表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
盤上の兵たちは最強を誇るドラゴン種…なんだけどさ  作者: ひるま
[26]闇を貪る者
312/351

-303-:この目が人を殺そうとする目に見える?

 男に狂った女というものは、こうも厄介なものなのか?



 ▽  △  ▽  △



 アンデスィデ当日…。


 黒玉門前教会に、呼びもしていないのに“鈴木・くれは”が現れた。


 てっきり彼女は、ジョーカーに魅入られてしまった御陵・御伽の行く末を見届けにやって来たものとばかり思っていたのだが。


 クレハは立ち入るなり、ココミの足元にスマホを放り投げた。


 床に転がるスマホは、ディスプレー全体にヒビが入っていた。


「これは?」

 画面中央から放射線状に広がるヒビは、明らかに思いっきり踏みつけて破壊したものだと推察できる。でも、誰のスマホ?


「言っておくけど、これは私のスマホじゃないからね」

 その言葉の意味を理解したココミは、かつて無いほどの怒りを覚えた。


「何て事を!!クレハさん!貴女、イオリさんに何をしたの!?」

 一度として目にした事も無いけれど、足元に転がるスマホが神楽・いおりのものだと察する事はできた。


 しかも!最終決戦をライクと共にお膳立てしたというのに、肝心のイオリがいなくては、今のオトギを倒すのは不可能だ。


 女王(クィーン)に対抗できるのは、もはや女王しかいない。


 それなのに!


「答えなさい!イオリさんはどこなの!早くしないと、アンデスィデが始まってしまいます」

 後はプロモーション(成りのこと)がてらに黒のクィーンをテイクすれば良いのだが、すでにベルタと契約を果たしているイオリがいなければ、テイクをしても意味が無い。


 ああ、何てコト…。せっかくのお膳立てが…。


 ココミの頭の中は、ただそれだけが駆け巡っていた。



 御膳立てをざっくり説明すると。




 -第38手-


  白側:c7

   c6兵士(ポーン)のベルタを1マス前進。


  黒側:Qd8

   b8の女王(クィーン)の妲己をd8へ移動。




 -第39手-


  白側:Bc8

   d7の僧正(ビショップ)のコールブランドをc8へ移動。アンデスィデ要員を追加。


  黒側:Ng6

   e7の騎士(ナイト)のジェレミーアをg6へと移動。今回のアンデスィデに不要なため、御退場願った。




 -第40手-


  白側:Nd7

   e5の騎士(ナイト)のダナをd7へと移動。これでアンデスィデの準備は整った。


  黒側:h4

   取り立てて動かしたい駒が無いので、h5の兵士(ポーン)を1マス前進。




 そして、運命の-第41手-。


 しかし!


 肝心の神楽・いおりが黒玉門前教会に到着していないばかりか、スマホまでも破壊されている。


「今ごろ彼女、三途の川を渡っていないにせよ、近くのお花畑の中にはいるでしょうね」

 イオリが自宅から出掛けたのを見計らって、ヘッドロックを仕掛けて墜としていたのだった。


 殺害にこそ至ってはいないが、意識不明の少女をコンビニのベンチに寝かしつけて、奪い取ったスマホをその場で破壊、持ち去って来たのだった。


 プレイヤー同士が結託して行おうとしたアンデスィデであったが、クレハによってあえなく御破算となってしまった。


 いや、まだ御破算とは言い難い。


「私が代わりにアンデスィデに参戦するわ」

 代わりも何も、本来参戦する予定だったイオリを手に掛け、挙句、代打に出ると言い張る凶行に、ココミは唖然とした。


「何を言っているの…クレハさん」

 目の前の少女は、愛する男の仇討ちに燃えている…としか思えない。


 男に狂った女とは、こうも厄介なものなのか…。


「ダメです!今のクレハさんは、逆上するあまり、オトギさんを殺害しかねません」

 理由を述べて、キッパリと断った。


「私はオトギちゃんを殺してやろうなんて、これっぽっちも思ってはいないわ。見て!私の目を、この目が人を殺そうとする目に見える?」

 この状況の、本人の言うノープロブレムほどアテにならないものは無い。おまけに目を見て信じろだなんて、そんなもの何の担保にもなりはしない。


 さらに、クレハのジト目は、まるで睨み付けているようで、少し腰が引けてしまう。



「僕はクレハさんとなら、オトギさんを止められると思います」

 御手洗・達郎が長椅子から立ち上がりながらココミに告げた。


「いたの?タツローくん」

 突然の出現に驚きを隠せない。その傍らで、もう一人、長椅子から立ち上がる者が。


「僕も彼と同意見だね。彼女となら、一度チームを組んでいるので勝手が分かってやり易い」

 草間・涼馬までいた!


 この男まで黒玉門前教会にいようとは…。どこか別の場所で参戦していろよ…。


「アンタもいたの?てか、私はアンタなんかとチームを組んだ覚えは無いわ」

 確かに連携はしたけど、どれもが“ぶっつけ本番”でしかなかった。


 上手くいったのが奇跡と呼べるくらい。


 そして、プレイヤーであるココミ本人も未だ不本意なご様子。


「いける、いけないは別として、根本的な問題をまだ解決していません」

 ココミは本のページを開いて、チェス盤を広げた。


 c7の兵士(ポーン)の駒を指差す。


「良いですか?ベルタさんをプロモーションさせるにしても、クレハさんでは九頭龍(ナインヘッド)のオロチを操作する事は不可能なのです。言うまでもありませんが、クレハさんの霊力ではオロチを機能させる事はできません」


 この女、本人を前に、『出来ない』を2回も言いやがった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ