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-18-:形勢逆転だなぁ

「こらこら。お前は素人か?それでは俺は斬れんぞ」

 あまりにも見ていられなくて、ヒューゴは剣の握り違いを指摘した。


「こうだ。こう!」

 キバをゆっくりと振り下ろして“斬れる”剣の軌道を実践して見せる。



「何をしとんねん、ヒューゴ。敵に剣を教えてどないする?」

 敵に塩を送るマネをし始めたヒューゴの行動をルーティは理解できない。


「あのな。こんなグダグダな戦い知らんわ。勝っても敵がアレでは自慢にもならん」

 もはやヤケクソ気味。ルーティに説明しながらも、形になっていないヒデヨシに再度キバを振って見せて指導する。


 キャサリンの剣の持ち方は未だサマにはなっていないが、取り敢えずは見られる様にはなった。

「やっとかい。じゃあ、さっさとキメるわ」


 来い!身振りで挑発する。

 挑発に乗ったキャサリンが上段の構えでベルタに斬りかかる。


 キャサリンの振りを弾くと怒涛の剣撃を繰り出した。もうキャサリンは防戦一方。

 と、言うよりも、キャサリンのロングソードそのものを的として攻撃を繰り出している。


 2騎の盤上戦騎が激しく剣を交える中、足元の浮遊素が徐々に明るさを増してきた。


 野球のバット振りで斬りかかるロングソードなど受け流して、さらに頭をカチ割ろうと長剣を上段へと構えた瞬間!ベルタはキャサリンの脇の下(肩関節)にキバを突き立てた。


 突き立てた刃先を作用点に、装甲部分を支点にして、握り手を力点として力を加える。“てこの原理”を応用してキャサリンの両肩関節を同時に破壊した。


 両腕が足元へと落下し終える前に、今度は股関節にも同じくキバを突き立てて、再びてこの原理を応用して両股関節も同時に破壊。


 キャサリンの騎体が崩れ落ちてゆく。


 最後は―。


 崩れゆくキャサリンの首に一閃が走った。すると、キャサリンの騎体が光り輝いて、やがて光の粒へと分散してゆく。

 総ダメージ数60%以上を与えたのだ。


 消えゆく中、穏やかなキャサリンの声が耳に届いた。


「ありがとう…ベルタのマスター。私のマスターを―」


 ―骸骨亡者(スケルトン)のキャサリン撃破―


 何かを告げる前に消滅ししてしまったキャサリンに、ヒューゴは「痛い思いをさせてすまなかったな」と呟くように詫びた。



 光の粒子となって消えて行くキャサリンを画面越しに眺めながら、クレハはこのブッ飛び過ぎな展開に巻き込まれた事の経緯を思い起こしていた。


 ◇  ◇  ◇  ◇


 それは今朝のコト…。


 いつもと変わらず、幼馴染の高砂・飛遊午と共に私立天馬学府高等部へと登校している最中。


 不良の巣窟とまで言われるワルの集まる学校として名高い黒玉工業高校(通称ジェット)の生徒たち3人に行く手を阻まれてしまった。


 彼らの言い分は。

「昨日、警察だ、お巡りさんだとか騒いでくれたヤツだよな?」

 と、ヒューゴに言い掛かりをつけてきた。


 説明されるまでもなく、彼らがカツアゲをしていた所にヒューゴが出くわして警察に通報したものだと想像に難しくない。それを逆恨みしての“お礼参り”に来たという訳だ。


 が、ヒューゴが騒いでいたうちが華だと彼らは知る。


 あっと言う間に1人を倒されてしまったジェットの生徒たちは傍にいたクレハの腕を捻り上げて彼女を人質に取ってしまった。


「あぁうぁ」

 助けを求めるどころか、悲鳴すら上げられない。手をヒューゴのほうへと伸ばそうものなら、さらに腕をネジ上げられ、彼女の腕が悲鳴を上げた。


「形勢逆転だなぁ、オイ」

 もうひとりの男が嬉しそうにヒューゴに告げた。

「わかるよなぁ。抵抗すると、この女がどうなるか。イシシ」

 二人の男は勝利を目前に下品な薄笑いを浮かべていた。


 一方、ヒューゴは、普段は穏やかな表情を見せているものの、人質を取られれば、さすがに険しい眼差しを向けた。


 すると形勢逆転に顔をほころばせていた男たちの顔が一転、恐怖に引きつった。

 ヒューゴは、見ようによってはイケメンだが、その顔には、顔を二分するほどの大きな傷を負っている。


 先の高校剣道大会で相手の竹刀が折れて顔に突き刺さり負ったものだが、おかげでひとたび険しい表情を見せると、誰も寄り付かないほど恐ろしい形相に見える。


「今さらガン飛ばしてビビらせてんじゃねェッ!」

 強がったセリフを吐きながら男が殴りかかってきた。

 と、ヒューゴはその手を、勢いを消すことなく掴み取ると、体をひねって男と共に地面へと倒れ込んだ!


 男の拳は地面へと向けられて!!


 男が慌てて地面へと手を突こうと手を広げたが…。手が開き切る前にアスファルト路面に直撃!さらに二人分の体重に加えて落下重力を支えられるはずもなく5本の指はあらゆる方向へといびつに曲がっていった。


「ぎゃああ!救急車ッ。救急車!」

 見るからに痛々しい手を押さえながら、男がのたうち回っていた。

 その痛む手に靴が載せられた。ヒューゴが踏みつけているのだ。


「救急車?お前、ナニ都合のイイことを言ってんだ?」

 踏みつける足に力が込められた。同時に悲鳴が上がった。


「お前、人にケガ負わせようとしておいて、自分がケガしたら救急車を呼ぶのかよ。なぁ、アレ呼ぶのに電話代かかるんだぞ。タダじゃないんだよ。電話会社が肩代わりしてくれているんだよ」


(オイオイ、またお金絡みのハナシ?)

 クレハは人質の身でありながら呆れていた。


「それにお前、歩けるじゃないか。だったら歩いて病院に行けよ。安易にタクシー代わりに使ってんじゃねぇ!」


 クレハはまた溜め息を漏らした。やはりいつもの説教が始まったのだ。


 そんな彼らのやり取りを、少し離れた場所にある自動販売機の陰から、二人の少女がこっそりとうかがっていた。


 ココミ・コロネ・ドラコットとルーティだ。



 






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