-120-:アイツ…ベルタを襲ったウォレスってヤツだ
★何で警察用語で拳銃の事をチャカって言うの?
それはね。
主に回転式拳銃の事を意味します。
引鉄を引いた時に“カチャ”と鳴る音を逆から呼んだのが由来とされている(諸説あります)。
他にハジキと呼ぶ場合もあります。
どちらにせよ、およそ高校生はおろか、一般人でさえも口にしない専門用語…。
「アナタ高校生なんだしピストルと言いなさいよ」
注意しつつも、二人の視線は女性が握る拳銃の銃口から逸らされる事は一切ない。
女性が拳銃を弄びながら前髪をかき上げた。
「アンデスィデの見込みが無いからって先走るんじゃないよ。トモエ」
「その名で呼ばないで」
シンジュは即座に否定。
そんな二人のやりとりを、クレハたちは拳銃から目を離す事無く「トモエ?」疑問符混じりに繰り返した。
確かに、盤上のベルタはクィーンサイドにおいて孤高の存在である。
敵の女王の駒が仕掛けて来ない限り、ベルタにアンデスィデはおろかテイクを仕掛けて来れる駒は存在しない。
なので…。
トモエ(シンジュ)はクィーンではない。ひとまず安心と言えよう。
だとすると。
この名も知らぬ女性がクィーンのマスターなのだろうか?
「アンデスィデで太刀打ちできない相手なら、生身の状態で仕留めるのが常套手段だと思うけど」
シンジュの意見はごもっとも。
しかし。
「トモエ。アンタの言う通り、センゴクの連中じゃあ、コイツに束になって掛かっても太刀打ちできないだろうね。だけどね!私なら確実に仕留められる。こんな、ぬるま湯に浸った生活をしているような連中に負けはしない」
随分な言い様な上に、絶対の自信を見せつけてくれる。
女性は続ける。
「高砂・飛遊午!今日の午後3時30分にアンデスィデが発生する。お前も参戦するんだ。いいね!さもないと、お前たちの学校の生徒を皆殺しにしてやる」
「今日の放課後にアンデスィデは発生するだと!?」
脅迫混じりの宣戦布告に、思わず声を裏返らせてしまうヒューゴ。
「シンシア。あなたバカじゃないの!?彼にもう1騎盤上戦騎に乗れって言うの?」
シンジュたちの会話から、あの外国人女性の名は“シンシア”だと判明した。
「チッ。敵とはいえ、あんましムチャを言ってやるなよ。シンシア。チッ!」
シンシアの隣から突然男性が姿を現した。
ナバリィの見せた空間転移の能力とは違う。
まるで擬態で身を隠していたカエルが姿を現したかのような、そんな登場の仕方だった。
先程まで透明化していたのか?それとも霊体化?
彼らの正体はモンスターだ。どちらも可能性はある。
それにしても。
癖なのか?彼の話口調に、あまり良い印象を受けない。
「アイツ…ベルタを襲ったウォレスってヤツだ」
男性の特徴(主に話し口調)から正体を察したヒューゴは、小声でクレハに伝えた。
「私は無茶を言ったつもりは無いよ。それよりも“ウッズェ”。その喋り方、ヤメてくれと何度も言っているだろ!気分が悪くなる!」
確かに彼女のおっしゃる通り。
あのしゃべり方は即刻止めて欲しい。
「てか、お前、ウォレスじゃないのかよ!」
まさか、あんな気に障る喋り方をする魔者が二人もいるとは思いたくも無い。
「チッ!」
正直、ホントいい加減に止めて。イラッと来るから。
思う最中、遂にシンシアも「チッ」舌打ちを鳴らして。
「こんなヤツ。チッチ、チッチうぜぇからウッズェに格下げ食らわせてやったのさ」
格下げって、また…。
つまり改名した(された)という事。
アイツは遠隔物体操作能力を持つウォレスで間違いない。
「学園を巻き込むのは賛成できないわね」
シンジュが半歩シンシアの方へと歩を進めると。
パンッ!
それは想像していたものとは異なる、意外なほどに小さな音だった。
シンシアは味方であるはずのシンジュに向けて発砲した。




