

「怪我はないでしょうか」

 スカルマスク(レオンハルト)の前にやってくる。

「僕は大丈夫です、むしろ、そちらの方がケガしませんでしたか」

「ああ見えて、ゴブリンは丈夫なんで平気です」

 髑髏のマスクのコスプレ衣装のヒーローと、魔道士のローブ姿の少女。傍から見れば、どれほどシュールな光景に見えることだろうか。

 あっとここで顔を隠したままなのに気が付いて、

「申し遅れました、私、ディアナ・クッシュと言います」

 フードを下ろし、魔道士姿の少女、ディアナが名乗る。赤毛のどっからどう見ても元気溌剌な女の子。

「僕はレオンハルト」

 相手が名乗ったので髑髏のマスクを取り、こちらも名乗る。思わず飛び立したため、体形を大きく見せる幻覚の魔法を掛け忘れていた。

 じーっとレオンハルトを観察するディアナ。

「あなた、男の子?」

「うん、そうだよ」

 正真正銘、レオンハルトは男の子。

「かっ」

「か?」

「可愛いぃぃぃぃぃ!」

「わっ」

 いきなりディアナはレオンハルトに抱き着く。体格は、ほんの少しだけどディアナの方が身長が高い。

 振り払おうと思えば振り払えるのだけれど、そんなことをしたらディアナを傷付けてしまう。

 どうしようと困っていたら、ゴブリンの1人がディアナの肩を突いて、

「ディアナさん、このお兄さんが困っておられるようで」

 レオンハルトの現状を説明してくれた。

「ご、ごめんなさい」

 慌てて離れ、顔を真っ赤にする。

 ディアナもゴブリンも傷つけないで済んだ。ホッと一息つてから本題に入る。

「ところでディアナさんは、ここで何をしていたのでしょう」

 ゴブリンたちの方に視線を向ける。

 一体、ゴブリンを引き連れ、何をやっていたのだろう? 悪事じゃないのは解るが……。

「それは……」

 レオンハルトの顔と目を見つめる。この人は信頼できるかどうか。

 ゴブリンたちも黙ってディアナに見極めを任せていた。それだけ信じているということ。

「解った、あなたなら、話しても平気ね」

 ディアナの判断は合格。一呼吸の間を置き、話始める。

「ゴブリンたちと大道芸をやるため、練習していたの」

 しばしレオンハルトは沈黙。

「あの、ゴブリンたちと大道芸をやろうと聞こえたんだけど」

 聞き間違えかなと思い、聞き返してみる。

「ええそうよ、私はゴブリンたちと大道芸をやるつもりなのよ」

 どうやら聞き間違えではないようだ。

「何で、そんなことを?」

 浮き上がってくる、次なる疑問。

「そりゃ、オラたちのためでスッ」

 ゴブリンも会話に参加。

「俺らゴブリンは頼まれたらどんな仕事もする、いわゆる何でも屋を主な生業にしてまして」

「ちゃんした仕事を頼みに来る人もいるんだけどぉ、アタシたちを悪事に利用する人が多くて多くて」

「あっしら、こんな外見してるでしょう、それで何かと悪いイメージを持たれましてね」

 確かに人は外見で相手を判断してしまうことが、多々ある。

 実際、レオンハルトも魔道士がゴブリンを引き連れていると聞いて、禄でもないことをするんじゃないかと思い込んていた。

「だからね、私が歌、ゴブリンたちはダンスを覚え、これを大道芸として披露しながら世界を回り、ゴブリンのイメージを良くしようと思ったの」

 真剣そのもの、ディアナとゴブリンを見れば本気も本気、冗談は言っていないのは確実。

「ところで、そんな恰好でレオンハルトくんはネィツロートの森に何をしに来たの?」

 今度はレオンハルトが質問される。

「それは……」

 この場では非常に言いにくいことだけど、黙っているわけにはいかない。相手が誠意をもって話してくれたからには、こちらも誠意をもって答えるのが筋。


 ネィツロートの森へ、魔道士がゴブリンを引き連れて入って行ったとの情報を聞き、禄でもないことをやっているのではないか疑ってしまったこと、本当に悪事を行っていたのなら、叩きのめすつもりだったこと、隠すことなく話す。

 また自分が正義の味方として、悪をやっつけ仕事をしていることも話しておいた。正し改造人間であることは伏せておく。

「ごめん」

 素直に謝り、頭を下げる。レオンハルトもゴブリン=悪だと思い込んでいた。

「気にしないでいいでスッ」

「なんせ、俺たちゴブリンですから」

「頭を上げてね」

 笑ってゴブリンたちは許してくれた、外見と違い気さくな連中。

 こうして、お互いのことを打ち明け合った。


 最初、レオンハルトは話そうかどうか迷ったが、

「あの大道芸だけじゃ、多分、ゴブリンの悪いイメージは払拭できないと思うんだ」

 話すことにした。こんなことは下手に隠すより、話した方がいい。

 ショックは受けるだろうが、後から受けるよりかは軽くて済む。

「やっぱり……」

 薄々ディアナも、そのことは感じていた様子。

 がっくりゴブリンたちも肩を落とす。

 そんなゴブリンたちを見ていると、何とかしてやりたい、そうレオンハルトは思えてくる。

「一番の問題はゴブリンたちが悪事に加担させられていることなんだ。いくら当人たちに意図はなくとも利用しようとする奴がいる限り、ゴブリンたちの悪いイメージが付いて回る」

 ここまで話を聞いたディアナの頭の中で、ピンと閃きが生まれた。

「私、面白いこと思いついちゃった」

 それは彼女にしてみれば、天啓と言ってもいいかもしれないアイデア。




 ファンタジー作品ではやられ役のゴブリン。

 最近、味わいのあるゴブリンの出てくる作品を面白いと思いましたので、ゴブリンのを気のいい奴らにしました。

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