僕に許嫁が!?
最新話です。
胃が痛い。
まるで悪いことをしてしまったかのようだ。
勿論悪いことはしていない。
断じて。
……仕事のミスは結構あるが。
でも仕方がないんですよ!
大統領が目の前にいるのですから。
これぞ蛇に睨まれた蛙。
誰か助けて下さい。
「シュウ君、よく来てくれたね」
モズロー大統領が白い歯を見せて笑っている。
住む世界が違う。
直感的にそう理解してしまう。
「⋯⋯シュウ君?」
「はっ、はい!」
気がつくと。
握手を求めるように岩石のような手が差し出されています。
大丈夫かな。
僕の細い手、粉砕骨折しないかな。
「あ、ありがとうございます……」
……よかった。
折れてない。
本当に良かった。
「じゃあ私、お茶持ってきますね~」
「ああルチア君、よろしく頼むよ」
ゆっくりと頭を下げた後、姉さんは部屋から出ていきました。
「とりあえず座りたまえ」
大統領は執務机の前の椅子を指差す。。
黒革で作られた革椅子。
さぞかし高級なものなのでしょう。
……座るの?
これに?
大丈夫?
したっぱなんかがこれに座って。
不敬罪とかで首にならない?
「どうした?座らないのかね?」
「い、いえ!し、失礼しますっ!」
ええい!
もう自棄だぁ!
「……」
「どうだい座り心地は?」
「……なんか、これまで感じたことないです。すごく、柔らかいです」
不敬にならないよう。
慎重に言葉を選ぶ。
こんなところでクビになったりしたら洒落にならない。
……よかった。
大統領笑ってる。
満足してもらえたようだ。
「そうかね。では私も失礼しようかな」
そう言うと、大統領は僕の目の前に腰を下ろす。
流石。
なんか座り方も僕と差がある気がする⋯⋯。
これが大統領か。
いや、椅子の座り方だけで論じるのは自分でもどうかと思うが。
「は~い。お茶入れてきました~」
姉さんが手にお茶を持って戻ってきた。
「どぞ~」
「うむ。ルチア君のお茶は美味しいな~」
「もう~。真似しちゃダメですよ~」
……僕は一体何を見せられているんだろう。
「……美味しい」
うん。
こんな時でもお茶は美味しい。
落ち着く。
「……さて、本題に入ろう」
気がつくとこちらをじっと見つめる大統領。
慌てて背筋を伸ばす。
大統領直々の仕事とはなんだろう。
秘密の工作?
それとも出世?
……もしくはクビ?
お願い。
良いことであってください。
「……君に、私の娘と婚約してほしい」
「……は?」
ご覧いただきありがとうございました。