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盤上の兵たちは最強を誇るドラゴン種…なんだけどさ  作者: ひるま
[1] 高砂・飛遊午
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-17-:驚かないで欲しい。私だ。ベルタだ

 ベルタが見せる新たな構えに、ヒデヨシはさらなる闘志を燃やす。


「何かする気だな。燃える展開だぜ。だったら、こっちも取って置きを披露しないとな!」

 両腕を前へと突き出して両手に握るパワーナックル(メリケンサック)同士を合体!

「これで破壊力は2倍!」


 さらに、急上昇を行って高度を上げる&距離を取った。

「今度は俺様が上をもらった!威力も倍になるぜ!」


 すると寝た姿勢を取ってドリルのように回転し始めた。


 対するベルタはキバを交差させたまま左腰辺りまで下ろして下段の構えに入った。


 キャサリンがスクリュードライバーを行いながらベルタへと向かってきた。


「はぁ?アレで攻撃力を増したつもりなの?」

 ヒデヨシからの通信を絶たれた状態にあるクレハたちには彼の意図がまるで掴めない。


 まあ言動からして馬鹿っぽい彼のする事だから、何かしらのトンデモ理論に(のっと)っての行動と思われる。


「そしていつもの3倍の回転を加えれば、2倍×2倍×3倍の12倍パワーのロケットナックルだーッ!」

 ロケットナックル(ダブル)を発射した。


 だが、通信が遮断された今、彼の雄叫びを聞く者は誰もいない。


 迎え撃つベルタは。

 足元から照り返しがくるほどに大量の浮遊素を散布。


「さあ、括目(かつもく)せよ!」

 高揚を隠すことなくクレハが皆に伝えた。


 右脚を一歩踏み込む!衝撃で砕け舞い上がった浮遊素で作られた足場が、まるで粉々に割れたガラスのようにそれぞれが光を放つ。


 交差させたままのキバで猛烈な回転で襲い来るロケットナックルWに剣撃を叩き込む―。


 当たった瞬間!新たな噴射口を備え付けられたかのように、反転して元来た方向へと向かって間もなく跡形もなくロケットナックルWは粉砕された。


「い、今のは斬撃ではない…」

 表情の薄いウォーフィールドが大きく目を見開いた。


「では、何だと言うんだ?」ライクが訊ねた。




「見たか!これが俺の―」

「二天一流剣技、二転撃(にてんげき)!!」

 技を披露したヒューゴを差し置いて、クレハが先に皆に技名を言い放ってしまった。

 が、コクピットから聞えてくるのはルーティのヒューゴを罵る声。そして平手打ち。


「お前ーッ、何勝手に攻撃魔法(アタック・マジック)使っとんねん!状況考えや!ベルタはんの魔力残量、もうカツカツやないけ!」

 ベルタの魔法残量は残り10%ほど。


「落ち着いて、ルーティ。彼は効果魔法(エフェクト・マジック)カードも攻撃魔法カードも使っていません。今の攻撃は彼個人が持っている攻撃魔法なのです」


「な、何やて?」

 カードホルダーを確認してみる。カードは全枚数揃ったまま。使われた痕跡はない。そもそも魔法カードの使い方を彼に教えていなかったことに気付いた。


「そやった。ハハハ・・ゴメンな」

 必殺技を使って窮地を脱したというのに、散々罵られた挙句に平手打ちとは、どんな仕打ち?何も言葉が出ない。


 二天撃…それはヒューゴが独自に編み出した必殺剣技。理屈はわからないが、2振りの剣を同時に当てても発動せずに、数百分の1秒の誤差を生じさせてHITさせた時のみに発動する爆発的な破壊力を誇る技であった。


 なお、公式試合でも何ら(とが)められることなく使用している。

 打たれた選手が吹き飛ばされる尋常ではない剣に、他校がインチキだと抗議をしても、それを証明できない限りは正当な剣の技なのだ。



 ウォーフィールドがライクに説明した。

「彼は斬り合いの場に爆弾を持ち込んだのです」


「何?」詳細を求めるライクにウォーフィールドは答えた。


「あれは、一撃目で爆弾を設置して二撃目で着火、爆発させている悪質極まりない剣技に見せかけた攻撃魔法です」




 キャサリンの頭の上と両の腕に、蒼く光る魔法陣が現れてグルグルと回転し始めた。頭部と無くなってしまった指先方向へとそれぞれ移動してゆく。移動が終わった。


 すると、可動部が壊されたバイザーが、失われた両の腕が元に戻っているではないか。


 効果魔法(エフェクト・マジック)カードのひとつ、損傷回復(リペア)を発動させて騎体のダメージを回復させたのだ。


「マジか!?」

 驚愕するしかないヒューゴに「何も心配はいらない」初めて聞く女性の声。


 驚きのあまりヒューゴは声の聞こえた先・・上方へと向いた。

「驚かないで欲しい。私だ。ベルタだ」


「ベルタ?さん?何で急に女性の声になっているんです?」


「魔力の残量が残り少ないので充填モードに移行したのだ。消費量は本来の10分の1に抑えているが、それに比例して出力も低くなっているので心して欲しい」


 いわゆる省エネモードという訳か。女性の声は嬉しいものの、正体がオッサンだと思うと今一つテンションは上がらない。

 落胆以上に肩が凝ってくる。


「心配無いとはどういう事ですか?」

 投げやりな口調にもなってくる。もう残念過ぎてならない。


「敵は騎体のダメージを全回復する効果魔法(エフェクト・マジック)のひとつ損傷回復(リペア)のカードを使ったのだ。効果魔法とは、魔力を使わずに使える魔法で駒の強さによって枚数が異なる。ポーンは1枚、ナイトなら3枚という具合に」

 マテリアルアドバンテージ算出時の駒の強さがそのまま効果魔法カードの枚数という訳だ。

 だとしたら女王は9枚保有していることになる。


 そして、その回復とやらは、あくまでも騎体そのものだけに及んだようだ。失ったパワーナックルやランスは補充されていない。


 敵は丸腰・・とはいかないみたい。

 今度はロングソードを召喚していた。


 柄を両手で握り構えて見せる。と。


 キャサリンは剣を握ってはいるが、鍔が横向きになっている。つまり剣そのものが横を向いてしまって斬る方向へ向いていない。


コイツ、とことんダメなヤツじゃん…。

 呆れて言葉も出ない。



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