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盤上の兵たちは最強を誇るドラゴン種…なんだけどさ  作者: ひるま
[7] 猪苗代・恐子の災難
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-63-:原作はエロゲでした

「少し目を離している隙に、男性の姿もジェレミーアの姿も消えていたわ」

 キョウコは二人に昨日の出来事を語り終えた。


 当然ながら、ありのままを話す事などできる訳が無く、自身やクラスメートが受けた行為など男性のヒューゴはもちろんクレハにも話せない。

 ジェレミーアの凶悪性をさらに強調して『殺す』と脅された事に置き換えて話した。・・のだが。


 話を聞いた二人の顔を見やると、明らかに様子がおかしい。

 とても気まずそうで、余所余所しい態度。たまにチラチラと視線を向けてくる。


「!!」

 よくよく考えてみれば、“自由を奪われた女の子”と“自由自在に動く触手のような長い舌”の組み合わせ。これほどまでに()からぬ妄想を掻き立てるのに恰好の材料は無い!と、今更ながら気付いた。


 こんな事なら、ジェレミーアの長い舌の事など口にしなければ良かった。それを省いた所で彼の人外性は十分に伝えられたはず。してもしょうがないと思いつつも後悔した。


 改めて二人を見やる。

 絶対に…変な方向へ想像力を働かせているわ・・この二人。

 

「な、何もされずに済んだわよ。本当よ!都合よくジェレミーアのマスターが現れたと思っているのでしょうけど、本当に現れたの。あ、危ないところだったわ」

 慌てて補足したものの・・・鵜呑みにしてくれそうにないわね・・。


 こうなれば思い切って“純潔は守られた”と告げようか?事実そうなのだが、どうも説得力に欠ける。


 何を伝えれば、二人は信じてくれるのだろうか?キョウコは焦りに焦った。


 しかし、彼女は気付いていない…。

 経緯を話している最中、ブラウスの胸元を強く握りしめたり、さらに両脚を強く閉じた上にスカートの裾を握りしめて押さえ付けている仕種そのものが誤解を招いてしまっている事を。


「証明する事はできないけれど、信じて欲しいの!」

 訴えを耳にするなり、クレハは小さく「あ、(コク)った・・」呟いた。


「な、何を言っているの?」

 クレハによる急な舵取りにキョウコは困惑した。


「キョウコちゃん・・・それ・・18禁(エロゲ)のヒロインが主人公に告白するセリフだよ・・」


「私が?誰に告白する?の?」

 クレハの言っている事が理解できない。


「同義語に『アナタに愛される資格なんて無いけれど、アナタの事をずっと愛しています』というのがあってね。心もカラダもボロボロにされたヒロインが、主人公にこう告白するの。すると主人公が『お前に何があったとしても、俺を愛してくれている限り、俺もお前を愛し続ける!』と告げてエッチして結ばれるの」


 頭がクラクラしてきた。明らかにクレハは、ジェレミーアによって乙女の純潔が破られたものと勘違いしている。


「でね、ヒロインは後で自分は純粋な主人公には相応しくないと自ら命を絶って-BAD END-」


「えぇッ!?死ぬの?そんな文学性の欠片(カケラ)も無い茶番なシナリオでゲームが売れるものなの?」


ご褒美(エッチシーン)アリのバッドエンドはエロゲの目玉です。後は(グラ)が良ければ売れるモノなのよ」

 何が商売に影響するのか、分かったものじゃない。


「ちょ、ちょっと待ってくれる?R18の話でしょう?何故、未成年のアナタがそんなに詳しいの?」


「深夜アニメの人気作品なんて、実は『原作は18禁(エロゲ)でした』ってのはザラで、どのエンディングルートが映像化されるのか?放送前に予想が飛び交うので内容は噂として耳に入って来るものなのよ」


 キョウコの新たな知識の扉が開かれた!いや、そんな悠長な状況ではない。

 まさか、ここまで発想を飛躍させてくるとは。


「全然、同義語になっていないじゃない!そもそも私は証明する事はできない・け・・ど・・」

 反論している最中に、重大なミスを犯してしまった事に気付いた。

(ああ、何てコトを・・。これじゃベッドシーンに直行と思われても仕方が無いわ・・)

 恥ずかしさのあまり、顔から火が出そうだ。思わず両手で顔を覆った。 


 否定すれば、するほど誤解されてしまう。一体、どうすれば?暴走を始めた頭を巡らせる。


 ここで誤解を解いておかないと、自身はおろか、ジェレミーアに出会ってしまったクラスメートたちの名誉も傷ついてしまう。

 ただ自身の純潔を証明したかっただけなのに、このままでは18禁(エロゲ)のヒロインにされてしまう。


 その時、閃いたかのように、先程ヒューゴが隣に座ろうとした時に、反射的に身を退いてしまった事を思い出した。


(きっと彼らは、私がジェレミーアに如何わしい事をされて“男性恐怖症”に陥っているものと思い込んでいるに違い無いわ)

 もはや歯車の外れた発想に至っている事にさえ気付けないでいた。

 

 キョウコは覚悟を決めた。


「わ、私・・」

 緊張のあまり、声が思うように出ない。

 

「ん?」

 声を掛けておきながら、首を傾げる彼と目を合わすことさえできない。


 でも。


 恐れている間など無い。ここは意を決して。


「私、怖いのッ!」

 目の前に立つヒューゴの胸に飛び込んだ。


 突然のキョウコの行動に、ヒューゴは即応できずに、ただ初めて触れる女子の感触に全神経を傾けてしまった。


「何やってんのよォッ!アンタ!」

 思いも寄らないキョウコの行動に、クレハの怒号が轟いた。




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