エピローグ
エピローグ、締めくくりになります。
ヴァルトシュタイン邸の自身の部屋で、ペーター・ヴァルトシュタインは窓から庭を見つめる。視線の先には果ってテオの離れが張った場所。
コンコンとノックの音。
「入れ」
の一言で入ってくるヨアヒム。成長し、すっかり大人の風格と貴族の傲慢さが身についている。
「ヨナス・ティッセンの別荘の施設が潰され、エッボの死体も確認されました」
つい今しがた入ってきた情報を報告。
「改造人間のデータは?」
窓から視線を外し、ヨアヒムの方を向く、エッボの死を悼む気持ちは全くなし。
「ちゃんと複製を取ってあります」
「そうか、それは良かった」
微かに微笑むのを、ヨアヒムはしっかりと見た。
「しかし父上、エッボを失ったことは改造人間製作に大きな支障をきたします」
エッボがいたからこそ、ここまで改造人間製作を軌道に乗せることか出来た。
「態々誘い込んでやったというのに、何のために目をかけてやったと思っているのだ」
代わりがいくらでもいる人物ではない、改造人間製作にはそれほどの才能が必要。この先、改造人間製作が滞るのは間違いなし。
これは、とても痛いこと、何とか対策を練らなくてはならなくなった
。
「ヨナス・ティッセンのことといい、我々の邪魔をしているのは一体誰でしようか?」
解っているのは相当強く、抜け目がない相手。
「邪魔者は排除する、それだけだ」
ヨアヒムも父に同意見、邪魔者は排除する、それが誰であっても。
☆
喫茶店『フロイント』に帰ってきたレオンハルトたち。
店を再会するなり、待ってましたとばかりに客がやってきた。それだけ『フロイント』の評判はいい。
店は大忙し。
接客しているレオンハルトを見ているディアナ、彼目当ての客も少なくない、男の子と解っていても可愛いからね。
ゾルタンを倒した時のレオンハルトの姿にディアナは魔法と似た力を感じた。
テオがレオンハルトと合成したもの、おそらく、それは魔法そのもの。魔法を使っていたエッボもその事に気が付いたのだろう。
改造人間のことがよく解らなくとも、あの時のエッボの様子を見れば生物と生物を合成するより、生物と魔法を合成する方が困難なのだろう。
全く性質の異なるものの合成、いわば火と水を合成するようなものではないのか。
それをやってのけたテオと言う人物の恐ろしさと、改めて自覚。
休憩中、イーヴォの淹れてくれたコーヒーでレオンハルトは一息。
ディアナの推理通り、テオはレオンハルトと魔法を合成した。
魔法体に変身すれば殆どの攻撃が通じなくなり、こちらの攻撃力はとんでもない威力になってしまう。
つまりチート。卑怯な気がして、今まで使わなかったが、ゾルタンは魔法体にならなければ勝てない相手であった。
正直な気持ち、変身しなければ勝てない相手には二度と会いたくない。
ゴゴブレンジャーは、今日も平和のために戦っている。
改造人間の犯罪は減っても、普通の人間の悪党は相も変わら存在している。
まぁ普通の悪党レベルなら、ゴゴブレンジャーだけでも十分に対応できる。
こうしてゴゴブレンジャーのヒーローとしての知名度は上がり、ゴブリンへの偏見は減って行く。
ゆるやかに、戻りつつある以前の日常。あれから改造人間の事件も起こらず、良いことばかりに見える……。
前半と後半を逆にしようとも思いましたが、こちらの方がいいと思い、このような形になりました。
 




