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王子は緊張感が高まる。

すみません。

すこし更新が遅れました。

地下の牢獄から抜け出して。


僕達は父上のいる離宮の近くへと来ていた。


幸いにもこの辺りで魔物には遭遇していない。


これなら離宮も無事かもしれない。


「ヴォルク。この後なんだけど……」


「……」


反応がないな……。


ヴォルクは自分の剣を見つめ、考え込んでいるようであった。


声を掛けられたことに気づいていない。


「……ヴォルク?」


今度は彼の顔を覗き込みながら声をかけてみる。


すると彼は少し驚いたように顔を上げた。


「ク、クリスか。どうかしたのか?」


「今後の確認をしようと思ってたんだけど……どうしたんだい?」


「ああ……実は刃こぼれしてしまってな」


残念そうに視線を落とすヴォルクの手には、刃のところが数ヶ所欠けた剣が握られていた。


「これは……」


「親父の形見だったんだ。いつかは来ると思ってたんだけど」


「研げば良いのではないか?」


フールさんの言葉にヴォルクは首を振る。


「この剣はミレニアム鉱石で作られているんだ」


「!!」


ミレニアム鉱石か……。


とても希少な鉱石でメンテナンスには専用の道具と技術が必要になる。


加えて鉱石はかなり昔に供給されなくなった。


直せる人間が生きているか。


それすら疑わしい。


たとえ生きていたとしても、直すには莫大な費用がかかるだろう。


「すまない、こんなことに巻き込まなければ……この戦いが終わった後、直せる人間を探そう」


「いいって。王子を守るために折れたならこの剣も本望だろうし。……ちょっと思うところはあるけどな」


ヴォルクは剣を鞘にしまう。


ここまで僕のために戦ってくれる人がいる。


必ず。


必ずこの国を取り戻さなくては。


「とりあえず代わりの剣を貸してもらうためにも離宮へと急がないと」


「その後は……いよいよだな」


フールさんもゆっくり息を吐く。


そう。


父上と合流した後、残るはただ1つ。


「ああ……逆臣ギベルを捕らえる!」


そして聞かなければならない。


なぜ、クーデターを起こしたのか。


……魔物をどうやって城内に招き入れたのか。


「それとクリス、これは俺の勘なんだけど……大臣、人間じゃないかもしれない」


「なっ……どうしてだい?」


「勘だからな。理由はないよ……ただ」


「ただ?」


「俺達を襲ってきた魔物達、大臣の手下の人間には目もくれなかっただろう?」


「……確かに」


「野生の魔物だと見境ないからな。妙に統制が取れていたと思ったんだ」


ヴォルクは自らの考えを勘と言った。


だけど僕は思った。


彼は確信を持ってこの発言をしていると。


……彼は、何者なのだろうか。


先ほどの戦闘は激しいものであった。


それこそ、フールさんが重傷を負う可能性があったほど。


僕だっていくつかかすり傷をおっている。


だけど彼はあの激しい戦闘を無傷で潜り抜けた上、冷静に敵を分析していたのだ。


只者じゃない。


「ヴォルク。私は少し先まで行って魔物がいないか見てくるぞ」


「フール。気を付けてな」


フールさんもヴォルクには多少劣るかもしれないが、優秀な剣士であることは間違いない。


……僕は彼らのことをなにも知らないな。


こんなに助けてもらっているのに。


大臣のことが終わったら聞かなくてはな。


そして、できることなら……。


「ヴォルクっ!」


「どうしたフール。そんなに息を切らせて」


「人が倒れている!」


「なにっ!?」


急ぎ立ち上がり、フールさんのもとまで走る。


「……!?」


「王国騎士達が……!」


廊下に数人の兵士が倒れている。


周辺には細い穴。


なんだろうか……あれは。


そんな疑問はすぐに消え去ることになる。


「ううっ……クリス様」


「……!大丈夫か!」


1人の騎士の元に慌てて駆け寄り、だき抱える。


青白い顔。


腹部からの出血が激しい。


危険な状態なのははっきりしていた。


「申し訳ありません……陛下を、大臣に……」


「話すな……!」


「王子、代わっていただけますか?」


フールさんが隣に座る。


そして傷口に手を当てた。


「ヒール」


「……!」


回復魔法!?


僕が驚いている間に、騎士の体が青白い光に包まれる。


「……」


みるみる傷口が塞がっていく。


回復魔法は他の魔法より習得が難しい。


魔法を専門とする魔術師でもヒールだけは習得できなかったというのもよく聞く話だ。


フールさんもすごい人だ……。


「これで多少は楽になっただろう。他の者も気を失っているだけで命に別状はない」


「おお……ありがとうございます……女神様」


「めっ、女神っ!?そんな……当然のことをしたまでだ……!」


いつもは凛としている顔が林檎のように赤くなる。


……こんな状況で思ってはいけないことは分かっている。


でも言わせてほしい。


フールさんが、可愛い。


「と、ともかく!残すは大臣だ!王子、行きましょうっ!」


「可愛かったぞフール」


「うるさいっ!」


なんと緊張感のない感じ。


でも、この2人と一緒なら。


大臣にも……!


決戦の時はすぐそこまで迫っている。


ご覧いただきありがとうございました。

明日は朝が忙しいため、17時頃に更新します。


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