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盤上の兵たちは最強を誇るドラゴン種…なんだけどさ  作者: ひるま
[22]聖剣&魔剣
244/351

-235-:聞くな!トモエ!

「兄さんの夢を奪った犯人の見つけるため。私の兄からバスケを奪ったヤツに酬いを受けさせるためよ!!」

 シンジュが告げた、自身が盤上戦騎(ディザスター)に乗る理由が明らかとなった。


 しかし、理由を告げられたタツローにとっては、それはそれは非常に情報量が多くあり過ぎて困った。


「え、と。シンジュさん?今、述べられた理由なんですけど、そこにたどり着くまでに、貴女に訊かなければならない事が山ほどあるのですが…」

 タツローの問いに、ロボが腕を組んで見せた。


 一時休戦を受け入れてくれたようだ。


 ただし!それはタツローとのみ。


 手下と戦っているオトギたちは未だ敵騎に追われ続けている。


「あの・・シンジュさん。できれば、彼女たちを追うのも止めて頂けませんか?」

 タツローからのお願いは、「イヤよ」あっさりと拒否されてしまった。


「で、何を訊きたいの?とっても忙しいんだから、順を追ってってのは無理だからね」

 要所要所をかいつまんで訊けとのお達し。


 そう言われても、タツローには要所を拾い出せるほどの国語力は身についておらず、結局は最初から問う事になる。

「シンジュさんにお兄さんがいらしたのですね」


「そうよ。アメリカのストリートでバスケの腕を磨いてね。私も兄に付いて回ってストリートでプレイしているうちにグングンと上達していったわ」

 お兄さんの存在は、彼女がバスケを始めた理由でもあるのか…。


「兄は日本(こちら)の高校に転入したとたんにレギュラーでエース。全国で群を抜いての点取り屋にのし上がったの。だけど」

 ロボの、ブーメランを握る手に力が込められた。


 怒りに打ち震えているのが見て取れた。


「全国大会の最中に、何者かによって階段から突き落とされて、大怪我だけじゃ済まされない、体に障害を抱える事になってしまったのよ!!」

 思わず「障害!?」繰り返してしまう。


「下半身不随。兄はもう、ジャンプどころか走る事も出来ない。大学でバスケをプレイして、ゆくゆくはプロを目指していたというのに!兄の夢を奪ったヤツを私は絶対(ゼッタイ)に許さない!」

 シンジュの怒りを聞いている間にも、オトギたちが苦戦している様子が通信で入ってくる。


 どうにかして、オトギたちへの攻撃の手を止めてもらえないものだろうか?


「ライク・スティール・ドラコーンは貴女のお兄さんに怪我を負わせた相手を探す代わりに、貴女を引き入れたという訳ですね」

 まとまらない頭を整理するためにも確認を取らねば。


「ライクとは後で逢ったわ。私を引き入れたのは“ノブナガ”という男。見た目は変なヤツだけど、とても頭の切れる、ついでに腕も立つ男よ」

 彼女の話には、横道に逸れてしまいそうな誘惑が、所々にちりばめられている。今だって、“見た目は変なヤツ”ってどんなのか?興味が湧いて仕方が無い。


「だけど、シンジュさん。そのノブナガという男が、お兄さんのケガに関わっているとは思わないんですか?」

 こういうのは大体、話を持ちかけてくるヤツが犯人か、もしくは関係者だと相場が決まっているものだ。


「彼ならシロだと断定できる。彼らの黒玉工業高校は、兄のいた高校とはまず当たらないほどにバスケのチームは弱くて、全国どころか県大会の予選1回戦もロクに勝てないような、反則で自滅するような高校よ」

 それはそれでスゴい話だ。天馬学府の男子バスケチームも弱小だけど、願わくばラフプレイの目立つ高校とは当たりたくはない。


「なら、どうしてノブナガという男はシンジュさんをスカウトしたのですか?」


「単純に霊力の強さでしょうね。それに加えて、ロボが黒玉の生徒たちや他の魔者たちとの連携を拒む傾向にあるから、黒玉以外からマスターを得る必要に迫られた。それが大方の理由ね」

 どうやら敵()一枚岩ではないらしい。


 だけど、それは決して励みに繋がらず、今もコールブランドとグラムの仲の悪さには頭を悩まされている。


「そのノブナガという男は、本当にシンジュさんのお兄さんに怪我を負わせた張本人を見つけられるのですか?適当な事を言って、シンジュさんをただ利用しているだけではないのですか?」

 その言葉に「うっ」思うところがあるようだ。


「騙されてはダメです、シンジュさん!そんな男の口車に乗って人を殺めたりしてはダメです!」

 コールブランドでグラムの方向を指差したい。だけど、コールブランドには昆虫のような6本の脚とナギナタの尻尾しかない。


「今すぐにオトギさんたちへの攻撃を止めさせて下さい!お願いです」

 こうなれば、ダイレクトに休戦を訴えるしかない。


「聞くな!トモエ!」

 皆が初めて聞く声が空域全域に轟いた。


「そんな小僧の戯言に耳を貸すでないぞ!トモエ!」

 その声を耳にするなり、オトギは、「え?」一瞬ではあるが、トリガーに掛けた指をためらった。



「え?誰です?この声は?」

 黒玉教会にて、魔導書を通して戦況を眺めていたココミがライクやドウカに訊ねた。


「ノブナガのヤツだ」

 ココミの目の前に座るドウカが、顎で指すと、いきなり教会の扉がバーンと勢いよく開かれた。


 現れたのは。


 頭に“ちょんまげ”を結った、口元に“どじょうヒゲ”を生やし、何故か腰に日本刀を下げた。


 黒玉工業高校の学ランをマントのようにひるがえして教会内へと足を踏み入れる。


 チーム戦国(センゴク)のリーダー、その名も“ノブナガ”が姿を現した。



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