妹は悟る。
最新話です。
あと3話でこの章は終わる予定です。
……決まりました。
『お兄ちゃんのピンチに颯爽と駆けつけて、好感度上げちゃおう』大作戦!
普段は甘えてばっかりですがら、この辺りでギャップ萌えを狙わなくては!
ふふっ、お兄ちゃんびっくりしてる。
これは終わった後のご褒美が期待できますね!
「ソラ!大丈夫なのか!」
呆然タイムが終わったお兄ちゃんが声をかけてくれます。
こんな状況でも真っ先に私の心配なんて……!
本当にお兄ちゃんはシスコンですねっ!
「うん大丈夫だよ!お兄ちゃんこそ大丈夫?」
「ああ。……話は改めてあいつを倒してからにしよう!」
「あの……私のことを忘れてないか?」
「虫けらどもがぁ!何匹増えたところで変わらんわぁ!」
「ヴォルク!これ使ってくれ!」
お兄ちゃんのもとに何かが投げられます。
剣です。
「頼む……それでギベルを倒してくれ!」
王様を抱き抱えながらクリス王子が叫びます。
国を守るため。
そしてお兄ちゃんと少しの間だけとしても引き離された恨み。
それを全てぶつけてやらなければなりません。
「みんな……行くぞっ!」
「ああっ!」
お兄ちゃんとフールさんが蜘蛛に飛び掛かります。
「馬鹿めぇ!剣は効かんぞぉ!」
「それはどうかな?ソラ!」
おっしゃ来ました出番!
「フルパワー……ライトニングっ!」
「ぬっ!?……ぐおおおおお!!」
雷の中から聞こえるヘルスパイダーの叫び声。
効果があるみたいです!
今ある魔力のほとんどを使ったとっておき。
それを頭部に一点集中させた一撃。
これなら……!
「ヴォルクっ!奴の外殻がっ!」
フールさんが指差す先。
そこには剥き出しとなったヘルスパイダーの頭!
「今なら……通るっ!」
蜘蛛も痺れて動けていません。
お兄ちゃんは剣を振りかぶります。
「これで、どうだ!」
「やめろぉぉぉ!!」
蜘蛛の断末魔とともに。
お兄ちゃんの剣は、魔物の脳天を捉えました。
「があああああっ!!」
鈍い音とともに、紫色の液体が周囲に飛び散ります。
滝のように噴き出す血液。
これは致命傷でしょう。
「はぁ……はぁ……」
お兄ちゃんは剣を抜き、蜘蛛の頭から飛び降ります。
指令を送る箇所を破壊された体は小さく痙攣。
その後、ゆっくりと倒れこみました。
「やり遂げたな……!ヴォルク」
フールさんはその場に座り込みます。
私も魔力を使いすぎました……。
少しでも体を休めないといけません。
でも。
お兄ちゃんに触れたい。
頭を撫でてもらいたい。
そんな気持ちが溢れてきます。
そんな欲求を見たそうと、お兄ちゃんのもとに駆け寄ろうとした時でした。
「……グ、ガ」
蜘蛛が……動いたのです。
「こいつ……!まだ……!」
再び剣を構えるお兄ちゃん。
早く。
早くしてお兄ちゃん。
そいつ……何かする!
「このままではぁ、あの方にぃ、申し訳がぁ、たたぬぅ」
「させるかっ!」
だめっ!
間に合わない!
「せめてぇ、王族だけはぁっ!」
王子様に向けて突きだされた前足。
道連れを狙ったのでしょう。
……良かった。
間に合った。
前足は王子に届いてない。
……お兄ちゃん、ひどい顔してるよ?
それはそうか。
私に、前足が刺さってるんだから。
ご覧いただきありがとうございました。
ソラはどうなったのか。
これが馴れ初め話だと思い出していただければ安心してもらえるかと笑