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盤上の兵たちは最強を誇るドラゴン種…なんだけどさ  作者: ひるま
[3] チェスを始めましょう
26/351

-24-:もう授業は始まっていますよ

 一時限目は数学。


 担当はこのクラスの担任でありバスケ部の顧問も務める葛城・志穂(かつらぎ・しほ)


 若き女教師はかつて衛星放送で観たプロバスケットボールの試合で、タイムアウト時に監督が選手たちに作戦を伝える際にタブレット端末を用いて指示している姿に憧れ、いつも持ち歩いているが、授業にも部活にも使われた事は未だ無い。


 授業が始まる。



 そんな中、ヒューゴは早くも大きな壁に阻まれた。


 それはおおよそ誰もがブチ当たるであろう初歩中の初歩でありながらもチェス入門においていきなりハードルが高いと思わせる歩兵(ポーン)の動かし方。

 

 将棋の『歩』は一つだけ前進し、正面に位置する敵駒を取ることができ、敵陣内に入る(もしくは動く)ことで“成り”と呼ばれる“金”に変化できる。駒には『と』と記されているが能力的には『金』の『と金』になる。

 『香車』『桂馬』『銀将』の駒も同じく“成り”によって『成香(なりきょう)』『成桂(なりけい)』『成銀(なりぎん)』それぞれ名前は異なるが、実質“金”に変わる。


 一方のポーンは…。


 将棋の『歩』同様に前に1マスだけ前進するのだが、初出(最初の位置から出るとき)に限り2マス前進させることができる。これは権利であって1マス前進でも構わない。


 相手の駒を取る際、ポーンの正面に位置する相手の駒は取ることはできないが、斜め前方に位置している相手の駒を取ることができる。つまり攻撃可能なマスが、『歩』が正面1マスに対してポーンは2マス有しているという訳だ。


 ところが。


 相手のポーンが2マス前方左右どちらか1マスに位置していた場合、初出なので2マス進めたら1マス前進した場所で駒を取られてしまうアンパッサン[En passant]を受けてしまう。“伏兵”に殺られるという扱いだ。


 移動と攻撃の、この2つでも正直言って難しいのに、さらに。


 プロモーション[Promotion]と呼ばれる“昇格”(成り)もなかなかややこしい。


 まずチェス盤には、縦の列(ファイル[Files])には、白側から見て左から右へaから hのアルファベット文字が割り当てられており、横の行(ランク[Ranks])には、白側の手前から上部へ 1から8の数字が割り当てられている。


 ちなみに斜めの筋はダイアゴナル[Diagonal]と呼ばれ、チェス盤は白と黒の市松模様なので白のダイアゴナルと黒のダイアゴナルで構成されている。


 ポーンが昇格するには、それぞれのバックランク[Back Rank](白側なら相手のバックランクとなる8のランク、黒側ならば1のランク)へとポーンを進めなければならない。


 相手のバックランクへと辿り着いたポーンはランク・ファイル・ダイアゴナルの盤の端から端へと移動できる事実上最強の駒である女王(クィーン)へと昇格、これをプロモーションと呼ぶ。


 だが。


 必ずしもクィーンに成る必要は無い。


 ポーンはその他の駒、騎士(ナイト)僧正(ビショップ)城砦(ルーク)と、(キング)以外の全ての駒に成れるのだ。


 クィーン以外の駒に成ることを“アンダープロモーション[Under Promotion]”と呼ぶ!


 何故あえて最強なる力を得ないのか?諸々の理由があるのだが今は端折って覚えよう。



(歩兵でこれかよ…)

 見込みの甘さを悔やんでいても仕方が無い。わかっているのだが。


 トントンッ。右隣の席から指で机を叩く音が聞こえてきた。


「??」


「もう授業は始まっていますよ」

 学級委員長の猪苗代・恐子(いなわしろ・きょうこ)が囁き声で注意をしてきた。



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