兄は城に潜入する。
王子が本格的に喋ります。
「まさか城の下にこんな空間があるとはな」
「王族しか知らない地下道なんだ。万が一命が狙われてもここから逃げられるようにね」
……すげぇ。
さすが王族、というべきか。
話のスケールが大きい。
「それはすごいな」
「こっ、こらヴォルク!相手は王子だぞ!言葉遣いを正せ!」
「あっ……も、申し訳ありませんっ!」
やっちゃったなぁ……。
めちゃめちゃタメ口で話してた……。
言葉遣いだけでも不敬になるのかな……!
そんな俺を見てクリス王子は笑う。
「構わないよ。むしろそっちで話してくれた方が僕は嬉しいな」
「だってさ」
「僕のことは王子じゃなくめクリスと呼んでくれ。僕も2人のことを呼び捨てで呼ぶから」
「道案内、よろしくなクリス」
「こちらこそよろしく頼むよヴォルク」
「ほ、本当に大丈夫なのか……?」
はらはらした様子のフール。
心配性の彼女の頭の中は王子に無礼を働いたギルドへの処罰を考えているのかもしれない。
大丈夫だと思うけどなぁ。
……まぁ、俺のせいだからどの口が言うかって感じだけど。
「さてもうすぐ城の中だけど、もう一度確認していいかい?」
クリスが口を開く。
それにしてもよく走りながら話せるな。
見た目に反して体力おばけでなのかもしれない。
「あぁ……本当にクリスは大臣に殺されそうになったのか?」
「……間違いない。奴は僕と父上を亡き者にして、この国を乗っ取るつもだ」
「クーデターということか!?」
「騎士団や主要なギルドがオーク討伐に出ている中、城内の守りは手薄。確かにクーデターにうってつけの状況だね」
クリスは目線を落とす。
「正直に言うと今でも信じられない。父上の代わりに国を運営してくれてたからね」
「王子……」
「信じて、いたんだけどな」
クリスは力なく笑う。
大臣がどういう人間かは知らない。
たが裏切られたことにクリスが傷ついていることには間違いなかった。
「国王は大丈夫なのか?」
「なんとかね。父上は最近体調を崩されていたから城に隣接した離宮で休まれてる。でも、大臣の手に落ちるのは時間の問題だろうね」
国王の救出。
そしてソラ。
必ず助けだす。
なにもしてないだろうな。
「ソラ……絶対に助けてやるからな……!」
地下道の終わりはもうすぐだ。
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