兄は大臣と対面する。
いよいよ1章最終決戦です。
「……来ましたねぇ」
玉座の間。
俺達は醜い笑みを浮かべ、玉座に座るギベルと対面した。
「父上を、そして国を返してもらうぞ!ギベル!」
「王子ぃ、穏やかにありませんねぇ……ねぇ陛下ぁ?」
ギベルが退屈そうに指を鳴らす。
すると。
空中で力なく浮遊する男が、ゆっくりとその姿を露にした。
その回りには透明な膜。
牢獄で俺の手を阻んだ壁と同様のものに見える。
「ち、父上っ!」
「国王陛下は良質な魔力をお持ちの方ぁ。お陰さまでこのようにぃ」
「ヴォルクっ!後ろに魔物が!」
「……奪った魔力で呼び寄せていたということか」
四方八方魔物だらけ。
逃げ場のない密室。
こちらは王子を害されてはならないという条件も加わる。
結論。
圧倒的に不利な状況。
本当に嫌になる。
「そしてこちらのお嬢さんもぉ……」
「ソラっ!」
球体がもう1つ現れた。
その中に浮かぶは、大事な妹。
ソラを助けるためにも、目の前の敵を必ず倒さなければならない。
「ソラ……今助けてやるからな」
「威勢がよろしいことでぇ……状況分かってますぅ?」
ギベルが声をあげて笑いだした。
無性に腹立つなあいつの笑い方。
「貴方方はぁ、魔物に包囲されてぇ、殺されるのを待つばかりなんですよぉ?」
「それも人質もいますしぃ、本来は私に懇願すべきところですよねぇ?なんでぇ、この娘と取り戻すつもりで話しているんですかぁ?命乞いをしてくださいよぉ」
「……まぁ、許しを請われてもぉ、殺すんですけどぉ」
……我慢の限界だ。
要領を得ない話。
加えて終始上から目線の話し方。
何より。
あんな奴の近くにソラがいることが我慢ならない!
剣を引き抜き、ギベルを睨み付ける。
「おやぁ?やるんですかぁ?」
勿論やる。
だがその前に。
「……?剣の素振りですかぁ?馬鹿ですかぁ?死にますよぉ?」
……近距離戦闘が多いイメージを持たれる剣士だが、例外的に遠距離の敵に対する技も存在する。
その1つが、『かまいたち』
魔力を帯びた剣を振り、衝撃波を作ることで遠くの対象を斬る技。
つまり。
「何ぃっ!?」
「球体が割れたぞっ!?」
「父上っ!」
周りには突然ものが壊れたように見えるのだ。
「う、動くなぁ!魔物共ぉ、皆殺し……」
当然、『かまいたち』は振る回数だけ衝撃波を産み出せる。
つまり。
「ガアアアアア……」
「ま、魔物達がぁ!」
次々と倒れる魔物。
ギベルに操られていて良かった。
野生の魔物だとこう上手くはいかない。
遠目に国王とソラが救出されているのを確認し、俺はギベルへ視線を戻す。
「残るはお前だけだ。形勢逆転だな。」
「き、貴様ぁ……」
「なぜこのようなことをした?それを教え」
「……黙れぇっ!!人間風情が邪魔しよってぇ!!」
……やはりか。
こいつの正体は。
「こうなればこのギベルが貴様らを地獄へと葬ってくれるわぁ!!」
ギベルの体が震え始める。
肉が裂け、肌色が変化し、大きくなっていく。
2本の黒く、鋭い顎牙。
6本の細い足。
鋭く尖った尾。
無数の目が、こちらを見つめていた。
「死ねよぉ!人間っ!」
ヘルスパイダー。
巨大な蜘蛛の魔物は、そんな台詞と共に前足を振り下ろした。
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次回は明日投稿します。