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盤上の兵たちは最強を誇るドラゴン種…なんだけどさ  作者: ひるま
[7] 猪苗代・恐子の災難
61/351

-59-:ちょっと気分転換にでも思ったのだけど、少し後悔しているわ

 元気を取り戻したキョウコの姿を目の当たりにして。


 まっ、いいかな。でも。


「おはよう、キョウコちゃん。…?シアータイツなの?」

 夏に差し掛かろうというこの時期に、彼女が黒のシアータイツを着用していることに疑問を抱いた。


「まっさかー。ニーソックスですヨネ?」

 この小娘は人をバカにしているのか?すかさず訂正を入れやがった。


「私、アレ苦手なの」

 キョウコは戸惑いを隠せずに否定した。

 ほら見たコトかと勝ち誇った眼差しでフラウを見下ろす。


「恐子サンの脚、スラリと細くて長いですし、とてもステキですヨ。黒の色は普段よりも細く見せる効果があるのでナイスチョイスです」


「あ、有難う・・ね」

 困惑交じりの笑顔で、褒めていないように聞こえる褒め言葉に礼を言っている。

 内心穏やかでないのは明らか。


「へぇー。委員長カッコいいじゃん。でも暑くないの?」

 朝の挨拶もせずに御手洗・虎美(みたらい・とらみ)が訊ねた。


「ちょ、ちょっと気分転換にでもと思ったのだけど、少し後悔しているわ」

 無神経な質問に答える律儀な委員長さん。でも、クレハはシアータイツそのものよりも、キョウコのしきりに脚を強く閉じようとする仕種が気になった。


 何かあったのかな?思うも、その前に確認しておきたい事が。


「ねぇ、タカサゴ。あれから3日経つけど、ココミちゃんから何か連絡あった?」

 どうせ誰も知らない名前なのでコソコソと声を抑える事もせずに高砂・飛遊午(たかさご・ひゅうご)に訊ねた。


「あぃ?い、いや、無いよ」

 突然の質問に何やら戸惑っている様子。何を驚いているのだろうか?


「ここ最近、何か妙なのよね。タカサゴからココミちゃんに連絡できないの?訊きたい事が山ほどあるんだけどなぁ」


「無理を言わないでくれ。そもそもアイツの連絡先を俺は知らない」

 目が泳いでいるなとクレハは感じた。

 本当に連絡先を知らないの?疑いの眼差しを向けるも、あえなく目を逸らされてしまった。


「あ、貴方たち。一体、何の話をしているの?」

 不意に横からキョウコが声を震わせ訊ねてきた。


「あれ?声が大きった?どうか、お気になさらずに」

 さすがに声が大きかったようで少し反省。でも。


「どうして、貴方たちがココミ・コロネ・ドラコットの名前を知っているの?!」

 二人は、はたとキョウコへと向いた。

 それは、こっちが訊きたいわ。「どうして、キョウコちゃんが・・?」訊ねようと口を開いたら。


「貴方たち二人に話があります。今日の昼休みに屋上へ来てちょうだい」

 いきなりの命令口調に戸惑うも、二人して了承した。こちらとしても、どうして彼女がココミを知っているのか?ぜひとも訊きたい。



 昼休み。



 クレハはいつも疑問に思っていた。


 この教室に設置されている“自動箸洗浄器”なるものは、果たして必要なモノなのか?


 壁に埋設されたそれは、二つの穴にそれぞれ箸を差し込んで下へと伸びたスリットをなぞって下へと下して洗浄する機器である。

 中で洗剤洗浄→水洗浄→風乾燥→紫外線殺菌を行うのだが、電力は足元にあるペダルを一回踏むだけで発電、供給されるので、とてもエコ。

 そもそもエコに感心のあるセレブが寄贈した物らしいが、他に目を向けるトコロは無かったのか?この洗浄器の発電機に使われている“水電子発電機”を開発したのが現役高校生だから採用されたのか?いずれにしても、これを目にする度に、何やらと天才は紙一重という言葉が浮かんで仕方が無い。

『お箸以外は差し込まないで下さい』なるメッセージは要らないだろう。そう思った矢先、フラウがフォークスプーンを差し込もうとしていた。


「ダメだよぉ。お箸以外には使えないんだよ」

 穏やかに優しく注意してやるも、驚いた表情でこちらを見やがった。


「あ、ありがとうございマス」

 やっぱり恐れられているな…。

 私が何かやった?!もしかして、目つきが悪いとか言い出すんじゃないでしょうね?

 言いたい気持ちを抑えて「どういたしまして」顔を引きつらせつつも笑顔を取り繕った。


 さてと。


 すでにキョウコの姿は教室に無い。先に屋上へと向かったのだろう。


「さてと、そろそろ時間だな。俺たちも行くか」ヒューゴに従い屋上へ。


「どうしてキョウコちゃん、ココミちゃんの事、知っていたのかな?」

 向かう途中に訊ねるも。


「それは行ってから訊ねよう」

 解ってはいるけど、そう言われると従うしか無いよね。苦笑い。


「ん?」

 不意にヒューゴが振り返った。


「何?」


「足音が一人分多いような気がした」

 変な事を言い出した。


「単に私たちの足音が響いただけじゃないの?」「そうだな」

 この男は何を警戒しているのか?クレハは気にすること無く先を歩くことにした。


 屋上へとやって来た。


「へぇー。屋上って、こんなのだったんだ?」

 普段は鍵が掛かっていて立ち入れない未知の領域。

 ビル空調の室外機が並んでいるだけの殺風景なものだと思ったら、意外にも幾つかプランター植物やベンチが設けられていたり、果ては非常用具の倉庫などがあったりする。

 きちんと“非常用倉庫”と赤い文字で記されていて分かり易いが、何が入っているのだろう?スゴく気になる。


「こっちよ。二人とも」

 声の先にはベンチに腰掛けたキョウコの姿が。やはりピッタリと両脚は閉じている。

 しかも、ヒューゴの姿を目にするなり、スカートの裾を強く握って前を隠すように押さえた。


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