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盤上の兵たちは最強を誇るドラゴン種…なんだけどさ  作者: ひるま
[6] 魔者たち
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-54-:体は至って健康よ

 草間・涼馬は毅然とした態度で言い切る!

「くどいな。命令だろうと、断る理由はすでに伝えたはずだ」


「残念だわ・・。折角、騎士(ナイト)クラスの霊力に、高砂・飛遊午を倒した剣技も手に入れられると思ったのに」

 残念がりながら告げると、またもや瞬時にして間合いを詰めてきた!と思いきや、いきなり彼女の上体が崩れて。


 勢いを止められずに、そのまま数メートル先までアスファルト道路にヘッドスライディングしていった。


「くっ、この私が、たかが人間相手にこんな事!」

 うつ伏せの、肘を立てた状態でツウラが怒りを露わにした。


 屈辱だった。突進してきたところをリョーマに足を引っ掛けられて、無様に転倒。お腹で地面を滑る失態を演じてしまった。


 むっくりと上体を起こすと、「ま、まだよ!このクソメガネ!」ツウラの瞳は怒りの炎で燃えている。


眼鏡(めがね)眼鏡(メガネ)をクソメガネと呼ぶな。眼鏡そのものに八つ当たりしている様に聞こえるぞ。身体能力は目を見張るものがあるが、動きの方はまるで素人だな」

 注意してやるも、それが彼女の神経を逆撫でしたようで、ツウラは悔しさにキィィーッ!と金切り声を上げている。その声は、まるで黒板を引っ掻いたように、とても不快。


 そんな中、彼女の体から音楽が鳴った。電話の着信音だ。


 こんな時に!と悪態をつきながらもスマホを取り出して、「いいかしら!?」怒りながらも電話へ出ても良いか?律儀に了承を求めてきた。

「どうぞ」礼を欠かない彼女に呆れるも敬服。

 ツウラは正座すると、スマホをフリックさせて電話に出た。


「えぇッ!?カラオケ!?今、忙しいんだけどッ!ん?まあ、そこまで言うのなら仕方ないわね。えぇ!心の友?そんなの、どうだっていいのよ!じゃあ、召喚の方、お願いね!」

 何事も無かったようにスマホを仕舞う。「さてと」ホコリを払いながら立ち上がった。


「まさか、カラオケに誘われたから向かうというのか!?高砂・飛遊午の監視はいいのか?」

 思わず、それは職務放棄に当たらないか?疑問を投げかけた。


「盗み聞きなんて、悪趣味ね!彼なら、これから半日は学校でご勉学に勤しんでいるところでしょうよ。監視なら、その後でも十分よッ!!」

 怒りの収まらない彼女の足元に光の魔法陣が現れてクルクルと回りだした。


「さっき、君の(マスター)の学ランがどうとか言っていたな?その“彼”は学校へ行かなくても良いのか?」


「つまらない心配は無用よッ!あんな学校、行っても動物園に行っているようなものだし。それよりも!草間・涼馬!この屈辱は決して忘れはしないわ!お前なんか、ココミ側と契約するがいいわ!それで盤上戦騎での戦いで、お前をコテンパンに叩きのめしてあげるわ!楽しみにしてなさい!」

 指差して告げ終わると魔法陣が一気に彼女の頭頂へと這い登って、彼女の姿を跡形も無く消し去った。


 リョーマは、またもや一人取り残されてしまった。

「言っている事が目茶苦茶だな。ココミとかいう人物に協力するのも、キミと再戦するのも、どちらもお断りなんだが・・」しかし。


「あの速度で迫ってくる相手の足を引っ掛けたのは痛恨のミスだったな。足を痛めたのを彼女に知られていたら、確実にトドメを刺しに来ていただろうな」

 足が痛むあまり、つい、よろめいて塀に手を着いてしまった。




 クレハ、ヒューゴの両名は、余裕あるはずの登校であったにも関わらずに、思わぬ邪魔者が現れたせいで、またもやギリギリで到着するハメになった。


 急いで教室へと入った二人の足が、揃って急にゆっくりになった。


 昨日一日、学校を休んでいた猪苗代・恐子(いなわしろ・きょうこ)が、当然と言えば当然ではあるが、登校していた。


「キ、キョウコちゃん・・おはよう・・」「猪苗代、おはよう・・」

 静かに独り座る彼女に、ぎこちない朝の挨拶。


「・・おはよう。二人とも」

 ギリギリ到着をたしなめられる事も無く、ただ、元気の無い朝の挨拶が返ってきた。


「キョウコちゃん、体の具合はもういいの?」

 事情は知っているものの、やはり訊かずにはいられない。


「ええ。体は至って健康よ」告げると窓の方へと見やって。「クラスの誰かに聞いたでしょ?おとといの放課後、私がこの教室で何をしたのかを」


 キョウコの言葉を聞くなり、教室を見渡す。

 クラスメートのほとんどが、キョウコをチラッと見やってはクスクス笑いをしている。しかも皆、キョウコと一緒にいる二人を目にするなり視線を逸らした。

 とても、嫌な気分だ。自分たちが来るまでの間、キョウコが嘲笑の目に晒されていたのだと思うと、彼女が不憫でならない。


「それは―」「それって、猪苗代がクラスの皆の安全を想っての行動だったんだろ?立派な事じゃないか」


 ヒューゴの言葉に、キョウコの眼は見開かれたまま彼に向けられた。



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