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僕の知らないところで話が進んでいる件

昨日は本当にすみませんでした。

言い訳は活動報告でします。

「父さんっ!」


 激動の一日が終わって。


 僕は家に帰ってすぐ、父さんの書斎に飛び込んだ。


「おお、お帰り。今日は早かったんだな」


 くるりとこちらへ振り返る。


 手には金属でできた食器。


 どうやらコレクションを磨いていたようだ。


 ⋯⋯僕がこんなに慌ててるのに。


 なんでこんなに優雅にしているんだ。


 理不尽だと分かってはいるが⋯⋯怒りが湧いてくる。


「父さんっ!どういうことですか!?」


「んー?何が?」


「僕に!許嫁が!突然!できた件!」


「あーそれか」


 ようやく僕の方に目線を上げる。


 普段はばりばり仕事をこなしている人ではある。


 しかし今はオフと決めているのであろう。


 自分のコレクションを磨く手は止まらない。


「お前、女の子と付き合ったことないだろ?良い話だと思ってな」


「でもこんな!好きじゃない同士で!」


「政略結婚って言いたいのか?王国とかはやってるだろ。それに付き合ってから好きになる愛の形もあるだろ」


「でもここは共和国で」


「まあまあ落ち着けよ。これはお前のためもあるんだぞ」


 ⋯⋯僕のため?


 話が見えない。


 どういうことだ?


「お前、仕事できないよな」


「う⋯⋯そんなはっきり言わなくても」


「前提としてだ。そんな落ち込むなよ」


「だって」


「俺だって不思議なんだぞ?お前は俺から見ても能力はそこそこある。普通ならもうそろそろ一人前になってもおかしくない時期だ」


「⋯⋯」


 なんか褒められた。


 ちょっと嬉しいな。


「にやつくな」


「に、にやついてなんかないし!」


「⋯⋯まぁ話を戻すと、お前が成長できない理由。それは『自信』だ」


「自信⋯⋯」


「より詳しく言えばお前は自分に自信がない。だから何かする時もメリットより失敗してしまった時のことを考えてしまうだろ」


 ⋯⋯否定できない。


「だからこそだ。俺はお前に自信を付けさせたい。男なら女で自信を付けるもんだ。俺も若い頃は母さんと⋯⋯」


「あ、その話はいいです。長くなる」


「⋯⋯ひどい」


「でも相手の子はどうなんだろ。嫌じゃないのかな」


 だってこんな冴えない男と急に結婚だなんて。


 僕であればあんまり嬉しくないと思う。


「ああ。その辺は大丈夫だ」


「⋯⋯どういうこと?」


「お前も聞いたことあるだろ?大統領の娘さんが何やっているか?」


「⋯⋯ああ」


 大統領の娘。


 確か名前はレンだったっけ?


 彼女は『アイドル』をやっている。


 アイドル。


 最初は聞きなれない言葉であったが、女の子が衣装を着て歌うことらしい。


「それは知ってるけど、なんの関係が?」


「それがな、最近彼女との距離感を勘違いしている輩がいるらしくてな。大統領も困っているらしい」


 あの大統領が。


 確かに自分の娘に何かあったら困るはずだ。


「アイドルはみんなの憧れじゃないといけない。だから愛想を振りまく必要はあるけどな⋯⋯」


「それを自分への好意と受け取る人もいる⋯⋯」


「お、わかってるじゃないか」


 ⋯⋯だからこそ。


 自分は選ばれたのか。


 アイドルの彼女の肉壁として。


 ⋯⋯サンドバックとして。


「⋯⋯どうした?」


「なんでもない」


 そうだ。


 父さんは言わないがこれは政略結婚。


 2つの家の関係を取り持つために必要なこと。


 仕事と割り切らねば。


「⋯⋯そうか。とにかく1回顔を合わせてみればいい。明日は休みだよな」


「うん」


「じゃあ行ってこい。会ってみるとその気持ちも変わるだろう」


 この気持ち。


 果たして変わるのだろうか。


 その答えは明日分かる。

ご覧いただきありがとうございました。

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