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盤上の兵たちは最強を誇るドラゴン種…なんだけどさ  作者: ひるま
[1] 高砂・飛遊午
12/351

ー10ー:契約時に発生したそれらの責任を、俺は今、果たしたい

 コイツは厄介な事になった。


 厄介なコトはもう一つ。


 ベルタは唯一の火器を失ってしまった。この2対1の状況下で。


 ヒューゴの目にはルーティの背中が、とても小さく映った。

 この背中には、もう何も背負えそうに無い。



「ココミ」ヒューゴの声に「何ですか?」


「この戦い、俺に預からせてはもらえないか?」

 ヒューゴの申し出に、白側の誰もが「えっ?」と訊き返した。


「アホ言え!お前を人殺しなんかにさせられるかぁッ!死にとうないのはよう解る。けど、ウチが引き金を引かな。わざわざお前がその手を血に染める必要は無いんじゃ!」



「そんな、タカサゴが人殺しに・・」

 幼馴染が自らの意志で殺人犯になろうとしている。仕方の無い状況だとしても納得し難い。すでに殺人行為に加担しているとしてもだ。


 そんなクレハに、ココミはただ申し訳ないと目で伝えることしかできない。


「ヒューゴさん。貴方(アナタ)にご自身を守る権限を与えます」

 申し出を聞き入れた。



「アホか!ココミ!お前が良うてもベルタはんの気持ちはどないなるん!?人間嫌いのベルタはんの気持ちを無視してアークマスターの権限でヒューゴにコントロールを任せるんか?」


 そんなルーティに。


「ありがとうな。ルーティ。お前は優しいヤツだよ」

 ヒューゴが優しくルーティの頭にポンと手を置いた。


「な、何をこんな時に言うとんねん」顔を赤らめて。


「確かにお前の言う通り、人間は下等生物だよ。肌の色が違う。民族が違う。宗教が違うと様々な理由を付けては世界中のどこかで休む事無く争い事を続けている。なのに、お前は『人間同士で殺し合う道理は無い』と言ってくれた」

 告げて顔を上に向ける。


「ベルタさんには申し訳ないと思うよ。人間の俺なんかに体を預けることになるんだからな。だけど、今だけだ。今だけ俺に責任を果たす力を貸してくれ」


「責任?何の?」

 ルーティが訊ねた。


「もう誰にも痛い思いをさせたくないというお前たちの気持ちが、俺が契約を交わした理由だ。だからその時に、2つの責任を果たす義務が発生したと思っている。“誰にも痛い思いなどさせない”責任、そしてお前たちに“辛い悲しみの涙を流させない”責任。契約時に発生したそれらの責任を、俺は今、果たしたい」


 その最中、ベルタの腕装甲(正確にはカフスの延長部分)がせり上がり、握り手が跳ね上がるとツメ(サバイバルナイフ)に掛けられていたストッパーが外れ、重力落下して両手に握られた。


「!?」

 ヒューゴ、ルーティ共に顔を見合わせた。

 誰もベルタを操作していない。


「“責任を果たす”、か。懐かしい響きだ。良いだろう。お前の責任とやらを果たして見せよ。コントロールをお前に渡す。高砂・飛遊午」


 ベルタの声を聴き終えて、握られたツメを見ようと。


 ベルタの首が、目が、思った方向へと向いている。

 コントロールが引き継がれたのだ。


 操縦桿を握る。

 

 意識を集中して。


 刃部を水平に、右腕を前へと突き出し。


 同じく刃部を水平に、左手を顔の高さ顔の横まで引き下げて、二天一流の構えを取って見せた。


 二天一流。


 それは名前こそ、かの剣豪宮本武蔵が編み出したとされるものと同じだが、誰かに伝え教えられた剣術ではなく、高砂・飛遊午自身が自らの理論を立てて具現化させたもの。

 攻撃そのものを防御に繋げたり、刀剣のあらゆる箇所を使って戦う、より実戦志向の強い実戦剣術。


「参る」

 スケルトンのキャサリンとゾンビのソネを見据えて、ただ静かに告げる。


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