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第二章 魔導改造手術

 初代から巨大化する仮面のヒーローまでは行われていました。

 平成の仮面のヒーローになってからは、行わなくなってしまいましたね。

 轢いてしまったのが公爵の長男と解るなり、こいつが勝手に飛び出してきたと、必死に責任逃れをする悪趣味な意の馬車の貴族を、一瞬、切り殺しそうになったゲオルグ。

 だが殺意は抑え込む、今、やるべきなのはレオンハルトを助けること、それが一番大事。

 走る馬車との直撃、帝国兵として幾度も戦場を経験した身だから解る、レオンハルトの状態は最悪、瀕死の重体と言って差しさわりが無い。今は魔法による応急処置で生きてはいるが、それにも限界がある。

 大通りで営業していた医者を呼びだしてみても、あまりにも状態が酷すぎるのと、公爵のご子息を死なせたとなれば医者として一巻の終わり、匙を投げ逃げ出してしまう。

「――レオン様」

 最初こそ、上官であるペーターの命令で武術指導をしていたのに、何時の頃からか息子や弟の様に思えるようになっていた。

 死なせたくない。そのためなら、悪魔に魂を売ってもいいとさえ思う。

「!」

 “悪魔に魂を売ってもいい”この思いに至った時、ある人物の顔が浮かび上がった。

 “あの方”ならばレオンハルトを助けてくれる、どんな手段を使っても確実に。

「ト・ノイタイ・ノイタイ・デイケン《ルニザコン》」

 応急処置魔法をさらに掛け、慎重にレオンハルトをお姫様抱っこ。



 ゲオルグが駆けつけた先はテオの元。

 当初、ゲオルグにお姫様抱っこされた瀕死状態のレオンハルトを見て、目を大きく見開いたテオではあったが、すぐ事態を悟り、

「着いてこい」

 それだけ言って歩き出す、何も質問することなく、後を追うゲオルグ。

 もうテオの顔は孫を溺愛する、お爺ちゃんのものとは違っていた。


 ヴァルトシュタイン家の大豪邸の庭の片隅にある離れ。レオンハルトに危険だから近付いてはいけないといった、あの離れ。

 離れの周辺の木は何本も折れ、地面は焼け焦げていた。一目で魔法が使われた跡だと解る。

 周囲は、そんな状態なのに離れ自体には傷一つ無し。

「ペーターの奴が幾度となく、結界を破ろうとしてな。そう簡単に破られるような結界など、張ったりせんわい」

 そう言いつつ、壁を杖で叩く。

 ゲオルグは解った、結界が消えたと。目で見えずとも、肌で感じ取ることが出来た。

「急がねばならん、時間がない」

 ドアを開け、テオは離れの中に入って行く。

 そう時間が無い、レオンハルトは応急処置の魔法で辛うじて命を繋いでいるに過ぎないのだから。


 離れに入るなり、建物全域の明かりが灯る。何かしらの魔法が発動した模様。

 廊下を進んでいくテオとゲオルグ、離れと言っても公爵家の離れ、かなりの大きさ。

「エヴェルオベート帝国は大陸どころか、全世界の制覇を目指しておる。この事はお主にも解るな」

「ハイ」

 身に染みてゲオルグには解っている、帝国軍人なのだ、実戦は一度や二度なんてものではない。

 一つのドアの前に来ると、テオは杖で叩いて結界を解く。外にも結界が張ってあり、ここにも張ってある。二重の結界、それだけ、この部屋は重要な場所という証。

 その部屋に踏み込んだ途端、どうゆうわけか背筋が凍り付く様な悪寒がゲオルグの中に走り抜けて行った。

 部屋の中は漆黒、中央に白い寝台が一つ、材質が金属なのか石なのかは不明。

「儂は国のためと信じ、否、称し、ここで非道な実験。改造人間の研究を行っておった。お主も噂ぐらいは聞いておるじゃろ」

 ゲオルグは頷く。確かにペーターの部下になった時、噂は聞いていた。テオは人間を強化するため、改造手術の実験を行っていると。

 同期の兵士たちは、只の噂だと笑っていた。孫を溺愛するテオのどこにも、そんな恐ろしいところは見えなかったので。

 ただゲオルグは何か引っかかるものがあった、勘と言ってもいいのかもしれない。

「その噂は真実だよ、儂はここで数えきれない命を犠牲にした、正に悪魔の所業。その事に気が付かせてくれたのはレオンじゃった」

 あの日、産婆に抱かれた生まれたてのレオンハルト、新しい命を見せ付けられた時、心中を熱い物で貫かれ熱い物で一杯に満たされ、涙が止まらなくなった。そして思い知らされた、自分がそんな掛け替えのない命を幾つも踏み躙ってきたことを。

「儂はここに結界を張り、封印した。破壊すればペーターの奴に余計な野望を抱かせずに済んだのかもしれんが、それは出来んかった、これはエゴじゃな」

 改造人間の研究に、テオは人生の大半を費やした。その成果というべき、離れを破壊することが出来なかった、どうしても。

「そのエゴが希望になるとは、皮肉なもんじゃて」

 テオのエゴが、レオンハルトを救う最後の希望となった。

「始めるぞ、これがこの離れを使う最後じゃ」

 そろそろ、応急処置の魔法の限界が来る。

「私も手伝えることがあれば、手伝います」


 服を脱がせたレオンハルトを中央の白い寝台へ寝かせる。

 全身、至るとこに傷や痣があり、肌色も悪くなる一方、呼吸も心音も弱くなって行き、応急処置の魔法は消える寸前。

 懐からテオは布を取り出して包を解く、中にあったのは虹色に輝く何十本の鍼。

「儂はレオンのおかげで、人間になることがて来た。今、儂はレオンを助けるため、再び悪魔となろう」

 虹色の鍼を額に一本、左右の目の下に一本づつ、首の真ん中と左右の端一本づつ、胸とお腹に何本も鍼を刺していく。

 出鱈目に刺しているのてへはない、レオンハルトの経絡経穴に沿って虹色の鍼を刺して行っているのだ。

 全ての鍼を刺し終え、杖の頭を捻れば鍼が金色に輝きだす。

 杖で床を叩く。すると漆黒の部屋全体に、真っ赤に輝く文様が浮かび上がり、中央の白い寝台へ向かう。

 レオンハルトの上へ杖を横殴りに振るえば、虹色の鍼の輝きが一斉に強くなる。

 テオの握る杖の金色の輝き、部屋全体を走る真っ赤な文様の輝き、虹色の鍼の輝き、全ての輝きがレオンハルトを包み込む。

 実際には耳に聞こえていないのにも関わらず、頭を砕く様な騒音に、思わずゲオルグは両手で耳を塞ぐ。

「この先は人間が見ていいものではないい、出て行くとよい」

 その言葉が正しいことは、誰にだって解るる。部屋全体がそのことを教えてくれた。

 一礼し、ゲオルグは部屋の外へ。

 そろそろ限界が来そうだった、ふーっと一息吐く。


 ゲオルグが出て行くのを確認したテオは、杖を手放す。

 コロコロ床の上を転がっていく杖。テオの前の床がせり上がり、その中に入っている様々な“手術道具”は、どれもこれも禍々しい。

「魔導改造手術を開始する」


 魔導改造手術。魔法と医術を合体させた改造手術。

 この技術に関して、世界のどこにもテオの右に出る者はいない。



 三日後。


「レオン様はあの人に預けてきました。事情を話すと快く引き受けてくれましたよ」

 離れの居間に、戻ってきたゲオルグはテオに報告。

「あの人とは?」

「私の恩師でテオ様の親友であられる、あの人です」

 それで誰のことかテオにも解った。

「そうか、あいつか。確かにあいつなら、安心してレオンを任せられるわい」

 よっこいしょと立ち上がり、ワインをグラスに注ぎ、

「お主にも苦労を掛けたのう、まぁ、一杯やるとよい」

 ゲオルグに渡す。

「ありがとうございます」

 グラスを受け取り、早速飲む。

 それを見ているテオの表情は辛そう。

「すまんな」

 一言、謝る。

「そうですね、ペーター殿は何としてもどんな手を使っても、この離れのことを吐かせようとするでしょうから」

 尋問、拷問、薬物、魔法、家族を人質に取る。どんな手段を講じても離れのことを聞き出そうとするだろう。それは聞き出すまで止めない、相手がどうなろうともかまわず、それこそ死んだ方がましというぐらいの手段を平気でやる。

 それがペーターのやり方。

 離れの秘密は決して外へ漏らしてはならない、目撃者がいてもいけない、たった1人でも。

 グラスが床に落ち割れ、中身をぶちまける。ゲオルグは血を吐き、倒れた。

「お主、解っておったのか、解ってて飲んだのか!」

 床の上のゲオルグは微かに笑って頷き、事切れる。

「すまん、本当にすまん、じきに儂も行くからな」

 杖を手に取り、

「ジンマ・ヨウカ・ト・ヒッチ・ノモ・ノイン・ジッポ《ルトス》!」

 呪文を唱えれば、すさまじい業火が噴き出し、一瞬で辺りを頬いつくす。

 業火は居間だけに収まることなく部屋の外に飛び出し、離れの全てを蹂躙した。

 地獄の業火の中、テオは毒の入ったワインのボトルを手に取りラッパ飲み。


 ヴァルトシュタイン家の離れが全焼したことは、ペーターによって伏せられ、闇に葬られた。

 公式にはテオ・ヴァルトシュタインは病死と発表され、またゲオルグ・バイスは極秘任務中の事故死とされた。




 無理やり改造されたのは5人、瀕死の重傷を負って改造されたのが4人、志願したのが2人、硫酸に右腕を溶かされて義手を付けたのが1人、顔が十個ある怪人に襲われた際、長老から改造されたのが1人。

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