表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
盤上の兵たちは最強を誇るドラゴン種…なんだけどさ  作者: ひるま
[9] 地獄の棋譜編
84/351

-82-:彼にはもう少し人生を楽しんで欲しかったな

 [第11手]


 白Bf1:h3ビショップを元のf1へと戻した。


 黒h6:g5ナイトを捉えた。




 [第12手]


 白Nh7:g5ナイトをh7へ。

 避難させたつもりのようだが敵の真っただ中だ。


 黒R×h7:そのナイトをキングス・ルークでテイクス。


「この時は単なるココミのミスだろうと思っていましたが、今思えばマスター契約を果たしていない駒が多数存在していたのなら、僕の注意を引き付ける手段としては悪くは無かったと思います」




 [第13手]


 白a3:クィーンズ・ルーク前のポーンを1マス前進。


 黒b6:クィーンズ・ナイト前のポーンを1マス前進。

 面倒な事に、動きづらい“ダブル・ポーンとなってしまった。




 [第14手]


 白Bf4:クィーンズ・ビショップをf4へと移動。


 黒Bb7:クィーンズ・ビショップをb7へと移動。

 f3ナイトが射線に入ったが周囲に駒が多すぎる。




 [第15手]


 白Nh4:ナイトは逃げた。h4へと移動。

 しかし、射線は後ろのキングス・ルークへと延びた。


 黒B×h1:では、遠慮無くb7ビショップでルークを頂いた。


 それだけじゃ終わらせない!

 h2ポーンもついでに始末した。


 思った通り、両駒共、揃ってマスター契約を果たしていなかった。



 *棋譜表記が黒B×h1(&h2)へと変化した!


 *注意!!

 カッコ内には“&”記号の後に同時に倒された駒が表記される、本来のチェスでは有り得ない棋譜表記がされている。




 [第16手]


 白Bh3:キングの通り道を作ったのか?f1ビショップをh3へと上げた。


 黒b4:b5ポーンを1マス前進。

 a3ポーンを捉えた。




 [第17手]


 白a4:a3ポーンを1マス進めてb4ポーンからの攻撃をしのいだ。


 黒R×a4:どちらにしても逃がしはしない。2対1のアンデスィデに突入。


「敵の盤上戦騎の名前は“エ・クレア”と言って、体のほとんどを覆ってしまう“シールド・ハンドガン”を持った頑丈そうな騎体でした。そうしたら、ルークのマスターのベンケイが張り切って力任せに殴ったら、あっけなく壊れまして。後でデータを調べたら、本体は非常に貧弱な騎体なのですが、宇宙空間に“衛星軌道兵器”を隠し持っている“超遠距離戦特化仕様騎”だったのです」


 盤上戦騎が常軌を逸脱したロボット兵器だと聞いてはいたが、まさかのSF作品もビックリなトンデモ兵器に霜月神父は呆気に取られた。


 しばし間を置いて、霜月神父は気を取り直すと、「続けて」チェスに話を戻させた。




 [第18手]


 白Bf5:h3ビショップをf5へと移動。

 ダブル・ポーンならぬ“ダブル・ビショップ”の陣形を築いた。


 黒R×a1:続けてa4でポーンを粉砕したルークでa1ルークを粉砕。

 豪快な笑い声を飛ばすベンケイを見るのはこれが最後となった。




 [第19手]

 

 悲劇は起こった―。


 白Q×a1:白のクィーンがa1ルークをテイクス。


「ココミの方からテイクスを仕掛けてくるなんて初めてでした。彼女がどんなマスターを得たのか?とても興味がありました。だけどそれは僕の思い違いで、僕たちはゲームでは無くて戦争をしているのだという事をすっかりと忘れて、「戦いぶりを楽しみにしている」と無邪気にベンケイを戦地へと送り出してしまったんです」


 ライクが両手で頭を抱えた。


「坊ちゃま」

 ウォーフィールドが居間へと入ってきた。就寝を促しにきたのだ。

「どうされました!!」

 ライクの異変に気づくなり、彼の元へと駆け寄る。


「神父様、一体、坊ちゃまに何をなさったのですか!?お答え次第では―」

 狂気に走ろうとするウォーフィールドの肩をライクが掴んだ。


「神父様に無礼を働くな。僕はもう少しここにいるから、お前は下がっていろ!」

 ライクの言葉を聞き、ウォーフィールドは霜月神父へと顔を向けるも、神父は頭を振って何も言わずに大人しくライクの言う通りにするよう無言で伝えた。


 ウォーフィールドが一礼をして居間から立ち去った。


「ベンケイか…。彼にはもう少し人生を楽しんで欲しかったな」

 グラスに注がれたワインを手向けの杯とばかりに飲みほした。


「恐るべき盤上戦騎でした。九頭竜(ナインヘッド)のオロチ・・。攻撃そのものを食らい、一つ目巨人(サイクロプス)の騎体までもそれぞれの頭で五肢と胴体を同時に食らうなんて。今でもベンケイの悲痛な叫び声が耳の奥で木霊しているのですよ。だから、僕は夜が嫌いなんです」

 子供にはまだお酒は無理だなと思いつつも手にしたワインボトルを見つめてしまう。

 彼は王族ではあるが、やはり人間。目の前で起きた“兵”の死を“一人の人間”の死と割り切れずにショックを受けているのだろう。


 黒b3:b4ポーンをb3へ移動。

 c2ポーン(ベルタ)を捉えた。




 そして運命の第20手―。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ