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盤上の兵たちは最強を誇るドラゴン種…なんだけどさ  作者: ひるま
[13] ミドルゲームスタート!!
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-128-:コイツ…お、鬼や


 メディカルスタッフたちがヒューゴの元へと駆け寄る。



 リョーマは独り静かに折れた竹刀を腰に戻して礼をし、その場に待機。


 会場がざわつく中、ヒューゴは担架に乗せられ運ばれて行った。


 そんな彼の姿を見送る事もせず、リョーマは目を閉じて、ひたすら沙汰が下るのを待つ。



 審判たちの判定は………下される事は無かった。



 草間・涼馬、禁じ手を使用した事により失格。


 高砂・飛遊午、対戦相手の反則行為により勝利するも、負傷のため棄権。


 結論、試合そのものが無効試合とされた。




 後に、リョーマには1年間の公式試合出場禁止の沙汰が下りた。


 だが、彼にとって、それはどうでも良い事だった。


 これまで通り、街の実戦剣道道場で練習は続けられるし、そもそも安全第一のスポーツ剣道に出られなくなったくらい、まったくダメージにもなっていない。


 だが、ただ一つ。


 彼が抱く不満。それは。


 ―どうして高砂・飛遊午は途中で剣を両方とも捨ててしまったのか?―


 疑問ではあるが、剣を捨てる行為そのものが、剣士として戦いを放棄した事を意味する。


 やがて疑問そのものが変化を遂げる。


 ―どうして彼は僕との戦いから逃げたのか?―


 確かに、試合の流れはリョーマが圧倒していた。

 だからと、それで恐れを成して戦いから逃げてしまったのか?


 幾月か過ぎて。


 道場で、ろくに打ち合い稽古もせずに子供たちに剣道を教え、そして、まかないのために買い出しに行っている高砂・飛遊午の姿を見ていると、彼が“腑抜けている”と感じずにはいられない。


 あれが、僕が最強の敵と見た男の姿か…。


 心底がっかりした。


 あんな男にはもう興味は無い。


 そう思っていた。


 天文学部の女子にお茶会に誘われるまでは。



 

 そして、リョーマは再び抑えようの無い高揚感を得る。


 どこかで見たようなロボットが、高砂・飛遊午の剣技を披露して見せた、あの瞬間。



 しかし、彼が戦っている相手は、見るに堪えないド素人ばかり。


 そんな相手に長丁場になだれ込んでいる彼の戦いぶりに、やはり“腑抜けている”と感じずにはいられない。


 もう少し実戦を積んで、かつての研ぎ澄まされた刃のごとき剣の冴えと、絶対的な自信を取り戻して欲しい。それだけを、ただひたすら願う。


 そのためには。



 自ら彼の前に姿を現して、彼を挑発して見せること。


 諦めない。


 彼が奮起して、精進してくれる事を願って。



 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 


「僕が彼に助力するだって?」

 リョーマの切れ長の目がココミたちに向けられた。瞬間!ココミは背中に氷を入れられたかのような感覚に襲われた。


「僕は決して彼を助けはしない。いや、むしろ彼が助けを求めて来ても、その手を叩き落としてやる」


「コ、コイツ…お、鬼や…」

 ルーティは戦慄した。


「で、ですが、ヒューゴさんが貴方の好敵手となり得る前に、他の誰かに倒されてしまっては、それこそ本末転倒ではありませんか?」

 さながら強風に立ち向かうべく、ココミはなおも訴えかける。


 リョーマはクスクスと笑うと。


「上手く言ってくれる。高砂・飛遊午が“僕の好敵手となり得る前に”、か。確かに一理あるね」


「ご理解頂いて何よりです。では、約束致しましょう。この戦いが終わった後に、貴方様とヒューゴさんが正々堂々戦える場を設けましょう」

 当事者であるヒューゴを置き去りにして、ココミはとんでもない提案を持ちかけた。


「あえて君の口車に乗ってやろうじゃないか」

 リョーマの言葉に、「ホンマか?」ついルーティは後輪を掴んでいる手を離してしまった。


 その一瞬の隙をリョーマが見逃すはずも無かった。


 一気に走り出すマウンテンバイク。


「あっ」

 手を伸ばして小さく声を上げている間に、リョーマの姿は遥か遠くへと去ってゆくのであった。





 




 








 











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