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盤上の兵たちは最強を誇るドラゴン種…なんだけどさ  作者: ひるま
[8] 学園に潜む“魔”
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-76-:私が魔者だとバレたら、ベルタを呼ばれるじゃない

「どうして私なの?」

 ツウラの問いに少女は自らの胸元を指差して「同じ2年生のよしみで」


 言われてみれば、胸元のリボンは少女と同じエンジ色。周りを見やると他の生徒たちのリボンはブルーだった。学年でリボンの色は異なっている。ちなみに3年生はグリーン色。


 『勝手に帰れば』と突き放そうとするも、少女のすがる様な眼差し、それ以前に少女の人形のような可憐な容姿がツウラのファンシー好きにどストライクにハマった。


「しょうがないわね。い、いいわよ。私と一緒に戻りましょう」

 照れ隠しに顔を背けたまま、そっと手を差し伸べる。すると、少女の小さな手がツウラの手を優しく握った。


(くぅーッ)

 まるで懐いてくるような少女の仕種に、いっその事抱きしめたい衝動に駆られるも、ここは冷静を保って二人でこの棟から出ることにした。


「と、ところで、貴女(アナタ)の名前は?」

 興奮冷めぬまま鼻息を荒げてツウラが再度訊ねた。


「この国では“相手の名を訊ねる前にまず自分の名を名乗るのが礼儀”だそうですヨ」


「面倒くさいコト知っているのね?私の名前はツウラ。で貴女は?」


「フラウ・ベルゲンと申します。“津浦(つうら)”サン、これからもヨロシクお願いします」

 この場限りなのだから“これから”も何もあったものではないと思いつつも、素っ気無く「ええ、よろしく」フラウの手を引いて階段を下りた。

 後は鈴木くれはの、無駄に強力な霊力を辿れば2年生たちのいる校舎へと向かえるだろう。

 雨が降り始めている。急ぐ事にした。




 昼休み終了間際―。

 フラウ・ベルゲンが教室へと戻ってきた。


「あら、フラウ。遅かったじゃない。やっぱり道に迷った?」

 キョウコの問いに「エヘヘヘ」フラウは照れ臭そうに笑いながら。


「お恥ずかしながら、迷っちゃいました。ですが、おかげで新しいお友達にここまで送ってもらいマシタ」

 発表にクレハとトラミが思わず「おぉー」続いて「で、誰なの?」


「津浦サンという、とてもお優しい方なのデス」

 振り返ると、外にはもうツウラの姿は見当たらなかった。

「アレ?」フラウが首を傾げる傍ら、キョウコも首を傾げていた。

「津浦?聞かない名前ね…」



 またもやツウラは全力で離脱するハメになっていた。

 角を曲がったところでオロオロと顔を覗かせて、その場にしゃがみ込んだ。

「何で何で何なのよォォー。あの()、高砂・飛遊午に猪苗代・恐子それに鈴木くれはと同じクラスだったの!?私が魔者だとバレたら、ベルタを呼ばれるじゃない。危なかったぁー」


 うろたえるツウラの前に人影が映った。ツウラがハッと顔を上げた。


「アイツらにバレる訳無いじゃん。甲冑姿じゃないんだし。ああ、驚かせてゴメンね。それよりも、その挙動不審さで逆に怪しまれるわよ」

 ボブカットの少女が腰に手を当てた姿勢でツウラに告げた。


「ト、トモエ!貴女(アナタ)、ここの生徒だったの!?いつもジャージ姿だったから気付かなかったわ」


 名前を口にした途端、トモエはムッとして。

「考えてもみなさいよ。あのジェットの馬鹿どもの前にお嬢様学校の制服姿で出られる?アイツら、ゼッタイに勘違いして言い寄って来るに決まってるじゃん」

 腰部の後ろ側に付いている、モフモフの灰色尻尾状のスマホストラップが、まるで本物の尻尾のように揺れている。


「それもそうね・・」

 トモエの自己防衛策に妙に納得した。それよりも。


「この学園内で“ロボ”を召喚してはダメ。さっき1年生の棟にオロチのマスターの霊力を感じたわ。恐ろしくて顔を確認することはできなかったけど」


「ご忠告有難う。じゃあ、私は教室へ戻るわね。アナタも目立たないようにしなさい」

 忠告のお返しに忠告をくれたトモエが入って行った先は2-Dの教室だった。


 あの()、高砂・飛遊午たちの隣のクラスじゃない!





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