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盤上の兵たちは最強を誇るドラゴン種…なんだけどさ  作者: ひるま
[3] チェスを始めましょう
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-25-:聞こえないの!高砂・飛遊午!

「もう授業は始まっていますよ」

 学級委員長の猪苗代・恐子(いなわしろ・きょうこ)が小声で注意をしてきた。


「どうも。お構いなく」

 大きなお世話と言わんばかりに、掌を黒板の方へクルリと向けて答えて見せた。

 そんな態度を見せられるもなお、「ならばせめてスマホを仕舞いなさい」声を荒げることなくトーンを少し上げて命令口調で注意してきた。


 キョウコは男性に対して心の導火線は決して長くは無い。


 それは彼女の家系が、代々女性が当主を務める女系家族であり、彼女の名前も“男性に畏怖を抱かせるような強い女性になれ”と願いを込めて付けられ彼女自身も名に恥じないよう努めている。

 絶対服従とまで言わないが、男性からは軽く見られたくはない。


 性格だけではなく、健康維持の一環として始めたエクササイズムエタイの技を発揮して3人の暴漢を病院送りにした過去を持つ。ものの、うち一人は両手で首を抱える“首相撲”からの膝蹴りにより重傷を負う。

 明らかに過剰防衛なのだが、政治的圧力が行使され、正当防衛の範囲内で事は収められている。

 

「聞こえないの!高砂・飛遊午!」

 聞く耳持たぬヒューゴにバンッ!遂に机を叩いて声を荒げた。


「猪苗代さん?声が大きいですよ」

 穏やかに(なだ)める数学教師。


「でも、授業中にスマホを操作しているんですよ」


「私が高砂くんを注意しますので猪苗代さんは授業に集中なさい」

 不服そうに教師に一礼するとキョウコはヒューゴを睨み付けながら着席した。


「おぉ(コワ)

 クレハと隣のトラミがキョウコに恐れを()した。

 と、二人もギッとキョウコに睨まれ、一瞬ではあるがヘビに睨まれたカエルの心境に至った。


「高砂くん。あなたに限ってゲームなどしていないと思いますが」

「してませんよ。ただ検索をしているだけですよ」


「だとしても今は数学の授業です。スマホはしまって授業に集中して下さい」


「そうだよ。今は止めときなよ」

 クレハが小声で従うよう促した。


「申し訳ありませんが、今は時間が惜しいんです。どうしても果たしたい約束があるものですから」


「約束?それは授業よりも大切な事なのですか?」


「授業は・・授業なら取り戻せます」

 ヒューゴの言葉に教室がざわめく。


 ヒューゴが続ける。

「でもアイツらとの約束は交わした以上、できる限りの努力はしたい」


 学年トップの成績を誇るヒューゴならば、授業の遅れを取り戻すのは容易いことだろう。


「言っている意味が解りません。今すぐにスマホを片付けないその態度は私の授業を(ないがし)ろにしていると解釈しますが、よろしいですね?」


 生徒からスマホを取り上げれば良いだけの話なのだが、試合中の選手たちを信じて見守っているのと同じように、自主的に片付けてくれることを期待していたのだが、どうやら願いは届きそうにない。


「では後日に補修授業を受けていただきます」


「了解でーす」


 スマホから顔を上げることなく承諾するヒューゴ。


 この時彼はクラスのほとんどを敵に回した。


 中でも一番敵意を燃やしたのはトラミであった。

 彼女は体育以外の科目に於いて赤点スレスレの低空飛行で何とか難を逃れてきた身であり、何が何でも避けたいと思う補修授業を自ら進んで受けようとするヒューゴが許せなかった。


「では授業を続けます」

 志穂は授業を再開した。


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