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プロローグ

 昭和、平成、令和を駆け巡る、あの仮面のヒーローが大好きなのです。


「悪と戦うのに必要なのは力じゃない、悪に負けない心の強さだ!」

 モニターに映るのは悪の秘密結社と戦う、仮面のヒーロー、彼は改造人間である。

 真っ昼間、カーテンで窓を覆った薄暗い部屋の中、PCの明かりが上村士郎(かみむら しろう)の顔を照らし出す。

 就職に失敗してから、もう十年以上の時が過ぎ去った。掃除の行き届いていない部屋は物が散乱し、就寝スペースは万年床。

 そんな士郎の何よりの楽しみは子供の頃から大好きで憧れている改造人間のヒーローシリーズのBD鑑賞、初代はバッタの改造人間。

 憧れていたではなく、憧れている。中年男性となった今でも、仮面の変身ヒーローに対する気持ちは変わってはいない、これぽっちも。

 実はコスプレ衣装なんかも自作していたりする。始めた頃は拙いものだったが、今はかなりの腕前と自負できるレベル。



 士郎自身、引き籠ってばかりはいけないとは思いつつ、昼間は他人の目が気になって外へ出て行けない。

 そこで未明が迫り来る時間、トレーナースーツを着込みランニングに出るのが日課。

 この時間なら、知り合いに出会う確率は少ない。

 無理せず自分のペースを守り、アスファルトで舗装された道路を走る。

「キャァァァァ、止めて」

 近くで女性の悲鳴が聞こえてきた。

「!」

 直ぐに、士郎は声の聞こえてきた場所へ向かい、そこで見たものは……。


「あれ程君のことを見ていたのに、こんなにも君のことを思っているのに、他の男とイチャイチャするなんて」

 顔色の良くない男性、その目付きは正気の人とは違う、おまけに手にはサバイバルナイフ。

「誰なのよ、あんた。全然知らないよ」

 震えているどちらかと言えば美人の女性、彼女の顔色が悪いのは怯えているせい。

 彼女が凶器を持つ男のこと知らないのも当たり前、毎日、駅ですれ違う男のことなんて気にはしないのが普通。


 手に凶器を持っている男と、襲われている女性。

 男女の関係なく、簡単に把握できる状況であり、とても危険な状況。このまま回れ右して逃げるという選択肢を取れば巻き込まれることなく、安全に帰宅できるであろう。

「止めろ!」

 それが出来ないのが士郎。勇気を奮い立たせ、凶器を持つ男に向かって行く。

 正義のヒーローを愛するだけあり、士郎の正義感も強い。就職活動に失敗したのも、それが原因。

 力も無ければ技もない、あるのは正義の心のみ。

 正義の思いを込めた体当たりを凶器を持つ男にぶちかます。

 不意を突いたことが功を成し、クリーンヒット。凶器を持つ男は簡単に吹っ飛ぶ。

「お嬢さん、今のうちに警察へ」

 士郎の登場に勇気を貰った女性は、言われた通りに警察へ急ぐ。


「……守れた」

 見ず知らずとの女性を守れた。これで一歩、正義のヒーローに近づけたのかもしれない、そう思った矢先。

 背中に衝撃が走り、激痛とまるで焼けるような感覚が染み込んできた。

 振り向いてみれば、さっきの凶器を持つ男が士郎の背中にサバイバルナイフを突き立てているではないか、深々と。

「あれ」

 全身の力が抜け落ち倒れる士郎、道路を血が染めて行く。

 体の感覚が消えて行き、意識が薄れてゆく。人は死ぬ前に走馬燈を見るというが、士郎が見たものは大好きな歴代の仮面ヒーローたちであった。

『ヒーローになりたかったな……』




 次回から、本編に入ります。

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