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盤上の兵たちは最強を誇るドラゴン種…なんだけどさ  作者: ひるま
[6] 魔者たち
54/351

-52-:ご覧の通り、黒のチェス・マンよ

 散々な言われ様はともかく。

「決着を付ける?スマン。何を言っているのか・・?俺はお前に殺されかけて、すでに負けた身なんだが。願わくば、そのまま戦う気が失せてもらえるとありがたい」


「確かに君の言う通り、僕は君に勝っている。全てにおいてね。だが!あんな腑抜けた試合で勝負が着いたとは思っていない。僕は“本気”の君から真の勝ちを奪いたい」


「いやいや、だからさ。あんな殺人的な剣には敵わないと白旗上げているんだよ。次に戦ったら、確実に俺はお前に殺されてしまう」


 彼、草間・涼馬の必殺剣“冬の一発雷”は名前のダサさとは裏腹に、剣が決まって“間を置いてから”踏み込みや剣の当たる音が後から聞こえてくる、音速を凌ぐ超高速剣なのだ。発動したら、もはや誰にも止められない、禁じ手に指定されているほどの必殺剣で、リョーマは見事に反則負けを喫していた。


「そもそもさぁ、アンタ、何のコトを言っているの?ジェットの連中に絡まれた件なら、見ず知らずの女の子に助けられちゃったけど」


「それもまた情けない話だな。では、話すとしよう」

 リョーマが話し始めた。


「おとといの放課後、天体観測部の女子たちに部室でのお茶会に誘われてね」

 オイオイ、いきなりモテ自慢かよ・・。話を聞く二人はそろって腕を組んだ。


「彼女たちと話が弾む中、部員の一人が僕に天体望遠鏡で琵琶湖対岸の風景を観てみないかと勧めてくれたので、ちょっと覗いてみたんだよ」

 話を聞くに胡散臭い部である。天体望遠鏡で数キロしか離れていない場所を覗こうとしている事から正立化プリズム(アダプターとも呼ぶ)を装着しているのだろう。で、なければ上下逆さに見えて、何が楽しいのか分からない。

 正立化プリズムを使っている事から地上望遠鏡として活用していると思われる一方、考えたくはないが、ある種のシュミに使っている疑いも拭いきれない。


「すると上空で何かが光っているのが見えたので、光源を追って観ると、2体の人型の物体が見えたんだ」


「何だかUFO目撃証言みたいだね」「いいから黙って聞いてくれ」

 横槍を入れる行為は一切許さない。


「骸骨の様なのがグルグルと弾丸のような回転をして何かをもう1体に向けて撃ち出したんだ。そこで僕は見た!もう1体の方が高砂・飛遊午!キミの剣技、二天一流二天撃を使って撃ち出された何かを破壊したのを」

 よりによって二天撃を知る者に見られていたとは・・。しかも2日も経過しているのに未だに覚えているなんて、間違いなく彼も高い霊力の持ち主なのだと確信した。


「え、と。その話、誰かにしたのか?」

 ヒューゴが訊ねた。


「いや。だが、あの時、一緒に望遠鏡を覗いていた子も大騒ぎしていたけど、5分も経たない内にすっかり忘れていたよ。だから誰にも話してはいない」


「それは何より。クサマ、お前は白昼夢を見たんだ。誰にも話さなくて良かったな。今のハナシ」

 リョーマの乱れてもいない制服とネクタイを正しながらそれだけ告げると、じゃあと二人して彼を置いて登校の途につく。


「高砂・飛遊午!あのカニヨロイドを操っていたのは君だと僕は断言する!」


「何をバカな事を言っているんだ。お前は現実(リアル)空想(フィクション)の区別も付かないのか?それにアレだ。子供番組の敵キャラを大声で言うんじゃない!小学生が聞いたら思いっきり笑われるぞ」

 振り返り、こんこんと注意をすると、後は知らないとばかりに、背を向けたままお別れにと手を振って彼らは去って行った。



 取り残されたリョーマは、去り行く二人をただ見送った。



 二人の姿が見えなくなったところで。

「ふぅーん、キミ、盤上戦騎(ディザスター)の戦いが見えていたんだ」

 声の方へとリョーマは向いた。


 そこには、黒とショッキングピンクの2色で彩られたゴスロリ風衣裳(だけどスカートは膝上丈だしシアータイツは黒とピンクの縦ストライプ柄)を纏った、これまたショッキングピンクのアンダーリム眼鏡(グラス)を掛けた少女がいた。

 しかも、ツインテールに結った髪までショッキングピンクで、所々筋状に黒が入っている。


 黒の生地にショッキングピンクのフリルのついた日傘をクルクルと回しながら。

「ハァイ」小さく手を振って見せた。


「何者だ?君は」

 眼鏡を中指でクィッと押し上げながら訊ねた。


「初めまして。叫霊(バンシー)のツウラと申します。ご覧の通り、黒のチェスの駒(チェス・マン)よ」


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