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盤上の兵たちは最強を誇るドラゴン種…なんだけどさ  作者: ひるま
[26]闇を貪る者
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-306-:まるで、バ○スを唱えた後の

 コントラスト、ダナ、両騎揃って妲己をロックオンマーカーに捉えた!


 向こうでは、きっと、ロックオンアラートがコクピット内で鳴り響いているはずなのに、当の妲己は地上から一歩も動こうともしない。


「どういうつもり?完全にこちら側をナメているという事でしょうか?」

 ココミがクレハたちに訊ねた。


 と、ダナが妲己へ向けてミサイルを一斉発射!


「何らかの防御策を講じているのだろう。だったら手の内を明かしてもらう!」

 この男は、目の前に現れる壁を“乗り越える”という発想が無いばかりか、“とにかくぶっ壊して”進む道を選んでいる。


 ミサイル群は真っ直ぐに妲己へと向かって飛翔している。


 ECMやチャフ、フレアといったミサイルへの対抗手段を、一切発動させる気配が無い。


 依然ミサイル群は妲己へと向かいつつある。


「着弾まであと10・9・8・7・・」

 ダナがカウントを取り始めた。


 ズン!


 高く土煙を立てて3騎の盤上戦騎(ディザスター)が妲己の前に立った。


 その中の1騎は、すでに対戦済みの騒暴死霊(ポルターガイスト)のウッズェ。しかも防御モードであり、アレでは直撃しても攻撃が通らない。


 だけど、妲己よりも身の丈が低いので盾とするには物足りない。


 が、残る2騎の片方が、ウッズェを高く持ち上げると、遅い来るミサイル群に向かって法理投げてしまった!


 何と、味方を盾にしてしまう暴挙に出た。が。


 立て続けて起こる爆発をかいくぐって、なおも妲己目がけて飛んで来るミサイル数発。



 しかし、残る2騎が体を張って、妲己を守り抜いた。


 立ち込める黒煙が、風に流されて晴れてゆく。


 全身ススだらけになって横たわっていたウッズェは、予想した通りに健在。すぐさま体を起こして再び妲己の護りにつく。


 残る2騎は、いずれも長身の盤上戦騎。


 おかげで、妲己に対して、まったくミサイル攻撃が通らなかった。


「とんでもない壁モンスターたちを揃えてくれたな…」

 草間・涼馬がつい漏らした、カードゲーム風な表現をクレハは同感できなかった。


 日常生活に、ゲーム用語を持ち込むな!


 そう思うも、もはやコレは日常の出来事では無い。


 さて、厄介な壁をどうしたものか…?





「一つは、イオリさんたちに食い殺された一つ目巨人(サイクロプス)のアンドレですね」

 ココミの呟きに、ライクは苦笑した。


「彼女は盤上戦騎を食べたりしないよ」

 重箱の端をつつくとはこの事だ。細かなミスさえもお目こぼししてくれない。


「そこはサラッと聞き逃して下さい。それよりも、あとの1騎は、何だか腕が沢山生えているのに、脚は無いんですね?」

 地上に立つ限り、『脚なんて飾りですよ。偉い人には分からんのです』とは言わせない。


 上半身は手の無い腕が沢山生えているというのに、下半身は複雑に巻いた根っこのようなものが1本あるだけ。


 その複雑に巻かれた根の中に、青色に光り輝く水晶(クリスタル)のような物体が。


 生物を感じさせない、独特なフォルムを見せる盤上戦騎。


魔界樹(トレント)のガイエスブルグ。最長寿のアンデッドさ。元が樹木なんで、脚を付けても歩く感覚を持ち合わせていないため、不要なのさ。だから登録の際、大幅にデザインを変更させてもらったよ」

 歩行を知らない魔者か…だからと、要塞のような名前を付けないで欲しい。


 より一層強く感じてしまうではないか。


「それにしても、とても大きな盤上戦騎ですね」

 目標よりも、約2kmの距離に降り立つなり、ベルタが驚きの声を上げた。


「どちらも城砦(ルーク)の盤上戦騎だからね」

 即ライクが応えてくれた。


 となると、チェスで言う“大駒”が出揃った事になる。


 片やこちらは“小駒”で対抗という訳だ。


 ゲームで表現するなら、あの2騎は“カタい敵”だ。


 ダナの放ったミサイルの直撃を受けてもビクともしない。



 土煙を立ち上げて、ガイエスブルグが浮遊し始めた。


 巨大な樹木型の盤上戦騎が空へと舞い上がるその姿は…。


「まるで、バ○スを唱えた後の―」「大人しく空の彼方に飛んで行くなら問題無いんだがね」

 アニメを絡めてくる男子の会話など放っておいて。


 それほどに、ゆっくりとしか上昇していない。鈍足にも程がある。


 と、突如コクピット内にロックオンアラートが鳴り響いた。


Lock ON(ロックオン)された!?」

 手と言うか、ただの枝が伸びているだけで、武器らしいものは何も見当たらない。


「回避だ!急げ!」

 突然のリョーマからの通信。


 ガイエスブルグの枝の先が光を宿したかと思えば、一斉に光線を放ってきた。


 細く伸びる緑色の光は。



 まるで曲芸飛行のような急機動をしなければ、ダナではガイエスブルグの放った“追尾型光線(ホーミングレーザー)を回避する事は叶わない。


 一方のコントラストは。


「あんなモン、避けられるかァ!」

 クレハは根性出して浮遊素を大量散布!以前、アルルカン3が見せたバリア転用を意地で発動させた!


 横殴りの雨のように次々と放たれるホーミングレーザーを、歯を食いしばって、何とかしのぎ切る。


 単純だけど、非常に厄介。


 “数で圧し切る”を見事なまでに体現してくれる。


「せっかく、ここまで近づいたというのに…」

 悔しがるタツロー。しかし。


「敵のデーターは、騎体に接触していないので判断できませんが、映像を見る限り、ガイエスブルグの腕は36本。失礼、枝の数は36本。つまり、発射されるホーミングレーザーの数は36本という事になります」

 地雷女コールブランドは戦場において冷静でいてくれるから有難い。


 だけど、36本とは、尋常ではない数だ。


「マスター、あの邪魔な樹を枯らしてやりましょう」

 この上ずった声、コールブランドが言っているのは、単なる意気込みではなく、確実に仕留められる策を見出している口調だ。


「つまり除草剤を撒いてやれば良いんだね」

 タツローもニヤリと笑う。


「な、何なの…二人して。何を企んでいるの?」

 悪だくみをする二人に、ちょっと引いてしまうクレハであった。

 

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