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兄は言葉を失う

おはようございます。


……目の前で何が起こっているのか。


瞬時には理解できなかった。


妹の腹部から、紅い液体が滴り落ちる。


「ちぃっ……!邪魔、しやがって!」


蜘蛛は腹立たしげに前足を振り回す。


投げ出されたソラの体は空中に投げ出され。


城壁へと打ち付けられた。


「ソラっ!!」


ぴくりとも動かない妹。


脳から血が引いていく。


頭が回らない。


俺の体は、彼女に駆け寄るしかできなかった。


「しっかりしろ!おい!」


「う……あ……」


虚ろな目。


途切れ途切れの声。


白い体が浮かぶ紅い池は大きくなっていく。


死ぬ。


死ぬ。


妹が、死ぬ。


呼吸が荒くなる。


なんとかしなければならないのに。


頭には、暗い考えばかりが浮かぶ。


「お、にい、ちゃん」


「ソラっ!頑張れ!すぐに治してやるからな!」


心臓付近に空いた穴。


血を、止めなければ。


どうすればいい?


フールに回復魔法をかけてもらう?


「死ねぇ!死ねぇ!」


「ぐっ!こいつ!」


ダメだ、とてもじゃないがこっちに来る余裕がない。


血が止まらない。


「お、にい、ちゃん、もう、いい、よ」


「何言ってるんだ!大丈夫!なんとかする!」


「私の、ことは、私が、いちばんわか、るから……」


「……っ!」


……俺だって分かっている。


これだけの出血だ。


もう助けられないことぐらい。


でも。


「諦めるな!くそっ!止まれよ!止まれよっ!」


大切な人が死のうとしている運命を受け入れられるほど、俺は強くない。


傷口に右手を押し付ける。


「止まって、くれよ……!」


「お兄、ちゃん……私、お願いが、あるの」


弱々しい声でソラが言う。


「最後に……、好き、って言ってほしいな……」


「……ソラ!」


「家族、としてじゃなくて……、1人の、女の子と、して好きって、言って……」


……妹の最後の願い。


か細い声で繋いだ思い。


そうか。


俺は怖かったのか。


周りの目を恐れて。


常識に縛られて。


この子の思いに向き合うことから、逃げていたんだ。


俺は。


俺は……!


「ソラ……」


「うん……」


「好きだ」


「1人の、女の子と、して?」


「好きだ」


「妹だったとしても?」


「好きだ」


「恋人、にしたいほど?」


「……好きだっ!好きだ!好きだ!好きだ!俺は、お前のことが好きだっ!」


涙が溢れだす。


やっと気持ちを伝えられたのに。


俺は。


俺は!






「……ふふっ」


……ふふっ?


「やった……!遂にやった!お兄ちゃんと恋仲だ!」


……笑顔が可愛い妹がそこにはいた。


手足をばたつかせる姿。


俺は、幻想を見ているのか?


「お兄ちゃんどうしたの?えっ!泣いてる!……そっか。私が死んじゃうかもと思ったんだね。お兄ちゃんってほんとシスコンだね」


よしよしと頭を撫でるな。


にしても何でこいつはこんなに元気になんだ?


「訳が分からないって顔だね、お兄ちゃん。忘れちゃったの?私の体の中には『あれ』があるんだよ?」


ご覧いただきありがとうございました。

近日中に2章のあらすじを活動報告に流したいと思います。

よろしくお願いいたします。

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