兄妹は男性を発見する。
ここからストーリーは大きく進んでいきます。
「久々に感じる重みだ……」
「猫を探すだけでこんなにもらえるなんて。今日はごちそうだね!」
今日の依頼は猫探し。
猫探しぃ?魔物討伐じゃないんかい!
……と思う人もいるだろう。
だが、侮ることなかれ。
この仕事は猫が集まるスポットさえ押さえれば一瞬で報酬を手にできる。
そのため普段ははした金にしかならないが。
だがしかし。
「猫は見つかったし、早く見つけたから追加報酬も貰えたな」
革袋から伝わる重み。
長年忘れかけていた感覚だ。
いや別に前に味わったことあるわけではないが。
思わぬ大金に自然と頬が緩んでしまう。
「これなら飯以外にも何か買えそうだな。ソラ、何か欲しいものあるか?」
「欲しいもの?うーん……」
ソラは考え込む。
……そういえばソラに何か買ってあげることはなかったな。
ソラも17才。
女の子らしいものが欲しい年頃だろう。
カバン?それともアクセサリー?
年頃の女の子におしゃれを我慢させてきたのだ。
多少値がはるものでも買わなければ!
さあ我が妹は何が欲しいのかな?
「……媚薬、ほれ薬?……それとも」
なんて物騒!
間違っても17のうら若き娘が発してはいけない言葉。
脳内でけたたましい警笛が鳴り響く。
話を。
話を変えなければ!
「そ、そういえば!よくフールはこんな依頼を見つけてきたな!」
「……ん?あ、そうだね。なんでかな?」
「あれが原因だ」
目線の先の掲示板。
一枚のポスターが貼ってあった。
「『参加ギルド募集』……?」
「国の郊外でオークの群れが現れたから、国の騎士団と志願したギルドが討伐しに行ったんだ」
「そうなんだ!でもうちのギルドには何もなかったね」
「3人しかいないからな。声すらかからなかったんだろうな」
「だから今日は王都の人が少ないんだね」
ソラの言うとおり、今日の王都はどこか閑散としている。
普段は傭兵から主婦にごった返すこの道も、俺達以外に数人しか歩いていない。
「でも、ちょっと残念」
ぽつりとソラが呟く。
「お兄ちゃんの強さがみんなに知られないなんて」
「……ソラ」
「分かってる。あんまり目立っちゃダメだもんね、お兄ちゃんは」
沈黙が流れる。
靴が砂利を蹴りあげる音だけが聞こえる。
そんな時であった。
「……うぅ」
うめき声……?
「裏道の方から聞こえたね」
ソラにも聞こえたようだ。
薄暗い裏道は夕方という時間も相まって、非常に暗い。
「……」
自然と右手が剣の柄に伸びる。
仮に魔物であれば、今の手薄な王都は混乱に陥る。
ここで仕留めなくてはならない。
そう決心すると、裏道に足を踏み入れる。
「うぅ……」
声はこの角から聞こえてくる。
ソラに目配せする。
彼女の手にも杖が握られており、臨戦態勢は整っていた。
万が一戦闘にはっても大丈夫だろう。
そして。
「誰だっ!」
声の主がいる道に踏み込んだ。
「……!」
1人の男が、倒れていた。
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