-249-:さすがは御陵のお嬢様。護身術はお手の物かぁ?
眩い光を放つ弓矢をつがえるガンランチャー。
そんな神々しい姿を目の当たりにするも、オトギは絶望視しかできなかった。
「そんな武器がクロックアップをしている相手に当たるはずがない…」
ただ呟く事しか出来ない。
「心配要りませんよ」
白側回線に行き渡るココミの声。
「どうしてガンランチャーの最強攻撃が弓矢なのか?ご存知ですか?」
何か、どこかで聞いたことのある台詞だなとクレハは感じた。
取り敢えず。
「どうしてなのよ?」
訊ねてみた。
「アンデスィデに於いて、最強の駒は女王です。そのクィーンは最強な上に効果魔法カードを9枚も使用できるチート騎なのです。そんなクィーンを倒すためには通常の割り振りでは到底敵わず、能力の一極集中をする必要があるのです」
説明を求めたは良いけど、何か違う説明を始めている。
「あっ、ごめんなさい。これはベルタさんがどうして剣しかまともな武器を持っていないかの説明でした」
自らの間違いに気付き、謝罪する始末。
そんな解説はタカサゴにしてやれよ!「ちゃんと説明して!」催促した。
ココミはコホンッと咳払いひとつして。
「答えは先程アルルカン3が示してくれた通りと言っても良いでしょう。つまり、クロックアップの世界に於いて、射撃武器の信頼性は大きく損なわれてしまいます。なので!反応速度をそのまま攻撃力に転用できる弓矢なら!威力も弾速もクロックアップ中なら大幅にアップできます」
大体そんな事だろうと思っていたよ。何一つ驚く要素は無かった。
「だけど、命中率はどうなるの!?クレハ先輩は現在、スランプに陥っているのですよ!」
まあ確かにデモンストレーションでは全部外しちゃったけど、アレは別にスランプって訳じゃあ…。
嫌な事を思い出してしまった。
後輩のオトギに信頼されていないと実感すると、何だか本当に当てられる自信が無くなってきた。
何でも良いけど、オトギちゃん…貴女、肝心な時にテンション下げてくれるのよね…。
「ゼロ距離射撃なら、どうですか」
タツローからの提案。「ゼロ距離…射撃!?」
「ちょ、ちょっと待ってよ!私に、あんな空手バカ一代に接近して戦えっての?無茶を言わないでよ!」
そんな特攻じみた戦法、こっちから願い下げだ。
「大丈夫です。僕がヤツを押さえ付けておきますから」
タツローは効果魔法を使ってダメージを全回復させた。
タツローはダナへと向いて。
「今、クロックアップを使えるのは、クレハさんと僕たちです」
有無を言わさず、今はこれしか方法はない。
ダナが頷いた。
「行きましょう、クレハさん」
告げてアルルカン3の元へと飛び立ってしまった。
空中で腕を組んだまま浮遊素のバリアで護られているアルルカン3が、コントラストの接近に気付いた。「ん?」
ようやく接近戦を挑んでくる相手に、シズカは胸躍らせる。
「来たか!よぅし、相手になってやるぜ!」
タツローは牽制にと、オプション火器による一斉射を放つ。
しかし、そんな攻撃は浮遊素のバリアを突き破ることが出来ない。それでも。
「クロックアップ!」
アルルカン3が浮遊素の玉を投げるフォームに入った瞬間、クロックアップを発動。
お互いが10倍速になれば、普通の投げのフォームでしかない。避けるのは思った以上に簡単だった。
「タツローくん!接近戦は私が!」「うん、任せたよ」
コントロールをオトギに渡す。
と。
前蹴りを繰り出してきたアルルカン3の膝裏に、回転させた長柄部分で打撃を与える。
体勢を崩した相手に追い討ちとばかりに薙刀の一閃をお見舞いするも、浮遊素の盾で弾かれてしまった。
「甘ぇよ、お嬢さん」
動きからパイロットが変わっている事が見抜かれていた。
しかも返し蹴り、いわゆる内回し蹴りのカウンターを頭部に向けて放ってきた。
(まだよッ!)
すかさず防御ビットを集中させて防御を図るも、一瞬にして粉砕されてしまった。
一旦距離を置いて薙刀の切っ先を向ける。
「さすがは御陵のお嬢様。護身術はお手の物かぁ?」
訊ねられても、こちらは呼吸を止めた状態。答えたくとも答えられない。
戦闘続行!
今度は薙刀の突きを連続で放つ。
シズカは、これをスイスイと避けて見せた。直線攻撃では、とてもではないが、この空手の達人に命中させる事などできない。
「んもう!相手を左右に振らして、どうするの?余計に当たらないじゃない!」
気付かれないように、徐々に接近を試みながら、チャンスを窺う。
「まるで命懸けの“だるまさんが転んだ”ですねぇ」
やけに腹が立つけど、ガンランチャーの言い回しは的確だ。
そのガンランチャーが、もうひとつ思いも寄らない事を訊ねてきた。
「で、クレハさぁん。与一を当てるのは良いのですが、当てちゃったら、あの騎体、一撃で消滅してしまいますよ」
どうして、そういう肝心な事を、このギリギリになってから言うのか!




